せっかくの楽しい時間を邪魔されることほど、不愉快だと感じることはないだろう。 思っていたよりも口にあった料理を堪能し、胃袋が満たされた事で得られる満足感。そのことについて楽しく談笑をしながら渇いた喉を潤すためグラスを傾けていたところに姿を現したのは、ブランドもので身を固めた一人の女性だった。「あら?」 突然訪れた予想外の相手。彼女の登場により、一瞬にして場の空気が変わったのは目に見えて明らかである。「まさか、こんな所で会うなんてねぇ」 まるでその場所に居ることが悪いとでも言うように告げられた言葉は、一体誰に向けてのものなのだろうか。そう思い相手の視線を辿れば、彼女の目線の先に在るのが義母の姿だと言うことに直ぐに気が付いた。「……久し振りね、響花さん」 声をかけられた義母の反応はというと、どうにも鈍いものだ。何やらこの来訪者の存在を歓迎する様子は一切無く、それどころか、出来る事なら会話をする事自体を避けたいようで。言葉にこそ出しはしていないものの、どことなく滲み出る拒絶が露骨に態度に出てしまっている。「お久しぶりです、水琴義姉さん」 相手の女性はというと、そんな義母の態度を気にすることは無いらしい。無遠慮にこちらとの距離を詰めてきたかと思えば、勝手に椅子を引っ張り、義母の隣へ腰を下ろしてしまった。「旅行ですか? 楽しそうですねぇ」 何をしに来たのかなど周りの状況を見れば理解出来るだろうに、わざわざこうして理由を聞いてくるのは何故なのだろうか。「それについて、答えなきゃいけない理由はないわよね」 その問いに答える必要は無い、と。会話を畳み掛けるように義母は素っ気なく返す。「別に、どうしても教えて欲しいって訳じゃないんですけどねぇ」 そこで一度言葉を切ると、響花と呼ばれた女性は困ったように溜息を吐きながらこう続けた。「いつもは田舎で引きこもっているはずの義姉さんが、こんなところに居ることが珍しくって、つい」 逐一言葉に含まれる棘は、明らかに相手の気分を害することを意図して放たれたもの
Last Updated : 2026-07-31 Read more