自室に戻ってからどれくらいの時間が経ったのだろうか。「…………?」 ベッドに腰を下ろしぼんやりとしていると、突然ドアをノックする音が聞こえてきた。 その音は控えめながらも、中々諦めが悪いようで。始めに三回。その後暫く反応が返ってくるかどうかを確かめてから、今度は二回と、感覚を置いてノックを繰り返している。「……何?」 正直に言えば無視をしようかとも思っていた。しかし、父親の呼び出しだと後が面倒な事になるなと思い、余りのしつこさに耐えかねて、仕方なくドアを開くことにする。「……誰でしょうか?」 ゆっくりと開いた扉の向こう側。「こんばんは」 そこに居た人物の姿を見た瞬間、海亜は取り繕うことを忘れ嫌そうな表情を浮かべてしまう。「ごめんなさい。お休み中だった?」「…………いえ」 出来る事なら、この人の顔なんて見たくも無かった。今一番会いたくないと思っているのに、此方の気持ちなどお構いなしに現れた相手が憎らしくて仕方が無い。「何かご用ですか?」 それでも、顔を合わせてしまった以上無理に出て行けとも言い出せず、諦めて要件を尋ねることにする。「少し、話をしても良いかな?」 話をしても良いかなんて、聞かなくても分かっているでしょう。思わずそう言ってやりたくなるのをぐっと堪えて黙っていると、彼女は申し訳なさそうに視線を逸らしながらどうしようかと迷う素振りを見せた。「迷惑だったらいいの。帰ってきたばっかりで疲れてるだろうし」「…………はぁ」 空気を読んだのならわざわざそんなことを言わずに立ち去って欲しかった。しかし、敢えてこんなことを口にすると言う事は、今話せなくとも日を改めて話をしたいという意思表示も含まれているのだろう。「良いですよ。何でしょうか?」 部屋に招き入れるかどうか迷いはしたが、そこはどうしても拒絶が強く出てしまったため考えないことにする。自らも廊下に出て扉を閉めると、海亜は改めてこの女性と向き合いこう尋ねた。「わざわざここに来たと言う事は、大事な話なんですか?」「……大事……というわけじゃないんだけど……」 この煮え切らない態度は何なのだろう。「食事の席の時の態度を注意しに来たのでしょうか?」 会話なんて元からすることも無いのだ。談笑を楽しむために来た訳じゃ無いのなら、可能性としてあるのは夕食の時の海亜の態度につい
Última atualização : 2026-09-26 Ler mais