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Autor: 仲原
last update Data de publicação: 2026-10-07 00:25:32
「お前が言うな!!」

 向かいの席から飛んでくるのは、今まで言われたい放題だった旭の避難の声である。

「俺だって姉さんが欲しいって思ってたよ! 陽菜とは違って優しくて頼りになる姉さんが居ればなってずっと思ってたからな?」

「何よっ! それってどういう意味!?」

「そのままの意味だ!」

 突然始まる兄妹喧嘩は騒がしいもので、互いに似ている事もあり両者とも一歩も引かずに平行線の言い合いが続いていく。

「クスクス」

 それが妙に可笑しくて笑ってしまったら、双子は全く同じ表情を浮かべた状態で海亜の方をじっと見てきた。

「え? な、何?」

「……笑った」

 次の瞬間、全く同じ反応で旭と陽菜が手を取り合う。

「ね、ねぇ、見た? 旭」

「お、おう。見た、見た」

「お姉ちゃん、笑ってたよね?」

「ああ、笑ってた。笑ってたよ」

 笑うという行動の何がおかしいのだろう。不思議に思い海亜が首を傾げると、旭と陽菜がそれぞれ右と左に移動し同時に海亜の腕を掴み嬉しそうに笑う。

「やっと笑ってくれた! ねぇ、そうだよね!」

「ああ! 俺もしっかり見た! 姉さん、ホントに笑ってくれてた!」

 訳も分からず戸惑っている
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  • さよならは、笑顔の後で   96

     特に何かを思っていったわけではなく、無意識に出た言葉。「そっ、それは、良いけど……」 ただ、こんな反応をされるのは予想外で海亜は戸惑ってしまう。「迷惑だったら無理をしなくても良いんだけど」 だからこそついこう言ってしまったのだろう。するとどうだろうか。先ほどまで俯き視線を合わせようとしなかった旭が、傷ついた表情を浮かべながら唇を噛んだ。「え?」 一体どういうことだろう。訳が分からず言葉を探していると、隣から上がる楽しそうな笑い声。「違うよ、お姉ちゃん」 陽菜の方へと視線を移すと、笑いが堪えられないとでも言うように口元を押さえながらも、眼を細めながらこう続ける。「旭はただ照れてるだけ。ホントは一緒に行きたいんだよ〜」「陽菜っっっ!!」 大きな音を立てて倒れる椅子。素早く伸びた腕が妹の手を掴もうと動く。「わーっっ! 暴力反対ー!」 慌てて席を立った陽菜がすんでの所でそれを交わす。「逃げるな!」 突然始まる追いかけっこ。取り残された海亜はその光景をぼんやりと眺めていたが、次第に面白くなり声を出して笑ってしまう。「あははっ」 海亜の笑い声を聞いた二人の動きがピタリと止まる。「二人とも、喧嘩をしちゃ駄目じゃない」 一通り笑ったところで涙を拭うと、海亜は改めて二人に向き合いこう提案を出した。「今週末、二人とも私に付き合いなさい」「え?」「陽菜はその時に靴を買うの。旭はそうね……本でも買おうか?」 数日前に千明から聞いていた旭の欲しいものを思い出し、どうかなと問いかける。「そ、そりゃあ、欲しいけど」 欲しいものを買おうかという提案に旭の心が揺らぐ。それを見逃すことはせず、海亜は一気に畳み掛ける。「それじゃあ、それを買いに行こう! そして、昼ご飯はみんなで外で食べる。良い?」 そう言われて陽菜は分かりやすく賛成の声を上げる。旭の方も悩むそぶりは見せたものの、最終的には分かったと頷き頭を掻いた。「あっ。旭、本当は嬉しいんだ〜」「うるさいっ!」 陽菜の言葉通り不機嫌そうに見えるのは表だけで、口元だけは満更でもないように緩んでいるのだからなんだか可愛く思えて仕方が無い。「じゃあ、決まりね! 二人とも、よろしく」◆ これで何度目の呼び出しになるのだろうか。「…………はぁ」 朝から続く頭痛と倦怠感。隣に陣取るのは扱いに

  • さよならは、笑顔の後で   95

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  • さよならは、笑顔の後で   94

    「ねぇ……これって、本当に大丈夫なのかなぁ……?」 その言葉を放ったのは確かに女性の声だった。 慌てて周囲を確認してみても声の主を特定することは難しく、一体誰がその言葉を口にしたのかが分からない。ただ、その内容から考えるに、どうやら起こった事故は偶然などでは無いという可能性が浮上してくる。「そんな……まさか」 何となく思い当たる節はある。しかし、実際にそうだという確証は得られない。事故なのか事件なのか分からないまま数日が過ぎていく。 学生服では無い制服を見る度に焦燥感に駆られるのだが、子どもの力など出来る事に限界があるのも事実で。 結局、昴自身がこの事件について捜査できることは無く、いつの間にか事故という形で収束が付いてしまった騒動は、真実は有耶無耶になって終わってしまった。 あの日以来、明らかに変わったことがあるとすれば、あれほど仲が良かった後輩がいつの間にか学校から居なくなってしまったと言う事だろう。理由が分かっている分、何も言えないもどかしさだけが残るが、こればかりはどうしよもない問題だ。 守ってあげられなかったという現実は重く、昴の中に大きな痼りを残す。 この頃になると不機嫌だった繭の機嫌は直り、再び昴の周りをうろつき始めたのだが、後輩を突き落とした真犯人が彼女だという疑惑がある以上、あからさまな突き放しは次なる悲劇を引き起こす引き金になるかも知れない。その恐怖から表立って波風を立てることはせず、昴は繭に必要以上に関わらないようにすることで己を保ち日々を過ごす。 その間、後輩の事故のことは出来る範囲で調査を続けてはいたのだが、思ったような結果を出すことが出来ず完全に行き詰まってしまっていた。  一方、繭の方はと言うと、昴の傍から女子生徒の影が消えたことに上機嫌だった。自らが唯一の彼女であると吹聴し、家名を出して家柄の差を周囲に見せる。一条と釣り合うのは四埜杜だとでも言うように。  その努力の甲斐があってか、昴に必要以上に近づこうとする女生徒は現れず、必ず繭の同席が無い蹴れば会話をする事が出来ない。例外として女性教師はその条件に当てはまらないものの、それでも四埜杜とう名前に怯えたのだろうか。連絡事項や重要な報告以外は言葉を交わすこと無く、それ以外は男性教師を間に挟んで言葉を交わす始末。こうやって徹底的に女という存在を排除する事により、

  • さよならは、笑顔の後で   93

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  • さよならは、笑顔の後で   92

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  • さよならは、笑顔の後で   91

    「大丈夫だって思い込んでた自分が悪いって事は、自分自身が一番良く分かってるんだよ……」 左手の薬指。そこに嵌まるリングを撫でながら昴は続ける。「でも、下手に動けない状況だったんだ。どうしたら良いのか……」 愛しい妻との関係を壊す、この緑色の紙を破ってしまいたい。しかし、それをしてしまえば、きっと良くないことが起こることだろう。「千々石」 名前を呼ばれた秘書が、すっと黒いファイルを手渡す。「これはお前に預けておく」「はい」「頼むから、絶対に奪われないでくれ」 それはもう、命令では無く願いに近かった。「承知いたしました」 預かる責任は実に重たいものではあったが、こうなってしまった責任は千々石にもある。それが分かっているからこそ、彼は素直にファイルを受け取り頭を下げた。「信じてるからな」「分かっています」「……はぁ」 手元に残された緑色の紙が目の前から消えたことで、心配事の一つは先送りとなった。完全に解決するためには未だに時間が足りないためもどかしさは感じるのだが、その前に立ち塞がる問題を解決する必要があるせいで中々上手くはいかない。「それで」 千々石が時計を見ながら尋ねる。「どうするつもりですか? 昴さん」「…………」 今、昴に必要なものは、決定的な証拠である。 四埜杜繭と再開してから起こる様々なトラブルは、決して偶然などでは無い。そのことについては始めから気が付いていた。 一度や二度なら疑いを持つこともしなかったかも知れない。しかし、余りにも頻繁に起こる不可解な現象が続くのだから、これはもう必然と断定してもおかしくはないだろう。そして、その全てに四埜杜繭という女性が絡んでいることは分かりきっている。それなのに、彼女が関与をしているという事実。それを示す証拠だけが未だに見つからない。「少なくとも、この前の事故……あの時の証拠さえ押さえられれば……」 あの忌々しい記憶は、消えること無く鮮明に思い出すことが出来る。 愛する妻が蒼白になって病室に駆け込んできたあの日。四埜杜繭を送迎する目的で、車を走らせているときに巻き込まれた交通事故。それがきっかけで、妻との距離はどうしようも無いほど離れてしまった。 事故があってからというもの、一気に世間に広まったものが、昴と四埜杜の関係を匂わせる報道である。どちらも知名度があるせいで、

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