「ねえ、澪ちゃん。これ、どうする?」 奈央が眉を下げてスマホの画面をじっと見つめた。徐々に眉間にしわが寄り、嫌悪感があらわになっていく。「どうもしません。ほっとけばいいんですよ」 澪はあっけらかんと答えた。 もう花音と関わるのはまっぴらだ。花音はきっと、これを見て澪が抗議してくるのを待っているに違いない。さらに、それを逆手に取って「朝倉澪はひどい女だ」と吹聴するつもりだろう。「でもさ、澪ちゃんの名前……。ずいぶんバズってるよ?」「いいんです。だって、ケーキに突っ込んでいって壊したのは花音自身ですよ? あたしじゃありません」「そう……なんだろうけどさ。澪ちゃんの会社も、そのうち特定されるんじゃ……」 その言葉を聞いて、澪は言葉に詰まった。会社の人たちには迷惑をかけたくない。会社だけではない。顧客にまで迷惑がかかってしまう。 澪は唾を飲み込んだ。「なんとか……します」 澪は席に座り、背筋を伸ばしてまっすぐモニターを見つめた。 どうしよう……。 誰も頼れる人がいない。 仁に連絡しようかと一瞬頭をよぎり、スマホを握りしめた。 だめだ。 仁は幼なじみだが取引先で、迷惑をかけるわけにはいかない。 スマホを握る手に汗がじんわりとにじんだ。 * 「なんで反論してこないのよ!」 花音はぎりっと親指の爪を噛み、スマホの画面を睨みつけた。 知り合いのインフルエンサーに頼んで、自分の投稿を拡散してもらった。これだけ多くの人が見ているのだ。きっと澪から連絡が来るはずだと思っていたのに、なにも反応がない。 業を煮やして、ダイレクトメッセージを送った。《えらく、SNSで澪の名前が出てくるけど、結構有名人になったんだね?》 こ
Last Updated : 2026-07-22 Read more