社内連携会議の翌日、私は新しい資料を開いていた。 タイトルは、資料作成時の確認項目。 そう打ってから、すぐに少し固いと思った。 けれど、軽すぎても困る。 各部署が資料を作る時、最初に確認できるものにしたい。目的は、文章を美しく整えることではなく、読む人が迷わず次に進めるようにすることだった。 私は画面に三つだけ項目を置いた。『最初に読む人は誰か』『最初にしてほしい行動は何か』『詳しい説明は別にできるか』 これで足りるだろうか。 足りない気がする。 問い合わせ先も入れた方がいいのではないか。期限も必要かもしれない。対象者、必要書類、例外対応、注意事項、よくある質問。考え始めると、項目はいくらでも増えていく。 私は無意識に四つ目を打ちかけて、手を止めた。 増やすのは簡単。 でも、増やした瞬間に見られなくなることがある。 高梨さんの声が、頭の中でかなりはっきり再生された。 四段階にしたら見ません。 私はそっと四つ目の項目を消した。「琴葉、また三つにしてる」 隣から朱音が覗き込んできた。「またって言わないで」「三行カード、三段階確認表、今度は三項目チェック。もう三の人じゃん」「三の人って何」「三行の魔女」「やめて」 即答したのに、朱音は嬉しそうに目を輝かせた。「語感いいね。三行の魔女」「よくない」「資料を三行に削り、迷える部署に入口を授ける魔女」「業務内容が地味」「でも助かる魔女」「魔女要素どこ?」「削るところ」「それは魔法じゃなくて作業」 朱音は笑いながら、自分の席から付箋を一枚取った。「でも本当に三つだけでいいの?」「そこが迷ってる。増やした方が親切な気もするし、増やすと使われない気もする」
Last Updated : 2026-09-21 Read more