ノヴァリンクの会議室には、大きな画面が三つ並んでいた。 中央には、結和ケア向けの提案資料。 左には、家族連絡や利用状況をまとめる管理画面のデモ。 右には、複数拠点へ展開した場合の運用フロー。 どれも整っている。 数字もある。 見栄えもいい。 けれど、小鳥遊莉愛は画面を見つめたまま、しばらく何も言わなかった。「小鳥遊さん?」 担当者に呼ばれて、莉愛はようやく視線を上げる。「悪くないわ」 その一言に、会議室の空気が少しだけ緩んだ。 けれど、莉愛はすぐに続けた。「でも、このままだと強すぎる」「強すぎる、ですか」「ええ。規模も機能も、こちらの強みです。複数拠点を一括で管理できること、家族連絡まで含められること、データを集計して改善に回せること。それは間違いなく武器になる。でも、結和ケア側から見れば、その武器を現場に持ち込むこと自体が負担にも見える」 担当者が資料をめくる手を止めた。 陽斗は少し離れた席で、その言葉を聞いていた。 莉愛は画面のフローを指した。「ここ。導入初月から家族連絡、記録共有、拠点管理を同時に動かす形になっているでしょう」「はい。導入効果を早く見せるために」「効果を早く見せることと、現場が早く慣れることは同じではありません」 会議室が静かになる。 莉愛はそれを気にせず、淡々と続けた。「結和ケアは、うちの提案をそのまま試験導入するにはリスクが大きいと考えているはずです。だから、比較の場では“これだけできます”では足りない。“最初にどこまで入れるのか”“現場に何をさせないのか”“止まった時に誰が受けるのか”まで答えられないと弱いわ」 担当者は慌ててメモを取った。「では、段階導入案を追加しますか」「追加ではなく、前に出して。大きな構想の説明より先に、最初の一歩を見せた方がいい」「最初の一歩、ですか」
Last Updated : 2026-10-07 Read more