現在地を送ると、久世さんからすぐに返信が来た。『そのまま駅構内、もしくは人目のある場所でお待ちください。玲央様にも共有いたします』 私は駅前の柱のそばで、スマホを握ったまま立ち尽くした。 人はたくさんいた。 会社帰りの人。買い物袋を下げた人。誰かと電話しながら歩く人。 いつもならただの雑踏なのに、今はその人の多さが少しだけありがたかった。 陽斗はもうマンション前にはいないかもしれない。 来訪履歴があっただけだ。 会っていない。何もされていない。 それでも、帰るのが怖いと思ってしまった自分に一番驚いていた。 スマホが震える。 今度は玲央さんからメッセージだった。『朝比奈さん。今、電話しても大丈夫ですか』 私は少し迷ってから、短く返信した。『大丈夫です』 数秒後、玲央さんから着信が入った。『今どちらですか』「駅前です。人は多いです」『よかった。家には戻らないでください』 声は落ち着いていた。 でも、昨日までより少し硬い。「そこまで大げさにしなくても」『大げさかどうかは、こちらで判断します。来ないでほしいと伝えた相手が自宅まで来た。十分です』 十分。 その言葉に喉の奥が詰まった。 私が感じた怖さを勝手に小さくされなかった。 それだけで少し息がしやすくなる。『久世が車を手配しています。十分ほどで着きます』「車」『はい。今夜は一度、別の場所へ移ってください』「別の場所って、ホテルですか」『いえ。契約書に基づく生活安全確保用の住居です』 私は駅前の明るい看板を見上げた。 生活安全確保用の住居。 言葉が強
Last Updated : 2026-07-09 Read more