三部署を回り終えた頃には、歩きやすい靴を選んだ昨日の自分を褒めたくなっていた。 足は痛い。 メモは増えた。 そして企画は最初の形からかなり遠ざかっていた。 細かい問題は山ほどあった。 部署ごとに記録の持ち方が違うこと。 同じ利用者の相談でも担当が変われば見え方が変わること。 外部の事業者へつないだ後の結果が最初の窓口まで戻ってこないこと。 でも、一番大きかったのはそこではない。 利用者の不便を減らすために窓口を一つにする。 それは間違っていない。 けれど、その裏側の情報がつながっていなければ、結局誰かが同じ説明を何度もすることになる。 昨日、課長に言われた言葉が頭に残っていた。 便利という言葉だけで、現場へ仕事を落とされるのは困る。 本当にその通りだった。 翌日の再検討会議で、私は最初に資料を一枚差し替えた。 タイトルも変えた。 『生活支援サービス統合窓口案』 そこに一本線を引き、新しいタイトルを置く。 『生活支援相談連携案』 会議室が少し静かになった。 事業推進室の担当者が、すぐに眉を寄せる。 「朝比奈さん。統合窓口ではなく、連携案ですか」 「はい。最初から窓口を一つにするのは、現時点では難しいと判断しました」
Last Updated : 2026-07-14 Read more