月曜日の朝。 会社に着いた私は、いつも通りパソコンを立ち上げた。 未読メール。 会議予定。 企画の検討状況。 週明けの画面は現実味が強い。 水族館の青い光は、昨日の夜まで部屋の中に残っていた気がするのに、会社の蛍光灯の下では少し遠い。 私は気持ちを切り替えようと、企画書の最新版を開いた。 相談を迷子にしない。 昨日ノートに書いた言葉を、資料の冒頭に入れるかどうかで迷っていると、隣の席から視線を感じた。「琴葉」「なに?」「土日、何かあった?」 早い。 週明け一発目の確認が早い。 私は画面から目を離さずに答えた。「洗濯した」「それは人類の営みとして普通にあるやつ」「資料も少し見直した」「それも琴葉なら普通にあるやつ」 朱音は椅子の背にもたれ、こちらをじっと見る。「私が聞いてるのは、そういう生活報告じゃなくて、顔がちょっと違う理由」 私は思わず頬に触れた。「化粧、変?」「変じゃない。むしろ普通。でも、先週の顔と違う」「先週の顔って何」「パーティ明けで魂が半分抜けてた顔」 否定できなかった。 私は小さく咳払いをして、資料へ視線を戻す。「ちょっと出かけただけ」「誰と?」 来た。 そこを聞くと思った。 契約婚約のことは言えない。 玲央さんの名前を出せば、朱音は絶対に逃がしてくれない。 私は慎重に言葉を選んだ。「知人と」「知人」 朱音がゆっくり繰り返した。 その声音だけで、何も信じていないことがわかる。「どこへ?」「水族館」 言った瞬間、朱音の目が少しだけ光った。「知人と水族館」「
Last Updated : 2026-07-19 Read more