白い花びらが風に揺れる。小春はそっと指先で花に触れ、小さく微笑んだ。「お母さん……」幼い頃、母の花乃はよく庭へ連れ出してくれた。「花はね、人を笑顔にする力があるのよ」そう言って、一輪一輪の名前を教えてくれた。「お医者さんもお花と一緒。どちらも誰かを元気にできるでしょう?」その言葉が、小春は大好きだった。「小春様」振り返ると、橘が立っていた。「こちらにいらしたのですね」橘は手に持っていたつばの広い帽子を小春に被せる。そして持っていた水筒からカップに麦茶を注いだ。「喉が渇きましたよね」小春は受け取るのに戸惑う。「帽子も私のもので申し訳ありません。早々に手配いたしますので」「いえ、そうではなくて……ありがとうございます」小春が戸惑ったのは、橘の気遣い。どこか記憶の中の母親と重なったからだった。「ごめんなさい。少し昔のことを思い出していて……」「お母様のことですか」小春は静かに頷く。「母はお花が好きでした」寂しそうに笑う小春を見て、橘は優しく言った。「でしたら、この庭にいらっしゃる小春様の姿に喜んでいらっしゃるのでは?」「そう、でしょうか」小春は庭を見回す。「そうですとも。娘がこんないろいろな花に囲まれている姿を喜ばない花好きも母親もいません」橘が自信満々に自分の胸を叩く。「私にも娘がいるから分かります」「そうなんですね。おいくつですか?」小さな可愛い子どもを思い浮かべていたため。「今年で確か五……うん、二十五歳ですね」「ええ!?」驚く小春に橘が首を傾げる。「嘘……」「ああ、驚かれましたか」納得するように橘が頷く。「小春様と同じ年なんて、奇遇ですよね」驚いたのはそれではないと言おうとしたところで、小春は何かが聞こえた気がした。「鳥の鳴き声……?」「随分と……何かこう……何かこうって感じですね」「何か分かります」橘の言いたいことが分かった小春は、小さく笑いながら鳥の鳴き声がするほうへ行く。男性の声が聞こえた。思わず父親かと小春は身体を強張らせた。そんな小春の肩に橘は手を置き、「庭師長の新井ですよ」と指でその方向を指した。苔むした庭に溶け込むような深緑の作務衣姿。藍染の前掛けと草木の露を弾く編み笠を軽く傾けた姿で。「鳥に襲われていますね」「ええ。なかなか攻撃的で……ああ、そこはも
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-07-11 อ่านเพิ่มเติม