数日後。小春は部屋の窓から街並みを眺め、小さく息を吐いた。篠原家での生活は穏やかだった。温かい食事があり、安心して眠れる部屋があり、笑い合える人たちがいる。夢のような毎日だった。それでも胸の奥には、小さな引っ掛かりが残り続けていた。(このままじゃ、いけないよね……)コンコン。「小春様、お茶をお持ちしました」橘がワゴンを押して部屋へ入る。「ありがとうございます」紅茶の香りが部屋へ広がる。しばらく他愛ない話をしたあと、小春は意を決したように口を開いた。「橘さん、一つお願いがあるんです」「何でしょう」「外出したいと思うのですが」橘の手がぴたりと止まる。それは一瞬。すぐに橘は、何でもないように振る舞う。「もしよろしければ、どちらへかお尋ねしてもよろしいですか?」「本屋さんです。植物図鑑を読んでいたら、ほかにも読んでみたい本が増えてしまって」少し照れくさそうに笑う小春だったが、その表情が少し曇る。「もちろん、自分で買います」まるで新しい本を強請っているように聞こえてしまったのかもしれない。そう思って小春は付け足したのだが。「いいえ、それは問題ないのですが」橘には、小春の希望は意外なものだった。小春がいまの状況に窮屈さを覚え、それで気晴らしを求めたのだと思った。実際のところ、小春は療養を理由に篠原邸に閉じ込められた状態だ。無理やりではないし、療養というのも嘘ではない。小春はまだ、庭に出ても一時間もしないうちに疲れてしまう。橘が目を配り、疲れが見えたところで小春を部屋に戻すため、小春が体力の限界まで外にいることはないが、万全とは言えない状態。食事の量もここに来た頃よりは増えたが、まだ成人女性の一般的な食事量の半分だ。「あの&he
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-07 อ่านเพิ่มเติม