小春の元に高校の参考書が届く。高校卒業以来ほとんど触れていなかった英語のテキストを眺める。「意外と覚えているところもある……」パラパラとページを捲り、教科を数学に変えると、簡単な公式が思い出せず手が止まる。「あれ……」何度考えても出てこない。「やっぱり、忘れてる」小春は参考書を閉じ、天井を仰ぎ見る。「昨日、頑張るって決めたのに」簡単に考えていた。その事実を目の当たりにした気がして、気が焦る。.落ちた気分はなかなか上がらず、小春は気分転換だと自分に言い聞かせて庭に出た。当主夫妻が戻ったため、庭の管理権は本来に渚に戻った。渚は一緒にやろうと言ってくれたが、そこまで出しゃばれないと気後れした。(そんなの気にする方ではないと思うけれど)庭の花も、これまでよりも生き生きして見えるのは自分がいま卑屈だからだ。小春が大きくため息をついたとき。「どうした?」声をかけられて、振り返った。「樹さん」「どうした?」何でもないと言いそうになったが、『話してみろ』という樹の雰囲気に思わず気が緩んだ。「思ったよりも勉強内容を忘れていました」小春は正直に答えた。「高校の頃は解けた問題なのに、途中で手が止まってしまって」それはそうだと言われるだろう。小春はそう思ったが。「それが分かっただけでもまずは十分ではないか?」「え?」「勉強は、できないことを知らなければ始まらないと俺は思う」樹は静かに椅子へ腰を下ろした。「仕事と同じだ。いや、仕事が勉強の延長とも言えるか。とにかく、現状を把握しなければ計画は立てられない」「あ……」「まずは今の学力を確認。どこまで覚えていて、どこからやり直す必要があるのか。それが分かれば勉強の進め方も決められる」「……確
Last Updated : 2026-09-29 Read more