Home / 現実ファンタジー / Real / Chapter 181 - Chapter 190

All Chapters of Real: Chapter 181 - Chapter 190

198 Chapters

52話

 『いつから?全く気付かなかったぞ』『確信を持ったのはさっき。ヌムヌムの所からついてきてる。もっと前からかもしれないけど、気付けなかった』『お前が気付かないって、それヤバくね?』 自分と、ましてやノエルの探知を掻い潜り追跡するなど、強者であればあるほど不可能のはずだ。『てかよく気付いたな』『不自然に出たり消えたりする魔力があった。それだけに集中してようやく逆探知できた』(……それほどか) 東条は緊張する。  戦闘態勢に入ろうと力む、が、ふ、と脳裏に一人の人物が思い浮かんだ。『隠れるのが上手いって、まさか』『ん。たぶんあいつ』 朧 正宗。 大きいにも関わらず薄い、という不思議な魔力を纏った青年。 彼がもし隠密系のcellに覚醒しているなら、そのような芸当も可能かもしれない。『場所は?』『窓を正面にして十時の方向。灰色のマンションの屋上』 東条はわざと眠たそうに立ち上がる。(……百mちょいか) リュックからライフルと弾、タオルを取り出し、関節視野でマンションを確認してベッドに戻った。「手入れすんの忘れてたわー」 『お前の能力届くか?』 タオルで銃身を拭くように見せ、銃弾を装填する。「銃はそれが面倒」 『余裕。顔面100点ね』 ボルトを引き、安全レバーを外し、「当たるかよっ」 腕を武装と同時に背後を振り向き、ガラス越しに屋上目掛けぶっ放した。  §  彼、朧は、二人がホテルに入った後、部屋が良く見えるマンションの屋上に潜んだ。 ノエルが服を放り投げ風呂に入るのを見てしまい、自分は覗き魔ではないんだと焦って背を向けた彼は、今は屋上の機器類に背中を預けて室内を見ないようにしている。 ストーカーをしているとはいえ、誠実ではあるらしい。(……怖すぎてだいぶ使っちまった) 軽食を取る彼の額には、少なくない汗が滲んでいる。 それは運動や緊張から来るものではなく、彼の能力によるものである。  名を、  Birther 『静かなる隣人』  体内に取り込んだ魔素を、原理は不明だが、透明化の性質を持つ魔素に変化。 朧は体表十五㎝以内に限り、そこから練り上げた魔力を自在に扱うことができる。 切り替えは常時可能で、通常の魔力を扱うことも出来る。 その特別な魔力を自身に纏うことで、完全に姿を消すことが可能。 そしてこ
last updateLast Updated : 2026-09-07
Read more

53話

  ――「捕まえた?」「たぶん」 依然生命反応が何も感じ取れない為、そこにいるかどうかも分からないのだ。「死んでないよな?」「……たぶん」 組まれた手の上に移動した二人は、大きな指に耳をつけ中の音を聞こうとする。 静まり返った内部に、幾許かの心配が湧き上がる。「お、俺知らないからな」「不可抗力」「過剰暴力だよ」 二人でワタワタと罪の擦り付け合いをしている、そんな時、突然足元が少し揺れた。 よく聞けば、連続する重音が小さく響いている。「……殴ってる」「殴ってるな」 自力で抜け出そうとしているのか、それなりの力でぶん殴っているのがよく分かる。 どのような状況であれ、生存は確認できた。一安心だ。怪我してたら自己責任ということで。 ノエルは小さな穴を空け、中を覗き込む。「お前は包囲されている。姿を見せろ」 するとすぐに一人の男が虚空から現れ、観念したように手を上げた。「大人しくする、出してくれ」 抵抗する気もない、と朧はひらひらと白旗を振った。 二人はとりあえず通気性が良くなってしまった部屋を変え、床に転がるそれを見下ろす。 何を隠そう、頑丈な蔦で簀巻きにされた朧である。「初めまして、ではないか。まさです。動画投稿者をしています」「ノエル。好きな食べ物はラーメン」「……朧 正宗です。好きな食べ物は麻婆豆腐、です」 突如始まった自己紹介。 状況も相まって、朧の頭に疑問符が浮かぶ。 まずは謝罪、次に命を要求されると思っていたのだが。 兎にも角にも、と朧は簀巻きのまま正座になり、頭を下げた。「勝手について来たりして、申し訳ありません」「認めたぞ。ストーカーだ」「警察警察」「ちょ、待ってくれ、下さい!」 クールな顔に汗を垂らし必死になる彼を、二人が冷めた目で見つめる。 …………『はい、こちら警察。どうしました?』「繋がってる⁉」「ストーカーにあってる」『相手が誰か分かりますか?』「ちょっと‼お願いします!許してください‼」「まさ」「何で⁉」 騒ぎ散らす男二人に呆れ、ノエルは電話をぶっちする。「はぁ、取り乱しすぎ」「何で⁉ねぇ何で⁉」「はぁ、はぁ、助かった」 詰め寄ってくる東条を無視し、彼女は朧を再び転がし踏みつけた。「何で追ってきた?正直に言え」 自分を見下す冷眼に、彼はびくりと固ま
last updateLast Updated : 2026-09-08
Read more

54話

 「友達、ですか?」 東条の提案に朧は首を捻る。「そうそう。お友達になったら、お互い何処にいるか分かっても不思議じゃないだろ?」「え?」「最近じゃアプリで人の位置が分かるんだ。便利なもんだよ」「いや、え?」「ノエル、蔦解いてくれ」 淡々と進んで行くお友達契約に、朧は既についていけていない。 拘束が解かれた彼は、言われるがままスマホを取り出し、言われるがままGPSアプリを入れさせられてしまった。「よし、これで俺達も友達だ」「え、あ、はい。……え?」 朧は差し出された握手に応じてようやく、自身に起きている事態を呑み込む。 目の前の男は、カオナシと呼ばれるこの男は、はなから自分を助ける気などなかったのだ。 危険と判断した存在を排除するのではなく、監視する為、勢いと諭した口調で焦る自分を誘導したのだ! その所業、正に「策士!策士だ!」「何の事やら」 東条は、納得いかないとむくれるノエルをわしゃわしゃする。「これじゃあノエル達の場所も分かっちゃう。プライベートもクソもない」 プライベートだなんだと言っていたのは誰だったか。ノエルは東条を睨む。「大学内は別として、 無断で一㎞圏内に入らないこと。 俺達に近づく時は必ず連絡すること。 俺達の場所を他者に漏らさないこと。 これ守らせればいいだろ」「そんなのこいつの匙加減。抜け道いくらでもある。携帯置いて自分だけ来ればバレないし」「そこまでするか?なぁ」「あ、ああ」 二人の会話に入れないでいた朧が頷く。 正直そこまでしてついていこうとは思わない。というかそんなことしないからこの制約を解いてほしい。彼の切実な思いだ。「それに俺らを見てたってことは、ノエルのシャワーシーンも見てるってことだよな?」「――っ」 朧は突然の追及にぶんぶんと首を振る。「見てない!ちゃんと目を逸らした!」「目を逸らすって行為はよぉ、見ちゃいけない物を見た時にするんだよ。 お前は見てんだよ、こいつの裸体をよぉお」「み、見てない!」「……ノエル、今のチャンネル登録者数何人だっけ?」「五千万」「とまぁ、俺達は日本人口の半分くらいに映像を拡散できるんだわ。勿論中には海外の人間もいるし、ぶっちゃけ殆どこいつのファンだ。 悲しいことにな」「……(ごくっ)」 東条は朧に肩を組み、耳元で囁いた
last updateLast Updated : 2026-09-09
Read more

55話

  バッグから鍋とフライパン、その他諸々を取り出した後、二人してキッチンに並ぶ。 巨大なワニ足にスパイスを練り込む朧が、中華鍋にドポドポと油を注ぐ東条を横目に見る。(……何やってんだ、俺) 強さを求めて遠出してきたのに、いつの間にやら弱みを握られ、今は少女の為に飯を作っている。 本当に何をやっているのか。 彼は無心でスパイスを掴み、肉をペチペチした。 そんな時、「朧はさ、何で身体強化とか、魔法の使い方仲間に教えないん?」 沸騰を待つ東条が、椅子に座って彼を見た。「……別に深い理由はないですね。教えたらあいつは迷わず広めるだろうし、そうしたら治安も崩れる。俺も好き勝手出来なくなる。 そもそもあそこで過剰な戦力はいらないでしょ」「死んでほしくない、とかないの?」「……別にないですね。好きでも嫌いでもないし、そろそろ出ていくつもりだったんで」「ふーん」 朧がフライパンにオリーブオイルを垂らす。「最初からあそこにいたの?」「自衛隊に拾ってもらおうと渋谷から来ました。でも近づけないわ間に合わないわで、一人で生き延びてた時見つけましたね」「じゃあ結構恩あんじゃねーの?」「まぁ確かに強くなる為の拠点が手に入ったのはデカかったです。だから面倒臭い纏め役も引き受けたんですよ」 朧がワニ肉をサイコロ状にカットしていく。「モンスター狩に行った後、安全な家で休めるように利用してるってわけだ」「そういうことですね」「冷てー」「あんたも似たような性格でしょ」 朧は再度肉を揉む。「毒島がお前のこと、血も涙もない、人間の命になんてカス程の興味もない人間だって言ってたよ」「……あいつ」 彼の額に青筋が浮かぶ。「俺だって目の前に襲われてる人いたら助けますよ」「ホントかよ」「ホントだよ」「勝てるか分からない相手だったら?」「見捨てます」「ほらー」 ワニ肉がフライパンに落とされ良い音を立てる。「……まさから見て、俺は強いですか?」「強いね」「池袋でも生きていけるくらい?」「んだな」「……」「何だよ、予想通りってか?」「はい」「可愛くねーな」 朧は蒸す為フライパンの蓋を閉じた。 静かな空間に、パチパチという小さな音だけが響く。「……まさは俺の友達なんですよね」「そーだな」「じゃあ戦い方教えてください」「やだめ
last updateLast Updated : 2026-09-11
Read more

56話

 「い~にお~い」「おまた~」 ノエルが鼻をひくつかせ、臭いに釣られてゆらゆらと寄ってくる。「ワニのステーキだ。塩胡椒で味付けした」 テーブルに置かれた朧の作品に、ノエルの目が輝く。 シンプルながらも、味付け、火加減共に絶妙な塩梅で調理されたワニ肉は、純白の輝きを纏い、ダイヤモンドの如き存在感を放っていた。「おぉぉおっ。朧見直した!褒めて使わす」「……どーも」 満更でもない朧が、顔を逸らして頬を掻く。 そんな彼を薄く笑い、東条は大皿をサーブする。「おいおい忘れてもらっちゃぁ困るなあ!」「こ、これは!」「メインディッシュ、テナガエビザリガニのフリット。夢と希望を添えて。でございます」「なんと!」(名前だけ大層だな……) 荒々しい見た目に、荒々しい香り。自然をそのまま形にしたような食事だがしかし、先の宝石と比べては、やはり聊か劣ってしまう。 そこで東条は、ある物を懐から取り出した。「ご覧あれ」 瓶からつままれた塩が、東条の肘を滑り落ちていく。 只の塩、されど塩。その様は正に、荒野に降り注ぐ恵みの雨。 美しき天の祝福に、ノエルは見惚れ、朧は呆れた。「料理とはエンターテインメントである。さぁ、召し上がれ(……決まった)」 ノエルの前に、二つの皿が揃う。 彼女はまず、ワニのステーキを口に運んだ。「うみゃい!うみゃい!」「当たり前だ」 次いで素揚げに齧りつく。「うもい!うもい!」「光栄の極み」 腕を組む朧が、ノエルに質問する。「どっちが美味かった?」「技術は朧、演出はまさ。味は美味い。同点!」 ノエルらしい採点に、彼は額を抑える。「……腑に落ちねぇ」「まぁまぁ、君もよく頑張ったさ。俺等も食べようじゃないか」「……はい」 何故か得意げな東条に促され、朧も渋々と席に着くのであった。 ――「どーよモンスターの味は?(モグモグ)」「普通にいけます(モグモグ)」「ん。外国間の渡航ができなくなった今、食料自給率の低い日本には朗報。こっちでも金稼げそう(ハムハム)」「でも人間殺そうとする生物だぜ?養殖して大量生産とか無理だろ(モグモグ)」「じゃあ朧やって(ハムハム)」「やって」「嫌ですよ。てかあんたらずっと金ですね」「金がなきゃ人生楽しめないからな」「な(ハムハム)」「それは分かりますけど……」
last updateLast Updated : 2026-09-12
Read more

57話

  こんな世界になる前の朧は、常にニコニコとし、他人の為に率先して動く、社会的模範生徒だった。 親の期待に笑顔で答え、 友の頼みは断らず、 相談には親身になり、 大して親しくない人間ともすぐに打ち解け合う。 そんな誰もに好かれる完璧超人、それが朧 正宗だった。 彼もそれを当然と思い、その生き方こそが正解であると信じていた。 しかし同時に、心のどこかでは常に息苦しさを感じていた。 自分を殺し、 他人が作る雰囲気に溶け、 空気に溶け、 感情に溶ける。 そこに自分は在るのか。 生きていると言えるのか。 人生とは何か。 自分とは何か。 そんな命題が、彼を日々蝕んでいった。 そして来たる、十二月二十四日。彼は答えに出会う。 突如溢れ出るモンスター。 パニックになる渋谷駅周辺。 食い殺される人間達。 そんな中に、彼も数人の友達といた。 必死に逃げ惑う中、彼は段差に躓き転倒してしまう。「助けて」 そう手を伸ばした先には、 只々遠ざかる、友達の背中があった。 気付いていない?そんなはずがない。 手を伸ばした時、確かに目が合ったのだから。 彼は唖然としながら振り返る。 自分を見下ろす、狼の群れ。 瞬間、彼の中の重しが消えた。同時に、彼という物質が、存在しながらもこの世から消える。 一瞬にして知覚から外れた彼に狼は驚くが、消えた存在よりも見える存在。すぐに獲物を切り替え、前を走る人間達に飛び掛かった。 ――叫びながら食われていく、友達だった者達。 朧はそんな光景をすぐ後ろから見ながら、理解した。 結局人とは、自分か他人かで分けられる。 そこには決して交わらぬ境界がり、関与できない領域がある。 結局彼等も、只の友達でしかなかったのだ。 彼は決めた。 他人の為に生きるのはやめよう。これからは自分自身の為に生きよう、と。 自分こそが中心に考えるべき存在であって、他人とは人生においての脇役でしかない。 なれば自分らしく、好きなように生きよう、と。 他者に溶け込みながらも、自由に生きる。 そのどちらもが、自分を形作る本質。 そんなある種の矛盾こそが、この能力を生んだのだ。
last updateLast Updated : 2026-09-13
Read more

58話

  ――談笑しながら食事を終えた三人。 そろそろ帰ると言う朧を、二人はベッドに寝っ転がりながら見送っていた。「じゃあ帰ります」「ん」「気をつけてなー」 お互いに淡白な挨拶を交わす。 朧がさっさと窓から飛び降りようとした時、「……なぁ朧」「はい?」 東条が彼を呼び止めた。「俺が暇すぎて死にそうな時なら、鍛錬とか戦闘スタイル、一緒に見てやってもいいぜ」「……どういう風の吹き回しですか?」「いやなに、恩を売っとこうと思ってね」 一瞬訝しんだ朧だったが、予てから自分が望んでいた事だ。素直に受け入れることにした。「じゃあ早速ですけど、俺に足りないものは何ですか?」「単純に魔力量とスタミナだな。今のままだったら、ミノ三兄弟に殴られたら一撃でミンチにされるな」「……何をすれば?」「そーだな。……とりあえずこれから毎日五時間、ぶっ通しで全力の身体強化を維持し続けろ」「……嘘だろ」「本当。別にやってもやらなくても自由だけど、まぁできたら連絡頂戴や」「…………分かった」 意を決したのか、そう言って朧は窓の外に姿を消した。 聞いていたノエルが驚いた様に東条を見る。「まさ変。熱でもある?」「ねぇよ」 それも当然。彼女の知る東条は、面倒なことを何よりも嫌う。とりわけモノを教えるなど、最も向いていないことだ。 しかし東条はそんなノエルを気にした風もなく、天井を眺める。「ただなー、分かっちまったんだよ俺ぁ」 ずっと引っかかっていた、心の中のモヤモヤの正体。 それは、「あいつ、俺に似てるんだわ」 鏡に映る自分自身であった。「あれが?まさに?」「厳密には、ノエルと出会う前の、佐藤さんや葵さん、凛さんに、紗命とも会う前の俺だな」 自分一人で全てを敵にまわしていたあの頃に、朧はそっくりなのだ。「親近感てやつ?」「そんなところ。何かほっとけなくなった」「ふーん」 自分にこんな感情が湧いたことに驚きだが、言ってしまったのだからしょうがない。口に出した以上、きちんと考えてやりたい。 一人で生きると突き進んでいた自分は、かけがえのない仲間を得て、仲間の温かさを知った。 そして最後は、大切な者を失う冷たさを知った。 自分に足りなかったものは明白。 力だ。 力があれば、個だろうが群だろうが、双方に道が開ける。 朧がどちらの道
last updateLast Updated : 2026-09-14
Read more

59話

  § 朧は若干急ぎながら地を駆けていた。 予想より長居してしまったせいで、数時間大学を空けてしまった。 半グレとの繋がりなどないとは伝えたが、勝手な行動に何か言及されるかもしれない。 まぁ、モンスターを狩っていたとでも言っておけばいいだろう。 早く鍛錬に取り組みたい。そんなことを考えながら姿を消し、大学の外壁を飛び越えようとした、 その時、 目の端に一匹のモンスターが引っかかった。「……見た事ないな。……猿か?」 トレントの影から大学を覗く、ゴリラとテナガザルを足した様な茶褐色の生物。 数秒様子を見ていると、さっ、と奥に逃げてしまった。「……」 朧は大して気にすることもなく、壁を飛び越えて中に戻るのだった。 § ――日も落ち、暗くなった室内。 外から差し込む薄い明かりに、東条が目を覚ました。「ふぁ~~。……」 時刻は十九時前。 ポットでお湯を沸かし、のそのそと着替え、隣で寝るノエルを揺する。「ほら起きろ~」「む~」「東京タワー行くんだろ?いい感じにライトアップされてんぞ」「ん~。……ほんとだ」 夜の街に聳える、真赤な塔。 周りの光源が少ないのもあり、その存在感は中々の物だ。 二人は諸々用意を済ませた後、小さなリュックだけ背負い、タワーに向かって歩を進めた。 ――「とうちゃーく」「ちゃーく」 トレントがそこら中に絡まった赤い鉄骨を、真下から眺める。「こうして見るとデカいな」「まさも初めて?」「ああ。別にわざわざ行くとこでもないと思ってたかんな」 高い、デカい、というだけで、あまり魅力を感じたことが無かった。 正直今も、別に惹かれるものはない。 ノエルが彼のズボンを引っ張り、急かす。「登ろ」「上るか」 東条がエレベーターに向かおうとすると、なぜか当然の様にノエルが背中に飛び乗った。 嫌な予感がして、肩に顎を乗せる彼女を睨む。「何してんだ、早く上ろうぜ」「ん。早く登ろ」 言っている事は同じなのに、決定的なまでに何かが違う。「……マジかよお前」 彼女が何を言いたいのか理解した東条は、もう一度タワーを見上げる。 横から刺さるキラキラとした視線に負け、彼は鉄骨に手を掛けた。 ――「たかー」 風に白髪を靡かせ、ノエルが夜景を楽しむ。「たけーなこりゃ」 四肢を武装した東条も、一度片
last updateLast Updated : 2026-09-15
Read more

60話

         §――「あの、すみません」「はい?」『なんだ?』       『JKだ』『JKだ』――「私達と写真を撮っていただけませんか‼」『⁉』           『ファンだ‼』『羨ましいぃぃい‼』           『カオナシ露骨に喜んでるな』『バレバレだな』――「す、すみません。でもやっぱり、ちょっと怖くて」『そりゃそうだ』           『こんなのそこら辺歩いてたら即通報だもんな』『よく声かけたよ』           『凄い子だ』――「カオナシっち筋肉凄いよね。身体触らせてー」「存分に触るがいい」『ちょっとくっつきすぎだと思うんですよ』                     『不純異性交遊だと思うんですよ』『性の乱れなんですよ』              『羨ましいだけだろ』『ああそうさ!』          『俺だってシックスパック触りたいのにっ』『そっちかよ』――「ノエルちゃんのもち肌の方がヤバいし!」『ぺたぺた』        『ぺたぺた』『ぺたぺた』            『……よし、こいつ等つれてけ』『悪鬼滅殺、悪鬼滅殺』              『人の肌をそんなに触るもんじゃない』『お、解析班。その通りだな』              『それもJKが、こんなにっ』『ん?』              『私のお腹もぷにぷにだぞ!』『なんだ、只の変態か』              『触ってくれ!私を触ってくグフぅっ』――「カオナシさーん。ノエルちゃーん。一緒に食べよー」『朝飯豪華じゃね?』                 『破格だな。大災害の現地でこれは考えられない』『あの三人、めっちゃ頑張ってんだな』                  『三人だけじゃないだろ』『ここの戦闘員は優秀だな』                『イケメンだけど認めるしかないな』『だな』「ノエルちゃんとカオナシさんってどういう関係なの?」『それは気になる』             『親子じゃないんだ』『親子っぽさはないだろ』「まさだって勝手に荷物の中にエロ本詰めるのやめてほしい。捨てるの面倒」「それここで言う⁉あと毎度毎度そっと捨てんのやめろよ!親に見つか
last updateLast Updated : 2026-09-17
Read more

61話

  翌日昼頃に目を覚ました東条とノエルは、現在、目についた食品売り場を片っ端から漁りながら大学への道を戻っていた。「ほい、ほい、ほい」「詰めろ詰めろ」 手に取った物を殆ど確認せず、後ろに放り投げる。 そんな彼等の背後には、半径二m程に膨らんだ漆黒の球体が浮かんでいた。 中を見れば、食料から日用品まで、使えそうな物が種類問わず詰め込まれている。 頭部以外の武装を捨て、残った漆黒を全て運搬用に回す本気ぶり。 彼等、主に東条は、今回の報酬に過去一番のやる気を見せていた。 ――最終的に半径七m程のデカさになった球体を頭部に繋げ、見えてきた大学にニヤニヤと笑みを漏らす。 そんな汚い顔を晒す東条に、ノエルが一つ提案をした。「西側、ヤンチャしてる人いっぱいいるっぽいよ」「……手が疼いてしゃあないんだが」 ワキワキと卑猥な動きをする右手を必死に沈める。「メインはいつ食べる派?」「……最後に食べる派」「行こ。汚い人間見たい。紅達は撮れなかったし」 藜組の彼等は、汚いというよりかは最早洗練された闇であった。 下っ端すらも末端まで統率されており、隙が無い。 会った人間にしか分からない、動画映えしない悪意。 ノエルとしては、そんな物見ても面白くないのだ。「臭い物ほど嗅ぎたくなるってやつ?」「ちょっと違う」 背中の上で行く気満々のノエルに溜息を吐く。「……はぁ、いくか」「いえーい」(……ちょっと寄り道します。もう少し待ってて下さい、馬場さん) 東条は胸に手を当て、自分を待っているだろう彼女に謝罪した。
last updateLast Updated : 2026-09-18
Read more
PREV
1
...
151617181920
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status