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33話

last update publish date: 2026-08-25 06:34:04

 腹が減ったという東条とノエル意見によって、適当な店に入ることになった。

 二人共例の服は脱ぎ捨て、元の白黒に戻っている。

「こんな風にちゃんと店で食べるの、久しぶりです。あ、私は光明院 新と申します」

「姫野 胡桃です」

「春谷 嶺二っす」

 ソワソワした三人が自己紹介を始める。

「ノエル」

「歩き回っている身としては、色んな店で勝手に飯食えるの楽しいんですよ。

 私はまさです。呼び方はカオナシでもまさでも、どっちでもいいですよ」

「動画ではモザイクかけてますけど、いいんですか?」

「一応ってだけなんで、構いませんよ」

 席の土埃を払い、厨房を確認する。

「とりあえずあるもの温めてきますわ」

「俺も手伝います」

「私も」

「じゃあ俺も」

「早めによろ」

 さも当然かのようにパソコンを弄るノエルを置いて、彼等は各々食べれえそうな物を物色し始めた。

 用意した食事を囲み、今までのお互いの経緯や雑談を交わしていく。

「まさか新さんが次の目的地の代表だったとは、驚きました」

「ではやはり、明海大学に向かっている途中だったのですね!」

「え、えぇ」

 嬉しそうに笑顔を作る彼に、東条は引き
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  • Real   87話

      教室に取り残された三人は、遠目からその光景を見ていた。 胡桃は恐怖と焦りにパニックになりながら。 馬場はどうすれば良いのか分からず頭を回転させながら。 そしてノエルは、感情を曝け出した東条を嬉しく思いながら。 ノエルは机に座って足を揺らしながら、新が蹂躙される姿を満足気に眺める。 彼女は単純に、東条があの場で怒らなかった事に不満を抱いていた。 彼の大切なモノは自分の大切なモノ。その為に怒るのは自分も嬉しいし、何より、その引き金が彼女自身ということに、むず痒い喜びを感じていた。(ふーん♪ふーん♪……むふふ) 故に今のノエルは、かなり上機嫌なのである。「ノエル!今すぐまさを止めてくれ!」 馬場が叫ぶ。彼女は分かっているのだ。あの状態の東条を止められるのは、ノエルしかいないということを。「何で?」「新が死んじまうからだよ‼」「じゃあ断る」「――っ」 目も向けずあっけらかんと言ってのけるノエルに、馬場は戦慄する。「ノエルちゃん!お願いします!私がちゃんと謝りますっ、新君にも謝らせますっ、何でもしますからッ、だから、お願い!ひぐっ、うぅ」 涙を流し懇願する胡桃に、流石にノエルも視線を向ける。「……ノエルは胡桃も大事。仲良くしたいと思ってる」「はぃ……」「でもまさの気持ちの方がもっと大事。ノエルはまさの為なら人も生かすし、殺す」「そんな……」 胡桃の表情が絶望に染まる。 ――とそんな所に、一人の男がドアを潜って現れた。「ノエル、あれ流石にマズくないか?」「朧もノエルに頼みに来た?」「そうだけど……、この状況を見るに無理そうだな」「理解が速くて助かる」 彼は絶望する胡桃と、それをあやす馬場を見て察する。「あのままじゃ本当に死ぬぞ?あんた等も大勢の前で殺人を犯すデメリットくらい分かるだろ。下手したら今の生活も出来なくなるぞ」「今ノエル達は理性じゃなくて感情で動いてる。たまにはこういうのもいい」「たまにはって……、あんた等いつも欲望のまま動いてんだろ」「……確かに」 朧がこんな時でも呑気なノエルに溜息を吐く。しかし次の言葉に、彼は戦慄した。「……それにそんなの、バレなきゃいい」「……お前、」 その言葉の真意は、この場ではきっと彼にしか分からなかっただろう。直に彼女の冷たい部分に触れた、彼にしか。 加えて

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     「新君!あやまッ――ッ⁉……え?」「――ッ⁉」 胡桃と馬場は、一瞬何が起きたのか分からなかった。無論、この場にいない新も同じであっただろう。 何せ瞬きの間に、教室の壁が盛大に破壊され、そこからグラウンドがが丸見えになっていたのだから。 先程まで新がいた位置に立つ、この惨状を起こした張本人。「え?あ、あの、まささ――ヒッ⁉」 その男の顔に張り付く闇は、漆黒すら呑み込まんと揺らめいていた。「――ッ⁉グブッがッ⁉あがっ――」 目の前にいた東条から途轍もない悪寒を感じ、咄嗟に身体強化を纏った新は、次の瞬間、左頬に首が引き千切れる程の衝撃を受け壁をぶち抜き吹き飛んでいた。 直線上にある物を悉く破壊し、グラウンドを数十m跳ね転がり、ようやく止まる。 嶺二を含めその場で鍛錬していた全員が、突然飛び込んで来た彼に目を丸くした。 新はグワングワン鳴る頭を押さえ、鉄の味がする口内から異物を吐き出す。 出てきたのは、六本の歯。左の奥歯が根こそぎ折れていた。 彼は歯をポケットに仕舞い、首の激痛を圧して立ち上がる。 未だ揺れる視界の先には、嘗てない程の闇を背負った化物がいた。「チッ……」 東条は立ち上がる新を見て、反射的に拳を緩めてしまった自分に舌打ちした。 彼が放った拳には、当たる直前まで確実に殺す意志が込められていた。しかしインパクトの瞬間、人を殺す事への抵抗に無意識に魔力を抜いたのだ。 東条は瓦礫を踏み越え、外に出る。 次は本気で殴る。そう拳を固めて。「おいっ、新、お前その傷、何があった⁉」「光明院⁉」 「新先輩!」 「救急班呼べ!」「……下がってろ。ぺっ」 新はグラウンドに降り立つ東条から目を離さず、嶺二を押しやり血を吐き捨てた。 同時に、東条が撒き散らした魔力に当てられ、騒がしかったグラウンドが静まり返る。 誰もが身じろぎ一つせず硬直し、その本能的危険が自分に注目するのを避けた。 一人を除いて。「――ふぅぅぅ。……カオナシ、何があったかは、知らねぇが、引いてくれ。頼む」 嶺二は歩いてくる東条の前に立ち、ボロボロの新を庇った。「……あぁ嶺二、さっきは酷いこと言って悪かった」「あ、ああ。もう気にしてねぇ。ありがとな」「それだけだ。退《ど》け」「――っ」 再び歩き出す東条に彼の足が竦む。「出来ねぇ!お前、何するつも

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     「最初から強くて、人を食いものにして生き残って、その後は弱い者から搾取する。随分気楽で楽しそうな生き方だな」「おいやめろっ」「新君もうやめよ!」 東条の事情の一端を知っている馬場が制止の声をかけ、胡桃も慌てて止めに入る。 しかし新は薄笑いを浮かべ、尚も続ける。「俺はあの日、父さんと母さんに、妹を亡くしたよ。……妹は瓦礫に圧し潰されて死んだ。……父さんと母さんは、俺を守るためにモンスターに向かって行った」 新はその時の光景を思い出し、自身の拳を血が滴る程握りしめる。「人を金としか思ってないお前に、俺の気持ちが分かるわけない。分かって堪るか。 ……命の尊さが、命の気高さが、分かって堪るかよッ」 親の仇を見る様な目で東条を睨む新。 対する東条はざわつく心を抑え、少しばかりの感情を乗せて睨み返した。「大切な人の死を、盾にするなよ」「はッ、お前に最も似合わない言葉だな」「おい新!いい加減にしろっ」 馬場が新の胸倉を掴む。と同時に、圧倒的な魔力の重圧が教室を埋め尽くした。 その出所は、ぶち切れた東条、……ではなく、「殺す」 自身の相棒の大切なモノを傷つけられ、ブチ切れたノエル。 大気が震え、コンクリートが軋み、机に罅が入った。 三人は嘗てない殺意に晒され、全身の鳥肌が立ち、体中から玉の汗が噴き出る。恐怖で身体が硬直し、その場から一歩も動けなくなった。 ノエルが串刺しにしようと手を掲げた、瞬間、この中で唯一動ける男が、彼女の目を掌で覆った。「……まさ、どうして止める」「目、割れかけてたぞ。気ぃつけろ(ボソ)」「まさ」「……ありがとうな。俺の為に怒ってくれて」 ノエルがゆっくりと手を下ろす。「……まさが我慢するなら、ノエルも我慢する」「ありがとよ」 掌を退けると、彼女の瞳は人の形に戻っていた。「……人間が少し分かった気がする。この場であれを殺すのは、デメリットしかない。 でも今は、……そうなってもいい気分」 東条はノエルの頭をポンポン、と叩いた。 重圧が霧散し、胡桃と馬場はへたれこみ、新は椅子に落ちる。 新は悔しかった。友という言葉すら否定され、自らの信念を害だと断定され、挙句の果てに力で押さえつけられた。 自分が今まで大切に培ってきたモノを、不必要だとゴミ箱に捨てられたのだ。 新はそれが、悔しくて堪らなか

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      すぐに来た馬場も混ざり、ピりついた空気の中皆が向かい合う。「で、話って?」 東条とノエルは椅子に腰かけ、新を見た。「まず、勝手に情報を動画にして流したのは謝る。すまなかった」 素直に頭を下げる新。「……だが、後悔はしていない」「っ新君!」 しかし顔を上げた彼の目には、確固たる意志が宿っていた。「今も全国各地に、俺達みたいに危険区域に取り残された人が大勢いるはずだ。その人達が少しでも安心して過ごせるように、俺はするべきことをした」 東条はそんな彼の決意を鼻で笑う。「なるほど。お前はそのいるかも分からない可哀想な人間の為に、簡単に人を殺せる凶器の扱い方講座を全国に流したと」「力を向けるべきは、モンスターであって人じゃないだろ」「お前何見てきたんだ?半グレ共が彼女達に何してた?あいつ等はモンスターか?人間だろ。お前と同じ人間。言っちまえば最も人間らしい人間だよ」「同じな訳ないだろッ。あれは人の道を外れた獣だ!」 東条は呆れて足を組み、新を見下す。「論点をすり替えるな。 要するにお前の行動は、その獣さんにも力を与えてるんだよ。例えばお前のおかげで、逃げることしかできない弱者が、凶器を手に入れてパワーアップしたとしよう。それで何か変わるか?何も変わらない。なぜなら獣さんも、同じ凶器を手に入れてパワーアップしてるからだ。 今のお前なら分かるだろうが、初期の魔力量には圧倒的個人差がある。もしかしたらお前みたいに、ノウハウを齧るだけで強くなる人間もいるかもだが、お前が想定しているのは、ここの避難民みたいな無力な人間だろ?じゃあ大半が焼け石に水、ただの付け焼刃だ。そこに戦闘慣れした獣さんと、モンスターと戦ったこともない人間の経験値の差。 お前のおかげでモンスターの被害は減るだろうが、心無い獣さんによる被害が多発するだろうな」「――っこの技術のおかげで、生き延びれる人が出で来るのは事実だろ!そういうクズ共からは、より力がある人間が守ってやればいい!」「お前人間の善意に夢見すぎじゃないか?現に今お前の目の前にいる力ある人間は、心から他人の幸福を願って人助けをしているか?ん? 俺みたいなのを例に出すのは違うかもしれねぇが、大体の取り残された奴は自分の事で精いっぱいで、他人の事を考えてる余裕なんてないだろうな。ここの奴等は本当に運がいいよ」

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  • Real   82話

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