Alle Kapitel von ヤンデレヒーローを負け幼馴染に修正したはずが執着溺愛されてしまいました: Kapitel 11 – Kapitel 20

68 Kapitel

狼族じゃない何か

 ――どうやら、この屋敷には狼族以外の誰かが入り込んでいるらしい。「本当か?」 騎士が半信半疑でニールを見る。「本当だ」 ニールは真剣な顔で床にしゃがみ込み、鼻をひくひくと動かした。「兄ちゃんもわかるだろ?」 メイナードも静かに目を閉じる。 少しだけ空気の匂いを確かめるように息を吸うと、小さく頷いた。「ああ」「狼族の臭いじゃない」 その一言で、食料庫の空気が変わった。「では、犯人は……」「まだ屋敷の中にいるかもしれねえ」 ニールが立ち上がる。「肉だけ持って逃げるなんて変だ」「変?」 私が首を傾げると、ニールは当たり前のように言った。「食うなら、その場で食えばいい」「そういうものなの?」「狼は腹が減ったら食う」 なるほど。 言われてみればそうだ。 わざわざ塩漬け肉を抱えて逃げる狼なんて聞いたことがない。「つまり、人間かもしれないってこと?」「いや」 メイナードが首を横へ振った。「人間とも限らない」「え?」「少なくとも、狼族ではない」 その言葉に、お父様は険しい顔になる。「騎士隊」「はっ!」「屋敷の門を閉じなさい。誰も外へ出すな」「承知しました!」 騎士たちが慌ただしく走っていく。 食料庫の中には、私とメイナード、ニール、お父様だけが残された。「ねえ」 私は床に残った足跡を見つめる。「二人なら、この足跡を追える?」 ニールはニヤリと笑った。「当たり前だ」「兄ちゃんより先に見つけてやる!」「競争することじゃない」 メイナードが苦笑する。「シェリルを危険な目に遭わせるな」「わかってるよ」 そう返事はしたものの。 ニールの耳はぴくぴくと嬉しそうに動いていた。 どうやら兄と一緒に何かをすること自体が楽しいらしい。「じゃあ、お願いね」 私がそう言うと、ニールは少しだけ目を丸くした。「……オレに?」「そう」「兄ちゃんじゃなくて?」「二人とも」 私は笑う。「狼族のことは、二人の方がずっと詳しいもの」 ニールは照れくさそうに鼻をこすった。「……しょうがねえな」「任せろ!」 そう言って勢いよく飛び出そうとした、そのときだった。「待ちなさい!」 料理長の悲鳴が響く。 振り返ると、食料庫の奥に積まれた樽が、ガタン、と大きく揺れた。「誰かいる!」 騎士たちが一斉に
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-07-07
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黒猫の使い魔

 二人は視線を合わせる。 次の瞬間、樽の陰から黒い影が勢いよく飛び出してきた――。「きゃっ!」 私の足元をすり抜けるように、真っ黒な猫が駆け抜けていく。 でも、普通の猫じゃない。 子犬くらいはありそうな大きな身体に、艶やかな黒い毛並み。 金色の瞳をぎらりと光らせながら、棚から棚へと軽々飛び移っていく。「いたぞ!」 騎士たちが追いかける。 でも黒猫は、まるで遊んでいるみたいに身をひるがえし、するりと攻撃をかわしてしまう。「兄ちゃん!」「ああ!」 メイナードとニールが同時に飛び出した。 メイナードは窓際へ回り込み、ニールは出口を塞ぐ。 黒猫は二人を見比べると、大きく背中を丸めた。「しゃあああっ!」 毛を逆立て、威嚇する。「猫じゃない」 ニールが低く呟く。 鼻をひくひくと動かし、空気の匂いを探る。「魔力の匂いがする」 その言葉を聞いた途端、メイナードの表情が引き締まった。「使い魔か」「使い魔?」 私が首を傾げる。「魔法使いが使役する動物だ」「じゃあ、この子は魔法使いの……?」「ああ」 答えた瞬間だった。 黒猫が再び駆け出す。「逃がすか!」 ニールが飛び上がる。 でも黒猫も負けていない。 天井近くの梁へ飛び移ると、そのまま窓へ向かって一直線に駆け抜けた。「兄ちゃん!」「任せろ」 メイナードが窓枠を蹴る。 人間では考えられない跳躍だった。 空中で黒猫の前へ回り込む。「にゃあっ!?」 驚いた黒猫が身をひねる。 その隙を逃さず、ニールが首根っこをひょいとつまみ上げた。「捕まえた!」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-07-08
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狼族の兄弟

 黒猫騒動から数日。 ランカスター家には、少しずつ穏やかな日常が戻ってきていた。「お嬢様、おはようございます」 朝、部屋の扉を開けると、銀髪の少年が静かに頭を下げる。「おはよう、メイナード」 まだ包帯は巻いているものの、足の傷はだいぶ良くなっていた。「ちゃんと眠れた?」「はい」「足は痛くない?」「もう歩けます」 そう言って微笑む姿は、年齢のわりにずいぶん大人びて見える。 それに比べて――。「兄ちゃん!」 廊下の向こうから元気な声が響いた。 どたどたどた、と勢いよく駆けてきたのはニールだった。「朝ご飯できてるぞ!」「ニール、走るな」「えー!」 返事をしながらも、ニールはそのまま私たちのところまで走ってくる。 耳はぴんと立ち、尻尾も嬉しそうにゆっくり左右へ揺れていた。「今日も来てたの?」「うん!」 満面の笑みで頷く。「朝早くから森を抜けてきた!」「毎日来るのは大変でしょう?」「平気!」 胸を張るニール。「兄ちゃんがいるし!」 その言葉に、メイナードは困ったように苦笑した。「父上には許可をいただいているとはいえ、お前は少し来すぎだ」「だって暇なんだもん」「勉強は?」「終わった!」「本当か?」「たぶん!」 メイナードは深いため息をつく。 兄らしい反応に、私は思わず笑ってしまった。「ふふっ」「笑うな!」 ニールは頬を膨らませる。 でも、耳は落ち着きなくぴくぴくと動き、尻尾も嬉しそうにゆっくり揺れている。 怒っているように見えて、全然怒っていない。 最近では、そのくらいは私にも分かるようになってきた。
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-07-08
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お花のお手伝い

 翌朝。 メイナードは今日も執事長について屋敷の仕事を教わっていた。 私は少し離れたところから、その様子を眺めている。「お嬢様のお部屋には、毎朝花を飾ります」 執事長がそう言うと、メイナードは真剣な顔で頷いた。「花は季節のものを一輪か二輪。香りが強すぎるものは避けること」「承知しました」「兄ちゃん!」 その会話を聞いていたニールが勢いよく立ち上がる。「オレ、それやる!」「お前は――」 メイナードが止めるより早く。 ニールは森へ向かって走り出してしまった。「あっ!」「ニール!」 呼んでも止まらない。 耳をぴんと立て、尻尾を揺らしながら、あっという間に森の中へ消えていった。 それから一時間ほどして。「ただいまー!」 元気な声が庭に響く。 振り向くと、そこには花だらけになったニールが立っていた。「えっ」 私は思わず固まる。 両腕いっぱいの花。 背中にも花。 頭にも花。 腰には長い草まで巻き付いている。 しかも花だけじゃない。 赤い実。 青い実。 黄色い実。 見たこともない葉っぱまで抱えて帰ってきていた。「兄ちゃん!」 得意そうに胸を張る。「いっぱい持ってきた!」 耳はぴんと立ち、尻尾もぶんぶんと揺れている。「……ニール」 メイナードが額に手を当てた。「お前、それ全部摘んできたのか」「うん!」「全部?」「全部!」 庭師も執事長も呆然としている。 私は思わず吹き出した。「ふふっ」「どうだ!」 ニールはますます得意げになる
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はじめてのお給仕

 翌朝。「お嬢様、おはようございます」 部屋の扉を開けると、メイナードが一礼した。「おはよう」 包帯も外れ、すっかり元気になったメイナードは、もう屋敷の使用人と同じ制服を着ていた。 まだ子供用だけど、きちんと着こなしている姿はもう立派な執事見習いだ。「今日も頑張るの?」「はい」 そう答える瞳は真っすぐだった。 あの日、自分から私の屋敷へ来ると決めた日と同じ目。 狼族って、一度決めたことは本当に曲げないんだなあ。「兄ちゃん!」 そこへ元気いっぱいの声が飛び込んできた。 ニールだ。「今日も来たぞ!」「ニール」 メイナードは苦笑する。「毎日来なくてもいい」「来る!」 耳をぴんと立て、尻尾をゆっくり揺らしながら胸を張る。「兄ちゃんが心配だから!」「心配されるようなことはない」「ある!」 二人のやり取りを見ていると、自然と笑みがこぼれた。「ふふっ」「笑うなよ!」 ニールは頬を膨らませる。 でも耳は落ち着きなくぴくぴくと動き、尻尾もぱたぱたと揺れていた。 ……照れてる。 最近はだいぶ分かるようになってきた。「メイナード君」 執事長が廊下を歩いてきた。「今日はお嬢様への給仕を覚えていただきます」「はい」 メイナードは背筋を伸ばした。「シェリルお嬢様、午後のお茶の時間にご協力をお願いいたします」「もちろん!」 なんだか楽しみ。 メイナードが初めて淹れてくれる紅茶だ。◇◇◇ 午後。 テラスには白いクロスが掛けられ、お茶の用意が整えられていた。 執事長の横で、メイナードが真剣な顔をして立ってい
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はじめてのお茶会

「お嬢様、本日はお茶会の日でございます」 朝からメイドたちが慌ただしく部屋を出入りしていた。 淡いクリーム色のドレスを着せられ、髪を丁寧に結われていく。「うぅ……」 鏡に映るのは、どこから見ても可愛い五歳のお嬢様。 でも、中身は前世の記憶を持つ私だ。 同年代の子供たちと遊ぶなんて、ちょっと気恥ずかしい。「シェリル」 お父様が部屋へ入ってきた。「準備はできたかな?」「うん」「今日は同年代のお友達を作るためのお茶会だ。難しく考えなくていい」「お友達ねぇ……」 そう言われても。 私の頭の中にあるのは、お友達より攻略対象だ。 確か、このくらいの時期からみんな少しずつ登場し始めたはず。 今日、誰かに会えるのかな。「お嬢様」 部屋の外では、メイナードが静かに頭を下げた。「馬車の準備が整いました」「ありがとう」 執事見習いになってまだ日が浅いけれど、立ち居振る舞いはずいぶん様になってきた。 さすが、もともと真面目な子。 原作でもヤンデレになるまでは、礼儀正しくて優しい王子様だったものね。「兄ちゃん!」 そこへ、廊下の向こうからニールが走ってきた。「オレも行く!」「行かない」 メイナードが即答する。「なんで!」「お茶会だからだ」「お茶なら飲める!」「そういう話じゃない」 ニールは頬を膨らませる。 耳はしょんぼりと下がり、尻尾も力なく垂れてしまった。「帰ったらお土産話をしてあげる」 私がそう言うと、耳がぴくりと動く。「約束だからな!」「約束」 私は笑って頷いた。◇◇◇ 馬車に揺ら
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-07-08
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魔力の流れ

 その一言に、その場の空気がぴたりと止まった。「普通の人と違う……?」 思わず聞き返す。 サイラスは私の顔を見つめたまま、小さく頷いた。「うん」「サイラス」 リディア様が少し困ったように息子を見る。「急にそんなことを言ったら失礼でしょう?」「でも、本当」 サイラスは首を傾げた。「普通の人は、もっと静か」「静か?」「あなたは、ぐるぐるしてる」 ……ぐるぐる? なんだそれ。 私が困っていると、エドワード様が穏やかに口を開いた。「申し訳ありません。この子は昔から、人の魔力の流れを見る癖がありまして」「見る?」 お父様も興味深そうに尋ねる。「ええ。アークライト家の者は、代々魔力への感受性が高いのです」「それで、シェリルの魔力が変わって見えたと」「おそらく」 エドワード様は私を見つめる。「体調は悪くありませんか?」「え?」「魔力の流れが乱れる原因はいろいろありますから」「私は元気です!」 慌てて答える。 ……危なかった。 まさか転生したせいで魔力まで変わってるとか? そんな設定、原作にあったっけ!?「そう」 サイラスは少しだけ考え込む。「じゃあ、不思議」 それ以上は何も言わなかった。 助かった。 この子、五歳なのに鋭すぎるでしょう……。◇◇◇「さあ、みなさん」 主催の伯爵夫人が手を叩く。「お子様方はこちらへどうぞ」 庭へ案内されると、小さな丸いテーブルがいくつも並んでいた。 焼き菓子や果物、サンドイッ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-07-09
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魔物との遭遇

「いやぁぁぁぁぁっ!!」 庭の奥から、女の子の悲鳴が響いた。 子供たちが一斉に振り返る。 植え込みの向こうで、黒い影が動いた。「……魔物?」 サイラスが小さく呟く。 その一言に、私は息を呑んだ。 魔物? こんな昼間のお茶会に?「みんな、下がって!」 私は思わず叫んでいた。 何人かの子供たちが驚いて立ち止まる。 その隙に、植え込みから黒い獣が飛び出した。「きゃああっ!!」 犬くらいの大きさ。 でも目は真っ赤で、口からは黒い霧のようなものが漏れている。「魔物だ!」 サイラスが叫ぶ。「普通の動物じゃない!」 獣は近くにいた女の子へ飛びかかった。「危ない!」 私は咄嗟に女の子の腕をつかんで引き寄せる。 その勢いで二人とも芝生へ転がった。 目の前を黒い影が通り過ぎる。「みんな逃げて!」 子供たちは泣きながら屋敷へ走り出した。 でも、一人だけ。 サイラスはその場から動かなかった。「サイラス!」「大丈夫」 青い瞳は魔物だけを見つめている。「まだ小さい」「小さい?」「生まれたばかり」 そんなことまで分かるの!? 原作でも研究好きだったけど、もうこの頃からこんな感じなのね。 魔物が向きを変えた。 今度は私たちへ飛びかかってくる。「シェリル様!」 そのときだった。 銀色の影が私の前へ飛び込む。 メイナードだ。「下がってください!」 細い身体で私の前へ立ちはだかる。「メイナード!」 魔物が牙を剥く。 メイナードも姿勢を低くして唸り声
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-07-09
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研究のお誘い

「もう一度、調べたい」 サイラスの一言に、その場にいた大人たちが固まった。「サイラス」 リディア様が困ったように笑う。「急にそんなことを言ったら、シェリル様が困ってしまうでしょう?」「困る?」 サイラスは本当に不思議そうな顔をした。「うん」「どうして?」「女の子に向かって『調べたい』なんて言う人はいません」「そうなの?」「そうなんです」 サイラスは少しだけ考え込む。「……難しい」 私は思わず吹き出した。「ふふっ」 悪気がないのは分かる。 本当に純粋に、不思議に思っているだけなんだ。「ごめんなさいね」 リディア様が申し訳なさそうに頭を下げる。「この子、小さい頃から研究ばかりで……」「大丈夫です」 私は首を横に振った。「面白い子だなって思っただけなので」「面白い?」 サイラスが反応する。「うん」「変じゃなくて?」「変わってるとは思うけど」 正直に答えると、サイラスは少しだけ嬉しそうに目を細めた。「よかった」「え?」「変って、悪い意味じゃないんだ」 ……あれ? この子、意外と気にしてたんだ。 研究好きすぎて周りから浮いてるのかな。 原作ではそんな描写なかったけど、まだ五歳だもんね。「私は好きよ」「何が?」「好きなことに夢中になれる人」 サイラスは少しだけ目を丸くした。 それから、小さく頷く。「ありがとう」◇◇◇「では、私たちはこれで」 アークライト家の馬車が動き出す。
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-07-09
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魔法公爵家からのお誘い

 お茶会から三日後。「お嬢様、お手紙です」 朝食を終えた私のもとへ、執事が一通の封筒を運んできた。 白い封筒には、見覚えのある紋章が刻まれている。「あっ」 アークライト魔法公爵家だ。 黒猫の首輪にも刻まれていた、あの魔法陣の紋章。「お父様」 私は手紙を差し出した。「開けてもいい?」「もちろん」 封を切ると、中には綺麗な便箋が入っていた。『先日はお茶会へご参加いただき、ありがとうございました。 もしよろしければ、改めてアークライト家へ遊びにいらしてください。 息子のサイラスも、シェリル様ともう一度お話がしたいと申しております。』「ふふっ」 思わず笑ってしまう。「本当に『調べたい』って思ってるんだ」「調べたい?」 お父様が首を傾げた。「サイラス君らしいね」「有名なんですか?」「昔から研究熱心な子だそうだよ」 お父様は苦笑する。「珍しい植物や石を見つけると、一日中観察しているらしい」 やっぱり。 原作と全然変わってない。「行ってみたい?」「うん!」 私は即答した。 もちろん、攻略対象だからっていうのもある。 でも、それ以上に。 私は魔法使いの屋敷に興味があった。 原作でもアークライト家は、王国一の蔵書を持つことで有名だった。 魔導書。 魔法道具。 古代遺物。 そういうものがたくさんあるはず。 ちょっと見てみたい。「では、お返事を書こう」 お父様が頷く。「今週末にでも、お邪魔させていただこうか」◇◇◇ 一方、その頃。 アークライト魔法公爵家では――。「サイラス」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-07-09
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