私の婚約者の隣に、妹の名前があった。 白鳥家と有馬家の婚約披露宴。 その席次表の中央に印字されていたのは、有馬悠真様。そして、その隣には、私ではなく――白鳥莉々花様。 一瞬、息の仕方を忘れた。 昨日まで、父から渡された進行表にも、招待状にも、私と悠真の名前が並んでいた。 その進行表を最後に直したのは、私だ。来賓の肩書き、祝辞の順番、有馬家側の役員席、父が気にしていた取引先の席の距離。夜中まで何度も確認して、悠真から届いた「澪に任せておけば安心だね」という短いメッセージに、少しだけ救われた気になっていた。 安心だと言った人は、私が整えた舞台の真ん中で、別の女の隣に立とうとしている。しかも、その別の女は妹だった。血のつながりは半分もない。けれど、白鳥家ではいつも、莉々花の涙の方が私の努力より重かった。 白鳥澪と有馬悠真。 少なくとも、私に渡された紙の上では、私は今日、婚約者としてこの会場に立つはずだった。 なのに、今、私の名前は二つ隣に押しやられている。 誰かが慌てて空けた余白みたいな席に。 祝福されるはずだった女が、最初から邪魔者として置かれていた。 「お姉様、どうかなさいました? お顔が少し、怖いです」 後ろから、甘い声が落ちてきた。 振り返る前に、香水の匂いで莉々花だと分かった。砂糖を焦がしたような甘さ。昔から、彼女が泣く前にはこの匂いがした。 莉々花は白いドレスを着ていた。 招待客の娘が着るには白すぎる。胸元のレースも、腰のリボンも、まるで花嫁の予行練習みたいだった。 「……そのドレス、ずいぶん白いのね」 からからに乾いた口から出た声は、聞きたかったことからはだいぶ離れていた。どうして、とも、何をしているの、とも言えないまま、私は白いレースだけを見ていた。 莉々花は袖口をつまみ、少し首を傾げた。 「瀬里奈さんが選んでくださったんです。お姉様の青いドレスに、いちばん映えるようにって」 合う、という言葉が、妙に引っかかった。 私のドレスは淡い青だ。亡くなった母が好きだった色に近い。今日だけは、どうしてもその色にしたかった。 莉々花の白は、その青を隣に置いて薄めるための白に見えた。 「澪」 父の声がした。 白鳥清隆。私の父であり、今日の主催者でもある人が、会場の入口近くで
Last Updated : 2026-07-02 Read more