「私は、昨日まで婚約者の隣に座るはずでした。なのに今日の席次表では、そこから外されていました。今度は、私抜きで話を進めないでください」 「分かった。君のいない場では決めない」 「三つ。白鳥家の調査に、私も入れてください」 征臣の表情が、そこで初めて少し硬くなった。 「危険がないとは言えない」 「だからといって私を外すなら、契約はここまでです」 征臣の眉がかすかに動いた。怒ったのではない。たぶん、早く処理する癖を止められた顔だった。 「……正直、その方が早いと思っていた。悪い癖だな」 「急がれると、また置いていかれる気がします」 正直な人だ。 早さだけでいえば、私が何も知らず、鷹宮家の後ろに隠れていた方が早いのだろう。安全で、効率がよくて、そしてまた私は自分の話から外される。 包帯の下で、火傷がじんと痛んだ。 「白鳥家はずっと、私のためだと言って決めてきました」 征臣の目が止まる。 「『君を守るためだ』と言って私を外すなら、その契約には署名できません」 沈黙が落ちた。 征臣はすぐに答えなかった。視線を通知書へ落とし、焦げた帳簿へ移し、最後に私の包帯を見る。 謝罪ではなく対策を言いそうな顔をしていた。 でも、言わなかった。 「君の参加を前提に組み直す」 短い言葉だった。征臣は通知書を閉じず、私の前に置いたままにした。 「危ない時は止める。止めた理由は、君の前で話す」 「書面にしてください」 征臣が一瞬目を見開いた。 それから、目元だけ、力が抜けた。 「いいだろう。書面に残す」 その時、客室の扉がもう一度叩かれた。 執事が銀のトレーに別の封筒を載せている。白鳥家の家紋ではない。淡いピンクの封緘シール。 差出人の名前を見た瞬間、指先が冷えた。 白鳥莉々花。 封筒の中には、ホテルラウンジでの謝罪会への招待状が入っていた。 白鳥莉々花。 その名を見た瞬間、封筒の淡いピンクまで、少し湿って見えた。 可愛らしい色。 柔らかい筆跡。 封緘シールには、青い小さな花の模様。 けれど、指先に残った感触は冷たかった。 「開けるなら、待つ」 征臣は封筒に手を伸ばさなかった。 たぶん、白鳥家にいた頃なら、誰かが勝手に開けていた。父が先に読み、継母がため息をつき、莉々花
Last Updated : 2026-07-03 Read more