「鷹宮氏の力がなければ、ここに立てなかった場面はあります」 会場のペンが一度止まった。 否定を待っていたのだと思う。「助けてもらいました。そこは事実です」 会場のペンがまた動き始める。「証拠保全も、法的対応も。私一人では無理でした」 久我山と相沢、それから調査に関わった人たちの名前も挙げた。「でも、今このマイクで何を話すかまで、彼に決めてもらってはいません」 手元に母の指輪も青い手袋もない。 言い終えても、背後は見なかった。征臣がどんな顔をしているか確かめれば、また答えを合わせたくなる気がした。 演台の名札には、白鳥澪とだけある。鷹宮の肩書きも、白鳥家の続柄もない。私は自分の名前を一度見て、原稿へ視線を戻した。 前列で広報担当が頷いた。私は原稿へ目を戻し、急ぎそうになる息を一度整えた。「基金で、私の話ばかりするつもりはありません」 言い切ったあと、少しだけ早口だったと気づいた。「進学や仕事を諦める前に……相談先が一つでもあるようにしたい。それだけです」 沈黙のあと、質問は予算と監査体制へ移った。 分からない数字には、確認後に公開すると答える。 別の記者が、基金の年間運営費と私の報酬額を尋ねた。初年度は無報酬、二年目以降は理事会と外部監査の承認を受ける予定だと答える。「今は無報酬です。でも、ずっとそうするつもりはありません。続けるなら、誰かの持ち出しにはしたくないので」 長岡の記者は、鷹宮家からの寄付額を繰り返し聞いた。「寄付は受けますが、名称、選考、広報へ関与する権利は渡しません」「婚約者だから特別扱いを?」「婚約者だから、なおさら口約束にしません」 背後で征臣が小さく息を吐いた。何も言わずに聞いていることが、顔を見なくても分かった。 会見終了の札が出たあとも、最後列の若い記者が手を挙げていた。「応募者が怖くなって辞退したら、失敗ですか」 すぐには答えられなかった。「辞退したら終わり、にはしません。戻りたくなった時
Last Updated : 2026-10-11 Read more