*** 「やったー!智也くんボク出れた!」 「やったな!まぁ、オレからしたら、トラは生きてるとしか思えないくらいに、見えて触れるから想定内だけどな」 まだ肌寒い春の夜、ボクは新鮮な空気を、確かめるように胸いっぱい吸ってみた。 「ふははっ!トラ、『ショバの空気だ〜』みたいになってるぞ」 「もうっ!失礼なこと言わないで!」 ボクは智也くんの肩をグーで叩いた。 「…でも、いいな。こうしてトラといつもの道を歩けるなんてな」 「…うん、ボクも嬉しい」 誰の目も気にせずに、堂々と手を繋いで歩いてみる。 智也くんと同じ景色、同じ歩幅で歩く。ボクの世界が広がった気がした。 指を絡めて歩くカップルの姿が目に入った。 街の喧騒から1本入った住宅街、ふと雲間から三日月の月明かりが覗いた。 智也くん一人の影を映し出した。 その隣にいるはずのボクは、どこにもいなかった…。 「おい、こら!幽霊みたいな暗い顔してんな!」 智也くんは繋いだ手にぎゅっと力を込めた。 「暗い顔なんて…してない…」 「何を気にしてるのか分からんけど、よそはよそ、うちはうちでいいんじゃねぇの?良いこと教えてやる」 そう言うと、智也くんはボクの顎を掴んで思い
Terakhir Diperbarui : 2026-08-08 Baca selengkapnya