「何着て行こう……」 その一言が、午前中からずっと朱里の部屋にこだましている。 ベッドの上には、仕事帰りに買ったワンピース、春色のカーディガン、そしてお気に入りのスカート。 だけど、どれも「これだ!」という決め手にならない。 鏡の前で何度も立ったり座ったりして、ため息が出る。 ──映画に行くだけなのに。 頭ではわかっている。 でも、相手が平田嵩となると、途端に「ただの映画」じゃなくなってしまう。 スマホが光る。美鈴からのメッセージだ。 『で?進展は?映画デートってマジ?』 朱里は慌てて返信する。 『マジだけどデートじゃない!たぶん、きっと、違う!』 送った直後に、変な汗が出た。 “違う”って言いながら、そうであってほしいと心のどこかで願ってる自分がいる。 もう、本当にややこしい。 着信音が鳴った。 「朱里~?おはよ、いまヒマ?」 電話越しの美鈴の声は、朝からテンションが高い。 「ちょっと聞いてよ、美鈴。服が決まらなくて……」 「は?そんなん、嵩さんの好みで選べばいいじゃん」 「そ、それが分かったら苦労しないよ!」 美鈴は笑って、「ほら、あの人さ、前にプレゼンのとき朱里のジャケット褒めてたじゃん。きっちり系が好きなんじゃない?」と軽く言う。 「……そういえば、あのとき“似合ってますね”って……言ってたかも」 思い出した瞬間、朱里の頬が熱くなった。 電話の向こうで美鈴がにやりと笑っている気配がする。 「ほら出た。顔真っ赤なんでしょ」 「ち、違うし!」 「また“大嫌い”とか言うんでしょ、どうせ」 「
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-12 อ่านเพิ่มเติม