「母さんが心を病んでいても、御堂家は母さんの尊厳を守るべきです。おじいさま、俺と莉乃のことは、ただの過ちで――」怜央が言い終えるより先に、宗一郎の平手が頬へ飛んだ。「ふざけるな!御堂家を潰すつもりか!」先ほど挨拶に来ていた要人たちは、いずれもそれぞれの地域で大きな影響力を持つ人物ばかりだった。そんな人々の前で、孫が九条家の令嬢にこれほど恥をかかせたのだ。この先どんな影響が出るのか、宗一郎には考えるだけでも恐ろしかった。怜央が呆然としている間に、宗一郎はすぐに人を呼び、清美を連れ出させた。清美の胴と両脚には、暴れて自分や周囲を傷つけないよう、拘束具がつけられていた。抵抗することもできないまま運ばれていきながら、ただ息子の幼い頃の愛称だけを何度も呼び続けている。宗一郎は険しい顔で怜央を睨みつけた。「さっさと着替えてこい。莉乃がとっくに用意している」怜央は絶望したまま、言われるがまま控室へ向かった。宗一郎がここまで激怒する姿を、怜央はほとんど見たことがなかった。御堂家が、ここまで九条家の力を恐れていることにも驚いた。確かに、自分のやり方が度を越していたことは分かっている。だが、望んでいるのはただ一つ。この結婚式を中止することだけだった。莉乃が望むものなら、ほかのものはいくらでも与えられる。だが、結婚だけはできなかった。結婚するつもりはないと、すでにはっきり告げている。離婚してからというもの、怜央はずっと塞ぎ込んでいた。紗和と別れたことが、これほど自分を苦しめるとは思ってもいなかった。昨夜は、紗和がほかの男とキスを交わす姿まで目にした。苦しくて眠ることもできず、自宅のシアタールームで、紗和との結婚生活を映した昔の映像を一人で見返していた。今日ここへ来たのも、宗一郎に無理やり出席させられたからだ。執事が迎えに来たとき、何とか式を止められないかと考え、清美を一緒に連れてくることを思いついた。だが、何をしても、この馬鹿げた結婚を止めることはできないらしい。怜央は用意された衣装に着替えた。やがて、式の開始が正式に告げられた。美しい音楽が流れるなか、莉乃は勝ち誇ったような完璧な笑みを浮かべていた。怜央の腕へ自分の腕を絡め、花びらを敷き詰めた階段を上っていく。大勢
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