あの日、着信履歴に残った番号から琳奈に電話を掛けた偉央は、結葉の目の前、穏やかで優しい他所行きの顔と声音で、巧みに同窓会の誘いを断った。「結葉、自分では上手く断れなかったって言うものだから、すみません。出しゃばってしまいました」 そんな風に締め括って「これからも結葉と仲良くしてやってくださいね」とにこやかに微笑んで受話器を置くなり、結葉の目の前で琳奈の電話番号を〝迷惑電話リスト〟に加えてしまう。「結葉の気持ちを汲めないで一方的に何かを押し付けようとする相手なんて、友達とは言えないでしょう?」 偉央の横に呆然と立ち尽くす結葉の頬を優しく撫でながらそう言う偉央に、結葉は頭の中でぼんやりと(じゃあ、偉央さんはどうなの?)と言えない言葉を投げ掛けていた。 琳奈で何人目だろう。 結葉が昔から親しくしている友人たちを、連絡不可にされてしまったのは。 今ではきっと、幼い頃から何度も何度も掛けて記憶している山波家の実家の番号と、番号を教えてもらった時に嬉しくて穴が開くくらい眺めていた想の携帯番号くらいしか、家族以外で掛けられそうな相手はいなくなってしまった結葉だ。 とは言え、他の男性と結婚した身で、今更想に電話を掛けることは出来ないから、実質結葉がホッとした気持ちで会話ができる相手は己れの両親ぐらいしかいない。 それにしたって、両親には心配を掛けたくない結葉が、偉央との婚姻生活における諸々の不安事を話すことだけは出来なかったのだけれど――。*** 偉央の愛撫が、頬から顔のラインをゆっくり辿るようにして、結葉にとっては性感帯のひとつ――耳の後ろに移動してきたのをぼんやりと感じながら、結葉は(偉央さんの指先からの刺激に集中しなきゃ)と思う。 思
Last Updated : 2026-07-30 Read more