Partager

11.両親からの連絡⑨

Auteur: 鷹槻れん
last update Date de publication: 2026-07-31 07:10:36

 以前は結葉ゆいはが選んだ結葉ゆいは好みの雑誌も数冊立ててあった机上の隅っこのブックスタンドには、今は美鳥みどりと茂雄しげおの好みの本で埋め尽くされていて。

 自分はもうこの家には一緒に住んでいないんだなぁと、胸の奥がチクリと痛む。

「ここにゆいちゃんと二人で座ってゆっくりお茶を飲むの、久しぶりね」

 考えてみたら結葉ゆいはが嫁いでからは、なぜかリビングのテーブルで差し向かいに座ってお茶をすることばかりになっていた。

「そのほうがゆいちゃんの顔が見えるから……。毎日会えるわけじゃないしって思ったらお母さんついあっちにカップ置いちゃってたのよね〜」

 結葉ゆいはのすぐ横で寂しそうにフフッと笑う美鳥みどりの声が聞こえて、結葉ゆいははますます不安になった。

(じゃあ、今日は何でこっちを選んだの? 私の顔が見えない方がいい話をするつもりなのかな?)

 そう思ってしまった。

「えっと&
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Dernier chapitre

  • 結婚相手を間違えました〜従順妻はヤンデレ執着夫の重すぎる溺愛から逃げ出したい〜   32.偉央の泣き言と結葉の内緒ごと②

    「想ちゃん。私、今日はちょっとだけ街へお買い物に出てみようかなって思ってるの」 朝。 いつものように想にお弁当を手渡しながら結葉が言った。 想は思わず「……平気なのかっ?」と差し出された弁当の包みごと結葉の手を握ってしまっていた。 そのことにハッと気づいて慌てて想が手を離したら、結葉も驚いたように手を引いた。 ――ゴトッ! 鈍い音を立てて二人のちょうどド真ん中に、支えを失った弁当が垂直落下した。「お弁当っ」「俺のっ」 二人同じように言って、慌てて手を伸ばしてかがみ込んだら、額同士をゴチンッとぶつけてしまう。 結果、今度こそ二人同時に「痛っ!」「痛っ!」と声が出た想と結葉だ。 結局弁当は想が拾い上げて、結葉は髪の毛の下、ほんのり赤くなった額をさすりながら「想ちゃん、ごめんね」と眉根を寄せた。「バーカ、お互い様だろ」 前髪が短めだからだろうか。 想の額がほんのり赤くなっているのが見えて、結葉は自分も見えないだけで同じだろうなぁと思った。「うん、頭もなんだけど……お弁当も」 想の手にした包みを指差したら「ああ、中身の心配?」とククッと笑われた。「多分大丈夫だろ」 想がそう太鼓判を押すのには、ちゃんと根拠がある。 結葉が作る想のお弁当は、想にたくさん食べさせたいという思いが一緒に入れてあるみたいに、中身が結構みっちり詰まっているからだ。 恐らく垂直落下したぐらいでは寄り弁になんてなっていないだろう。 それでもやっぱり作り手としては、中の様子が気になるらしい。「でも……一応どうだったか教えてね」 言い募るように

  • 結婚相手を間違えました〜従順妻はヤンデレ執着夫の重すぎる溺愛から逃げ出したい〜   32.偉央の泣き言と結葉の内緒ごと①

     最初は離婚届と小切手だけを入れて山波想宛に送るつもりだった偉央だ。 だけど結局、未練がましく結葉宛の手紙まで添えてしまった。「結葉……」 結葉がマンションを出て行ってからずっと、偉央は家で眠れなくなってしまった。 あれから何度か自宅に着替えを取りに行ったりしたけれど、本当にそれだけ。 マンションの玄関扉を開けた時、「お帰りなさい、偉央さん」 そう言って、ぎこちなく微笑んでくれる結葉が家にいないことが、こんなにも堪えるとは思わなかった偉央だ。 足枷で無理矢理家に繋いでいた時でさえ、結葉は偉央が戻れば今にも消えてしまいそうなギリギリの淡い笑顔を一生懸命作って……それでも震える声で「お帰りなさい、偉央さん。お仕事お疲れ様でした」と労ってくれた。 玄関を開けた時に香る暖かな夕餉のにおいと、華奢な体躯を抱き寄せた時、結葉自身から仄かに薫る甘やかな芳香。 それは彼女が使っていたボディソープやシャンプー由来のものだったのかもしれないけれど、偉央は結葉から立ち昇る、女性らしいその香りが大好きだった。 本来ならば、偉央自身、家事をするのは嫌いではなかったはずだ。 なのにどうだろう。 ――家に結葉がいない。 ただそれだけのことで、こんなにも何もする気になれなくなるなんて、思いもしなかった。 結葉が望んだように、子供でももうけておけば、良かったのだろうか。 〝子は鎹〟とよく言うけれど、もしかしたら子供を作っていれば、足枷なんかより強力な枷になって、偉央の元へ結葉を繋ぎとめてくれたんじゃないかと、今更のように思ってしまう。 愛する女性との二人きりの生活を乱されるのが嫌で、結葉からの〝子供が欲しい〟という願いを、再三に渡って無下にし続けてきた偉央だった。 けれど、こんな風に結葉を失って一人きりにされてしまうくらいなら、子供に乱されながらも彼女がそばに居てくれる生活の

  • 結婚相手を間違えました〜従順妻はヤンデレ執着夫の重すぎる溺愛から逃げ出したい〜   31.大切な連絡⑦

     結葉が偉央と本当に離婚するつもりならば、想との同棲は、結葉にとって不利にしかならないだろう。 いくら幼馴染みで、小さい頃からお互いの家を行き来している仲とは言っても、若い男女が一つ屋根の下にいて、世間一般の人が何も思わないわけがないのだから。『……たっ、確かに想ちゃんのお世話にはなってるけど……住んでるのは想ちゃんのアパートじゃない……』 結葉の言葉はまるで要領を得なくて。 美鳥は娘をそばで見守れない焦燥感に「じゃあどういう……」 つい次々に畳み掛けるように自分の思いを話してしまいそうになる。 さっきから結葉が何かを言おうとするたびに、それを遮って質問を投げかけてしまっている自分に気が付いた美鳥は、グッと堪えて言葉を飲み込んだ。 ダメだ、マシンガンみたいに一方的に話してしまって、娘の言葉を聞いてあげられていない。 これが、日本にいる頃にも結葉の異変に気づけなかった理由かもしれない。 今更だけど、そんな風に思った美鳥だった。***「美鳥さんに、思ってることちゃんと話せたか?」 結葉をすぐそばで見ていて、彼女が通話口に向かって「でもっ」とか「違うの」とか、そんな言葉ばかりを言っているように思えた想だ。 結葉は決して無口な方ではないけれど、熟考して話すところがある。 相手から余りにも矢継ぎ早に畳み掛けられると、上手く話せないところがあるのを知っているから、ちょっと気になってしまった。「うん。最初はなかなか聞いてもらえなかったんだけど……途中から私のペースに合わせてくれて。――ちゃんと話せた……と…&helli

  • 結婚相手を間違えました〜従順妻はヤンデレ執着夫の重すぎる溺愛から逃げ出したい〜   31.大切な連絡⑥

    『ごめんなさい、お母さん。私、偉央さんと……離婚することになると、思う……の』 ゆっくりとこちらの様子を窺うように。 美鳥になるべく衝撃を与えないように。 結葉がひとつずつ単語を選ぶようにしながら投げかけてきた言葉に、美鳥はそれでも頭を鈍器で思いっきり殴られたような衝撃を覚えてしまう。 別れたりせずに、どうにかならないのだろうかと思って。  でも、と思い直した。 幼い頃から我慢強くて大抵のことは飲み込んで受け入れてしまうところのあった娘だ。 その子が、「別れるしかない」と判断を下したのだとしたら、それはもう本当に無理だったからに違いない。 いや、我慢強い結葉だからこそ。 もしかしたら離婚を切り出してきたのは偉央の方かもしれないと、思い直す。 だとしたら結葉にはどうしようもないではないか。「そっか。ゆいちゃん、辛かったね。お母さん、鈍感で何も気付いてあげられなくてごめんね」 別れを切り出したのはどっちから?と聞けなくて、思わずどっちとも取れる当たり障りのない言葉を返したら、『そっ、そんなこと、ないっ!』という声とともに、カサカサという音が聞こえてきた。 きっと結葉のことだ。 音声通話だから見えないのに。 結葉はきっと、必死になってフルフルと首を横に振ってくれているんだろう。『お母さんのお陰でっ、私、辛かった時、すごく救われてたっ。こっちにいるときは……沢山他愛もないお話に付き合ってくれてっ、本当にありがとう』 勢い込んだように言われて、美鳥は自分が日本にいた時にはすでに結葉の苦しみは始まっていた?と気付かされた。「ゆいちゃん、お別れを切り出したのって……」 結局、聞かずにはいられなかった美鳥だ。

  • 結婚相手を間違えました〜従順妻はヤンデレ執着夫の重すぎる溺愛から逃げ出したい〜   31.大切な連絡⑤

     アメリカに住む両親との連絡は、コミュニケーションアプリのラインを介して行うことにした結葉だ。 マンションにいた頃は、偉央が固定電話から両親へ電話してくれていたけれど、あの家を出た今、同じようにすることは不可能だったから。 美鳥の携帯番号も、茂雄のものも、予め知っていたから、想に手伝ってもらって電話番号によるアカウント検索をして、友達登録申請をした。 あちらの二人にとっては、結葉の新しい携帯番号は初見になるので、予め想にお願いして、結葉の新しい番号を連絡してもらっておいた結葉だ。 ニューヨークと日本の時差はおよそ十三時間。 こちらの方があちらより半日ちょっと進んでいる感じだ。 時刻はいま二二時過ぎ。あちらは朝の八時頃だろうか。 父・茂雄はきっと仕事中か、もしくは通勤途中か何かなんだろう。 家にいると思われる美鳥はすぐに既読になったけれど、想のメッセージ自体、茂雄の方は未読のままとのことで。(朝の忙しい時間だもん。仕方ないよね) そう思って茂雄のほうとはすぐに連絡を取ることを諦めた結葉だ。 とりあえず、想のメッセージをすぐに読んでくれて、結葉からの申請に対しても割とすんなり追加をしてくれた美鳥と先に話そうかな、と思って。 でも――。 今回結葉が両親と連絡を取るための手段を構築した理由は、偉央とのことを話さねばならないからに他ならない。 内容が内容なだけに、どう切り出したらいいのか分からなくて、なかなか音声通話のボタンがタップ出来ない結葉だ。 繋がったばかりの美鳥の連絡先をじっと見詰めたまま止まってしまっていた。 と、手にしたままだったスマートフォンが着信を知らせてきて。 見れば、結葉がなかな

  • 結婚相手を間違えました〜従順妻はヤンデレ執着夫の重すぎる溺愛から逃げ出したい〜   31.大切な連絡④

     想に至極真摯な眼差しで射抜かれた上、そんなことを言われてしまった結葉は、にわかに緊張してしまう。「あの……」 戸惑いを眼差しに乗せて、恐る恐る想を見上げたら「俺の部屋で話そっか」とくるりと踵を返された。 結葉は訳も分からないまま想に付き従うしかなくて。(想ちゃん、何だかすっごく怖い顔してた) それが、想らしくないから落ち着かなくて堪らない。 無言で想のあとについて階段を昇って。 結葉がいま使わせてもらっている部屋の並びとは階段を挟んで斜め向かい側に当たる想の部屋に入る。「お邪魔します……」 そうつぶやいて結葉が中に入るなり、想が入り口ドアに鍵を掛けてしまった。「あ、あのっ。想ちゃん?」 カチャリという無機質な音に不安になって、結葉が思わず想に呼びかけたら、「ごめんな、結葉。不安にさせちまって」 想が肩にかけたままだったリュックを、部屋の中央に置かれたローテーブルの上に下ろしながら眉根を寄せる。 その表情を見たら、少しだけ緊張の糸が緩んだ気がした結葉だ。「ううん、平気。……全部、何か理由があるんでしょ?」 そうでないと、想があんな思い詰めたような怖い顔をするはずがないことも、わざわざ結葉を不安にさせてまで部屋に施錠をすることがないことも、分かっている。「ああ、実はな、御庄さん――、えっと……お前の旦那から今日、うちの会社に書留が届いたんだ」 言いながら、想が机上に載せたリュックの中からA4サイズの封筒を取り出して。「偉央さん&helli

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status