――『お義母さん』 画面に表示された名前を見た瞬間、美月の指先が止まった。「どうしたんですか?」 蒼真が静かに尋ねる。「義母です……」 拓也の母とは、結婚してから何度か顔を合わせている。 厳しい人ではあるが、感情的に怒鳴るような人でもなかった。 だからこそ、このタイミングでの電話が気になった。「出ても大丈夫でしょうか……」 美月が不安そうに尋ねると、蒼真は静かにうなずく。「ご無理だと思われたら、途中で切っても構いません」「……はい」 美月は深呼吸をして、通話ボタンを押した。「もしもし」『ああ、美月さん?』 受話器の向こうから、義母の落ち着いた声が聞こえる。『急に電話してごめんなさいね』「いえ……何かあったんですか?」『昨日から拓也が、うちに来てるの』 美月は息をのんだ。『「美月が浮気した」「男を作って家を出ていった」って、すごく興奮していてね』 胸が締めつけられる。 やはり拓也は、自分に都合のいい話だけをしている。『何があったのかと思って、あなたにも聞いてみようと思ったの』 義母の声は責めるような口調ではなかった。 本当に事情を知りたいだけなのだろう。 美月はスマートフォンを握り直した。「……私、浮気なんてしていません」 震える声だった。 それでも、はっきりと言う。「昨日、病院で妊娠が分かって……そのことを伝えようと思って拓也さんに電話をしました」『妊娠……?』 義母が驚いたように声を上げる。「その時、女性と一緒にいるところだったんです」
Última actualización : 2026-07-15 Leer más