All Chapters of 料理の時間~Cooking Showdown Begins!~: Chapter 31 - Chapter 40

57 Chapters

第30話「Lucifer」

さあ、調理場で吠え続けるアトラスを睨み、サイラスも調理場へ飛び移る。甘味三魔人との対抗戦、ついに最終戦である。いや、厳密にいえばこれはチーム対抗戦ではない。闇食倶楽部対甘味三魔人のチーム戦は、影光と影羅の二連勝ですでに終了している。つまりこれはサイラス対アトラスの新たな闘いにして、両者の因縁の決着戦なのである。「フハ、フハハハハ!殺してやる!殺してやるぞルシファー!!」「…今の私はルシファーではない。その名はとうに捨てた。だが貴様はいつまでも私の幻影に追われているらしいな。何があったか知らんが、あまりにも惨めだ」さあ、新たな勝負として仕切り直した審査員が両者の希望を問う。勝った際、相手に望むことは何か、と。その問いにまずアトラスが嬉々として己の願いを叫び始めた。「知れたこと!ルシファー、貴様の死だ!! この俺が貴様を殺してやる!フハハハ!死ね!死ね!」「だ、駄目だ!生命への侵害はいかに料理対決といえども決して認められない!」審査員長であるAが強くアトラスに告げる。そう、料理対決においても生命への侵害…すなわち『負けたら死ね』は決して認められない。料理が絶対的な力を持つこの世界でも、これだけは人権が優先されるのである。いや『だけ』ってことはないが。――余談ではあるが、実力行使、つまり暴力に手を出す者もごく稀にいる。しかし料理勝負中の意図的な暴力は絶対的な禁忌の一つであり、即逮捕は確実、その場で射殺されても文句は言えない悪行である。ちなみに以前のオーディンの行為も許されたものではないが『オーディンの絶対的権力』『勝負終結後の実力行使』『魔餉気という、そもそも暴力に該当するか不明な行為』ということから有耶無耶にされていたのである――ともかく生命侵害は決して認められないものの、サイラスは勝負を受けるように頷く。そして審査員長Aに対し大声で告げた。「審査員長、こいつは勝負しなければ暴れるつもりだ。そうすれば周囲に被害が出かねない。私が止める。いや、かつての友として私が止め
last updateLast Updated : 2026-07-31
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第31話「DID」

――チョンチーの語る二人の過去を聞きながら、影光は勝負中の二人を見る。コーヒー豆を挽き終わった後、二人はスイーツの調理に移っていた。サイラスはいつの間にか溶かしていたチョコやバターに卵と砂糖を混ぜ、いくつかの小さな型に流し込む。そしてそれをそのままオーブンへ。おそらくはミニケーキのような料理だろうか。アトラスはこれまたいつの間にか切っていたバナナを大絶叫しながらフライパンで焼き、バターと砂糖、ラム酒で焼いていく。これはバナナのキャラメリゼだろう。二人とも、準備を始めてから1分、いや30秒も経たずにスイーツの調整を終わらせている。早い。早すぎる。コーヒー豆は挽いてからすぐ淹れるのが定石とはいえ、それに合わせたスイーツの調整を一瞬で終わらせた二人。影光もサイラスの凄さは十分知っていたが、本気を出した彼はここまで超人なのか、と驚いてしまう。そしてそれに負けていないアトラス…正気を失っているとはいえ、かつてはG.O.D.の料理人統括長であったという看板に偽りはないようだ。サイラスはそのままコーヒーの抽出に移り、ネルドリップ式で審査員分のコーヒーを淹れている。アトラスは片手でバナナを焼きながら、もう片手でフレンチプレスに湯を注ぎ、数分後に押し下げるべく、勢いよくプランジャーを構える。…勝負が開始してからまだ10分も経っていない。だが、両者もうほとんど調理が終わっている。信じられない光景に唖然とする観客たち。「ヒョヒョヒョ。あれがG.O.D.の技術の真髄ということだネ」それを見たチョンチーは笑い…また彼らの過去を話し始めた。――――――――――ルシファーが自ら望んで降格したあと、アトラスの地位は盤石となった。しかし、それは彼の望んだ道ではなかった。しかも周囲では、彼に対して良からぬ噂を吹聴する輩も現れてきた。『アトラスは、自らの地位を脅かすルシファーを蹴落としたのではないか?』『実力で負けそうだから黒い手段で閑職に追いやったのだろう』『才能ある者は
last updateLast Updated : 2026-08-01
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第32話「悪の華」

さあ、サイラスとアトラス、両者の料理が出揃う。二人の長きにわたる因縁、ついに決着の時だ。まずはアトラスの『残酷感染症』から…。審査員、実食!審査員A曰く:「ふむっ…!このコーヒー、粗挽きの豆の重厚なる風味…!豆はインドネシアの深煎りか?ここまで深い味を引き出すとは…!そしてこのバナナのキャラメリゼ!何と濃厚な味だ…理性を失った怪物がここまで美しい組み合わせを作るとは!」審査員B曰く:「ぬおおっ!濃厚かつ甘い香りのバナナの美味を、重厚かつビターなコーヒーの苦味がしっかりと〆る!甘いスイーツと苦いコーヒー、濃厚×重厚、甘味×苦味、これは理想の組み合わせだ!甘味三魔人、恐るべし!」審査員C曰く:「かつて高級料亭に勤めていた私だが、辛さのあまり理性を失う者は何人も見てきた。しかし!これほどの味の組み合わせ、これはそんな半端者に作れる料理ではない!体が覚えているというのか!?この味を!この組み合わせを!!」審査員D曰く:「ラーメンじゃないので0点」審査員は三人とも絶賛だ。理性を失った怪物のような男がこれほどの料理を作るとは、会場にいる誰もが思っていなかったのではないだろうか。「なんて料理人だ、たったの20分程度でこんなものを作り出すなんて…。もしかすると、甘味三魔人で一番恐れるべきなのはあの男、アトラスだったのかもしれない…!」影光はそう危惧するが…フレイヤはそんな影光の肩をポンポンと叩く。そして、軽く笑いながらサイラスを指差した。「ねえ影光。見てよ、あのサイラスさんの顔。どっかで見たことあると思わない?」言われた影光がサイラスの表情を見ると…なんと、サイラスは静かに笑っていた。「あれは、僕たちと戦った時の顔…」――そう、影光もあの顔は覚えがある。まるですべて予想済み、掌の上だとでも言いたげな余裕…。「
last updateLast Updated : 2026-08-02
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第33話「brother & sister」

新たに現れた金髪の若い男性…『ロキ』。彼は突き出した拳を収め、周囲を退屈そうに見回す。そして、自らに跪いているラミアを見て言い放った。「おい、とりあえず簡潔に経過を報告しろ。言い訳はいらねえぞ」「はっ…。我々甘味三魔人で挑みましたが…ぜ、全敗です。も、申し訳ございません…」ラミアが怯えながらも正直に報告するが…。ロキは怒るどころか、笑いながら彼らを罵倒する。「ハハハ。予想以上にひでえ結果じゃねえか。そんなんでよく魔人とか名乗れたな?味音痴三銃士とかに名前変えとけ、このマヌケどもが」頭を下げ続けるラミアを無視し、ロキは少し前に歩を進める。そしてサイラスに向かい手招きをした。「おい、ルシファー…いや今はサイラスだったか。まあどっちでもいいや、ちょっとこっち来い。話がある。 あー、あと暗黒食王とかいうバカみてえな名前の奴の子。うーん…息子の方がいいな。おい息子、名前は忘れたがお前も来い」『用事があるならお前が来い』と言いたいところだが、ロキからはどうもそう言わせないような妙な威圧感を感じる。これも『龍王』と呼ばれる者たる所以だろうか。影光は一歩前に踏み出すが…それを影羅が制した。「やめときなさい。あいつは危険よ。ここは大人の私に任せなさい」しかし…影光としても、退くわけにはいかない。オーディンの息子なら、いずれ…あるいは今、戦うことになるかもしれない。その時のためにどういう人物かは掴んでおきたい。影羅としては心配なので止めたいのだが…そんな姉弟を見て、サイラスが二人に声をかける。「…では三人で行きましょう。ただ、決してこの場では彼に料理勝負を持ち掛けないように。彼に勝つのは難しい…おそらく、この私でさえも」サイラスが真剣そのものの表情でそう告げる。そして…一人残さ
last updateLast Updated : 2026-08-03
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第34話「Symbol of The Dragon」

『料理戦争』…。ずいぶんと大仰な名前だが、要するに日本料理界の今後の覇権を賭けた料理大会らしい。日本の二大料理組織である闇食倶楽部とG.O.D.がぶつかり合い、負けた方は勝った方の軍門に屈する。ここにフリーの料理人たちも巻き込み、日本最強の料理人を決めるトーナメントを開催する…というわけだ。「そんな条件、闇食倶楽部が呑む必要あるのかしら。決めたいならG.O.D.だけで勝手に決めれば?」影羅は腕を組みながら退屈そうにそう言い放つが…まあ、それも当然のことである。かつて闇食倶楽部とG.O.D.はかかわりがあった時期もあったようだが、今では不倶戴天の敵である。潰し合いなら望むところだが、わざわざ相手の土俵に乗って勝負をする必要はない。…しかしロキは、そんな答えは先刻承知済みと言うように頭を掻いた。「…まったく、だから息子の方だけに言いたかったんだよ。女ってのは困るな、無駄に…いや、無駄な猜疑心が強えんだから」女性関係でなにか過去に嫌な事でもあったのか、非難を受けそうなことを言いながらロキが笑う。そして、その詳細について語り始めた。「気にしなくても、対決は普段の料理勝負と同じだ。全部で百人が集い、最後の一人になるまで戦いを繰り返すトーナメント。そして最後に残った奴が俺の親父…つまり主催者に挑むことになる。 ちなみに、公表はまだ少し先だがすでに国や料理省は了承している。ここまでのお膳立て、むしろ断ったらお前らが逃げたって思われるぜ?」おそらくロキの言うことに間違いはないのだろう。しかし、影光も影羅も軽々に返事するわけにはいかない。なにしろ、千年続いた実家の存亡を賭けた一大決戦である。頭領の子がうかつに返事してしまったらどうなるものか…という考えが頭をよぎっていた。「…まあ、お前らの返事なんぞどうでもいいか。どのみちお前らの親父が断るわけね
last updateLast Updated : 2026-08-04
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第35話「奈落迦-Naraka-」

さて、『町食堂 かがやき』前で急遽始まった影光対ロキの料理勝負。今回のテーマは『1分でできる料理』である。1分の超スピード勝負…迷っている暇はない。影光は既製品を組み合わせて鮭茶漬けを作るべく動こうとするが、少しだけロキをちらりと見た。すると…なんとロキは、水を張った鍋に生米を入れている。「えっ!?」「…な、なにあれ?」驚く影光とフレイヤ、さらに観客。その場にいる全員が驚いている。1分でお粥?リゾット?いやそんなことは不可能だ。しかしロキはニヤリと笑い…右手の人差し指を軽く天へ突き立てた。「教えてやるよ、小僧。この俺がなぜ『龍王』と呼ばれているのかを…な」そう笑うとロキはそのまま人差し指で鍋を軽く突く。――すると、その軽い動作からはとても似つかわしくない重低音が鍋から響き…一瞬で水が沸騰し熱湯となった。「は!?」「はあ!?」「はああ!?」「はああああ!!??」ロキの鍋を見て騒ぐ観客、そして愕然とする影光とフレイヤ。それらを一瞥してロキがニヤリと笑う。「これで終わりじゃねえぞ。こんなもの序の口だ」そう言うとロキはまた鍋を指で軽く突く。するとまた鍋から甲高い音が響き、凄まじい勢いで蒸気が噴き出し…やがて収まった。「えっ!?」「なにっ!?」「な…なんだあっ!?」「うわああああああ!!」また騒ぐ観客。その後、ロキは鍋の中のものを丼に盛る。…それは、輝くような白飯だった。「そ…そんな…!あれは、僕の…!!」そう…今ロキが調理ったのは、影光の『鍋パンチ』そのものだった。いや、影光とて湯を沸かしたり、米を茹でてお粥にしたり、それなりに事前準備は必要となる。ロキの技は、言わば上位互換ともいっていい。驚愕している影
last updateLast Updated : 2026-08-05
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第36話「3 Years Later, I」

影光とロキの勝負から一時間後…。サイラスは、フレイヤとともに己の愛車で病院に向かっていた。魔餉気による昏睡や味覚障害に効く回復薬を手に入れた以上、一刻も早くリリスやマキシマ、杉森を救わなければならない。今日は店を臨時休業にして、サイラスの車で急いで病院に向かっているというわけだ。しかし…その車中で、フレイヤが心配そうに呟く。「影光、大丈夫かなあ。気にしすぎなきゃいいんだけど…」そう、先の影光とロキの料理勝負。テーマ『1分でできる料理』において、惨敗した影光は完全に憔悴しきっており、拠点のビジネスホテルまで影羅とともに帰っていった。影光にとっては初めての完敗である。才能も技術もあり腕に自信を持っていた彼だが、ここまで打ちのめされた以上は、しばらく敗北を引きずることだろう。「相手が悪すぎた。やはり無理にでも止めるべきだったか…」赤信号で車を止めた後、サイラスが思い返したように呟く。彼も、影光がロキに勝てると思っていたわけではない。だが敗北時の取り決めの軽さや、影光ならあるいはロキに一泡吹かせることができるのではないか、そう考えてしまったため本気では止めなかったのだ。しかしそれでも、ロキの強さを低く見積もっていたことに変わりはない。サイラスは、やはり自分の考えが甘かったのだと反省する。(いずれ、私自身が奴と戦った時のことも想定しなければいかん。しかし…どう戦う?見ただけで技を模倣する人間…。しかもオリジナル以上の精度を誇るほどの技術。そして、それ以上に奴は天才的な味覚や調理技法を持っている。そんな超人相手に勝ち目はあるのか…?)『料理戦争』で対戦した場合のことも考えて、サイラスが心中で勝ち筋を検討するが…やはり、何も思い浮かばない。ロキを測るために影光が挑んだ戦いだったが、逆にロキの圧倒的な強さを世間にアピールする結果となってしまった。(与えられたテーマの中で全身全霊をもって戦う。…月並みだが、
last updateLast Updated : 2026-08-06
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第37話「UP TO YOU」

――さて、リリスのお見舞いを終え『町食堂 かがやき』に帰ってきたサイラスとフレイヤ。そこには影羅や、やっと起きて出勤した影時もいる。どうやらサイラスたちを待っていたようだ。四人が集合した時…一番最初に口を開いたのは暗い顔をした影時だった。「すいません…本当にすいません!俺、こんなことになってるなんて知らなくて、眠ってて…。本当にすいませんでした!」他の三人に対して土下座する影時。彼なりに責任感を感じているのだろうが、いつも適当でへらへらしている影時がこんなに真剣な顔をしているのは、少なくともここに来てからは初めてだった。主筋である影羅、影光を守るのが彼の役目の一つではあるのだが、深酒による寝坊というあまりにも情けない理由でそれが果たせなかったのは、さすがに彼も深く悔いているらしい。「何度も言ってるでしょ。あんたがいても何にもならなかったわよ」そんな影時に対して、影羅が冷ややかに言い放つ。確かに、ロキの強さは圧倒的だった。影光があっさり敗れた以上、同程度の腕の影時ではどうしようもなかったかもしれない。しかし、それでも身代わりにはなれたのでは…と影時は頭を下げ続ける。「…ともかく、その話はここまでだ。今は、これからの話をしなければならない。影光がいない場だが…決められるところは決めておこう」サイラスは皆にそう伝えて、今後の方向を協議するよう促した。G.O.D.を倒すために何をするべきか、皆で協力していくために。――――――――――まず、影羅が自分たちの今後について告げる。影羅と影時は一度闇食倶楽部に戻り、料理戦争に向けて調整するらしい。「フレイヤちゃんにはごめんなさいだけど、実家の存亡が懸かった戦いだから私たちも手を抜くわけにはいかないの。影光も、きっとそうなると思う。本人の返事次第だけど」それを聞いたフレイヤは残念そうにため息をつくが…仕方ない。それは彼女も覚悟し
last updateLast Updated : 2026-08-07
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第38話「死せる英雄の国」

さてさて、『町食堂 かがやき』一時休業から一か月後…。都内O市の山中深く、霊験あらたかな山々の中。ひっそりと…いやむしろ堂々とそびえ立つ巨大な城郭。いったい建設費は何十億円、いや何百億円かかったんだと思われるほどの厳かな和風の城…その名も『闇食倶楽部城』。地域住民からは観光地とも言われ、親しまれている城である。固定資産税が億単位でかかっていると噂されているその変な名前の城で、闇食倶楽部の幹部面々が一堂に集結していた。――――――――――老若男女問わず揃った八人の料理戦士が、評定の間に座す暗黒食王の前に控え、頭を下げる。八人の中には影光の姉の影羅や、忠義篤き男影真、そして丸坊主にされながらも真剣な表情をした影時もいる。そして、八人のうち先頭に座った六十過ぎの老人男性…『影天』が告げた。「暗黒食王様…我ら八傑衆、全員揃いました」その言葉を受け、上座に座っていた暗黒食王が眼光鋭く一同を見回し…一礼をした。「うむ…皆の者、忙しい中よく集ってくれた。此度集まってもらったのは他でもない、G.O.D.が開催するという料理戦争なる馬鹿げた催しのことよ。そこに宿る野望を雲散霧消させ、奴らの存在を完全に滅消させる。皆、力を貸してほしい」その言葉に『ははっ!』と頭を下げる影真たち。影羅は下げない。娘だから。…そして彼ら八人のリーダーであろう影天が『料理戦争』の詳細を説明し始めた。料理戦争の参加者は総勢百人。そして、そのうち暗黒食王を含む四人はいわゆるシード選手。彼以外の三人は後に発表するらしい。主催者側のG.O
last updateLast Updated : 2026-08-08
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第39話「GOD ONLY KNOWS」

時は九月半ばとなった。まだ暑さは残しつつも少しずつ日は短くなっていく季節である。そして影光が初めて花宮町に来たあの日から、二か月が経っていた。さて物語の舞台である『町食堂 かがやき』だが、フレイヤとリリスは色々検討したものの、やはり一時休業という形になった。しかし、それは最初の想定とは大幅に変わっていたのである。――――――――――大規模な改築工事の真っ最中である『町食堂 かがやき』。その前で、職人たちの作業を眺めているリリスとサイラスだが…二人はそれぞれ感慨深く口を開いた。「…まさか、こんなことになるとはなあ…」「闇食倶楽部ってどんだけお金持ってるのかしら」――ことの発端は、『町食堂 かがやき』の一時休業を決めたあの日。フレイヤの招待状を使い、影光が料理戦争に参戦すると決めた日である。影光は闇食倶楽部に戻らず、この都内S区『花宮町』に滞在し続けることを決めた。そう答えることにうすうす気づいていた影羅もそれを了承。しかも今回は長期滞在になりそうなことから、影光が居住するマンションの手配までしてくれたのである。まさに超お坊ちゃまである。まあ料理の腕がものをいうこの世界で日本二大料理組織の御曹司だし、当然と言えば当然であるが。とはいえ、ただ影光を遊ばせておくわけにはいかない。そのため『町食堂 かがやき』は絶好の修業の場だったが、そこに影真が異議を出した。『いくらなんでも影光様が長期で修行するには、失礼ながらあの建物は老朽化が進んでいるのではないか』『万が一にでも倒壊しないよう闇食倶楽部で手を尽くすべき』と、改築案や施工業者を手配して、リリスやサイラスに提案したのである。膨大な資金と人材を投入した超突貫工事で完成は来年一月初旬、しかも金銭面では闇食倶楽部の無利子貸付、返済期限は百年後…つまり実質的に|闇食倶楽部《ダークネス・クラ
last updateLast Updated : 2026-08-09
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