鎖鎌――奇しくもニコちゃんがさっき使ったばかりだが、鎖というのはなかなか厄介な得物だ。まず、受けが通じない。先端の分銅をピンポイントで叩き落とせれば話は別だが、鎖を受けると曲がる。曲がった鎖は防御を迂回した打撃にもなるし、絡みつけば行動の阻害にもなる。 威力も高い。遠心力だと誤解されがちだが、その源は単純に速度だ。手元の小さな動きが、先端では梃子の原理で何倍にも増幅される。熟練者が使う鞭は何も打っていないのに空中でぱちんと鳴る。これは音速を超えた先端が衝撃波を生み出すためなのだが、それと同じ加速の仕組が鎖分銅にも備わっているのだ。 一方、扱いの難しい武器でもある。近接ではほとんど威力を発揮しないし、円弧か直線の動きしか出来ないため慣れれば軌道が読みやすく、連打も出来ない。つまり、一撃被弾を覚悟さえすれば間合いを詰めて無力化できる。その弱点をカバーするための近接戦用の鎌なわけだが、それすらも恐れていては何も出来ない。 仕掛けるなら、どこからか。 重装の人間がいれば突破役を任せられるが、あいにく桜吹雪高校のメンツは全員が軽装だ。ニコちゃんにバイクで突っ込んでもらう? いや、バイクでは初速が鈍い。ここはやっぱりアカリちゃんに――(ダメだ。「やっぱり」ってなんだよ。またアカリちゃん頼みじゃないか) 頭を振って、浮かんだ考えを追い出す。「ボクが突っ込む。二人はついてきて」「えっ?」 ニコちゃんとアカリちゃんから同時に意外そうな声が洩れる。 しかし決断は揺るがさない。純粋な戦闘力はアカリちゃんやニコちゃんの方が上だ。万一、初撃で私が落ちても、二人なら二対三でも渡り合えるはずだ。「おおおおおおおおッ!」 気合とともに地面を蹴る。 両手にナイフを逆手に持って、側頭部をカバー。 頭部への打撃と首への絡みつきを防ぐためだ。「フォフォフォ、切光さんから来るとは意外ですなあ」 久能井さんAが鎖分銅をこちらに向ける。 真横。腰の高さの軌道。致命傷を狙わず、跳躍か、伏せるか。回避をするなら大きな動きを強制する軌道。 それなら――「ぐっ……!」 あえて無視し、胴体で受ける。 踏み込んだので先端ではない。 鎖が身体に巻き付く。 ダメージはあるが、これなら私が弾除けになってニコちゃんとアカリちゃんには影響
Terakhir Diperbarui : 2026-07-13 Baca selengkapnya