そのことに思い至った昭は、ぞっとした。あれほど芯の強かった遥が、こんな痛ましい状態にまで追い込まれてしまうとは。昭は嫌な予感を覚えた。だが、その答えは、これから行われる手術で明らかになるはずだった。本当は、他人の心の中を覗き見るなど決して望んではいなかったが。どうやっても調べがつかないこの一件は、記憶消去手術の際、脳波を通じて遥の記憶を映像として再現できるという。その過程は本人にとって非常に苦しいものだが、それもまた記憶を消すために避けられない工程だった。その頃、遥は静まり返った屋敷の中で、虚ろな表情のまま座り、絶えずお腹を押さえていた。それは遥にとって、生き続けるための希望だった。泣き叫びたいのに、涙はもう一滴も出てこなかった。昭は、かつて多くの人から注目されていた遥がこんな痛ましい姿になってしまったことに、思わず重いため息をついた。彼は温かいミルクを入れたカップを手に、遥のそばに歩み寄った。「医師とはもう話をつけたよ。明日の夜には手術ができるそうだ」遥は顔を上げ、その言葉を聞いた瞬間、目頭が熱くなり、鼻の奥がツンとして、ついに堪えきれず声を上げて泣き出した。「ありがとう……!」もう長いこと、思い切り泣くことさえできなかった。今、ようやく真っ暗な世界に一筋の光が差したような気がして、涙が止まらなかった。「大丈夫だよ、遥さん。あの苦しい記憶が、もう君を苦しめることはなくなるよ。回復したら、また仕事を始めればいい。手のリハビリも、専門の人を探して手伝ってもらうから」人が深い絶望の底に落ちている時、最も必要なのは一筋の光だ。昭のその力強い言葉は、まさに遥にとっての一筋の光だった。そして、その言葉は確かに効果があったようで、遥は少し気力を取り戻したように見えた。「うん。昭がよければ、これからも曲を作って力になりたいわ」それを聞いた瞬間、昭の表情がぱっと明るくなった。彼は遥の才能を誰よりも心から認めていたから、その一言は昭にとって何よりのご褒美だった。「もちろん構わないさ。新作を楽しみにしているよ、作曲家さん」ふたりはその話題をきっかけに、たわいのない穏やかな会話を続けた。昭はその様子をそっと観察していたが、確かに最初の頃よりは落ち着いているように見えた。だが昭が知らなかったことがある。それ
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