自分の推しを悪く言われて、薫は明らかに不満そうに言った。「安心してください。遥さんみたいに口が悪い人、藤井社長は好きになりませんから。まあ、美人ですけどね」薫の言う通り、怜司は自分を好きじゃない。駿の頼みに応じ、遥は星影荘へと向かった。遠くから、花梨が邸宅を飾り付けているのが見える。華やいだ雰囲気で、何かのパーティーをしているようだ。これは莉奈の退院祝いのパーティーだと、遥は知っていた。そして、怜司はちょうど邸宅のエントランスに立って、招待客たちと挨拶を交わしていた。彼は遥を見かけても、その存在を無視して、そばの人との会話を続けた。遥も怜司に構う気はなくて、まっすぐ駿の家へと向かった。駿の家に着くと、彼は遥を家の中へ迎え入れた。「遥さん、本当に来てくれてありがとうございます。祖母はずっと、自分だけのために作られた曲を聴きたいと願っています。遥さんの才能なら、きっと満足させられると思うんです」遥は軽くうなずいて、礼儀正しく答えた。「鈴木先生、そう言っていただけると嬉しいです。引き受けた以上、精一杯いい曲を書きますから。鈴木先生のおばあさんの好みや、特別な思い出を、詳しく教えてもらえますか?そのほうが、曲の雰囲気やそこに込めるべき思いをうまく掴めるので」「はい」遥が駿の家に入ったと知って、花梨は計画を前倒しできると分かった。こっそりスマホを取り出し、靖也にメッセージを送った。【遥が来たから、計画を早めよう。莉奈のお祝いパーティーで、直接仕掛けましょう】メッセージを送り終え、彼女は画面を見つめたまま、無意識のうちに拳を強く握りしめた。しばらくして、靖也から返信が来た。【そんなに早く?でも、これはだんだん面白くなってきたな。怜司さんの娘のお祝いに顔を出せば、おばあさんも喜ぶかもしれない。兄弟仲がいいって褒めてくれるかもな。いいよ、協力する】靖也が同意して、花梨はほっとして、満足げに微笑んだ。まるで、もう成功したかのように。「莉奈、もうすぐ遥さんが来るのよ。かくれんぼをしたいって言ってたから、先に裏庭に隠れてなさい」かくれんぼと聞いて、莉奈はうれしそうに跳ねながら行った。そして花梨は駿の家へ向かい、手をあげて軽くドアをノックした。ドアはすぐに開いた。駿は花梨を見て、淡く笑った。
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