事態がここまで大きくなることは、靖也も望んでいなかった。彼はただ、遥に怜司への未練を捨てさせたかっただけだ。それがうまくいけば、彼女の心を奪えるかもしれない。さらに……遥は花梨よりも怜司を深く知っている。それが、のちの権力争いでも有利に働くはずだと思ったのだ。彼は咳払いをすると、「怜司さん、見てくれ。遥さんがこんなに傷ついていて、莉奈ちゃんを傷つけられるわけがないだろ?とにかく莉奈ちゃんが目を覚ませばすべてはっきりすると思うよ」と言った。怜司は、その言葉を聞いて、しばしの沈黙のあと、確かに莉奈が目覚めれば、すべての真相が明らかになるだろうと思った。しかし、靖也の家にいる遥の姿を目にした途端、得体の知れない怒りがこみ上げてきた。「遥は俺が連れて帰る。でなければおばあさんに説明がつかない。遥の失踪を知られたら疑われるに決まってる」だが、靖也はどうでもよさそうに肩をすくめた。「そんなに焦る必要あるか?出張中とでも言っておけばいいだろ。おばあさんも四六時中遥さんに会いたいわけじゃない」しかし、怜司は納得できなかった。彼は遥と靖也が二人きりでいることが、我慢ならなかったからだ。だから、彼はベッドまで歩み寄り、問答無用で遥を抱き上げた。「離して!怜司、あなた最低!」遥は懸命に暴れ、両手で怜司の胸を叩いた。だが体力が落ちている彼女の抵抗は、何の役にも立たなかった。怜司は険しい表情のまま無言で、彼女を抱えて歩き出した。遥は振りほどけないと悟ると、うつむいて彼の腕に思い切り噛みついた。痛みはあったが、怜司は手を離さなかった。眉間に深いしわを寄せたまま、彼は足を止めることさえしなかった。「あなた、狂ってるわよ!離して!」遥は噛みつきながら、こもった声で泣き叫び、涙が次々と頬を伝った。それでも怜司は痛みをこらえ、遥を車の後部座席に放り込んだ。そして冷ややかに言い放った。「大人しくしてろ。余計な真似をするな」髪を乱したまま後部座席にうずくまり、遥は目に涙を溜めて彼を見つめた。「怜司、そんなの拉致よ!」だが、怜司は彼女を相手にせず、ドアを閉めて運転席に乗り込むと、そのまま車を走らせた。道中、後部座席で縮こまる遥は、もうそれ以上彼に目を向けることはなかった。一方、バックミラー越しに、冷や汗を流して顔
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