木曜。企画課の朝礼にて。 課長とスタッフが挨拶を済ませると、課長が重い表情で告げる。「五月の残業を、隔日の週三日にしようと思う」 ざわつくスタッフたち。「ありがたいお話ですが、どうしてでしょうか? それほど、好ペースで進んでいるようには見えませんが」 スタッフの一人が問う。「このままだと、春木が潰れる」 皆の視線が、あくあに集まる。「あの、アタシやれます! 大丈夫ですから!」「ダメだ。お前、最近鏡見てるか? 死にそうな顔してるぞ」 しゅんとなる、あくあ。たしかに、連続残業を始めてから、疲労が深く溜まっているのを感じる。「まだ、入社一ヶ月ちょいのひよっこなんだ。甘えられるうちに、うんと甘えておけ」 課長、つっけんどんな印象があるが、部下想いな人物である。「でも、絶滅展が……」 入社三日目で手にした、ビッグプロジェクト。絶対に成功させたい。「同じ事を繰り返させるな。ダメだ。命あっての物種だぞ。様子を見て、週三でもだめそうなら、週二とか週一にもしていくつもりだ。以上、解散。作業開始」 机に散る一同。あくあも、重い足取りで机に向かうのであった。 ◆ ◆ ◆「アタシ、そんなダメそうですか?」 昼休み。社員食堂で、里愛と食事しながら、ため息をつく。「うん。ほんとに、疲労困憊って顔してる。私からも、課長に進言しようと思ってたんだけど、課長が自ら気づいてくれて良かったよ」 カレイの煮付け定食を食みながら、告げる里愛。「間に合わなかったら、どうしよう……」「五月のデスマーチは、保険だって考えて。あとね、入社してからの三年は、ボーナスタイムだと思って。たくさん失敗しても、叱られて、教えられながら、許される時期。私も、そうだったから」 三年間、芽が出なかった里愛。お荷物扱いコースに乗りそうなところを、企画二つを通して、逆転ヒットを放った彼女。 もちろん、実際の企画が受けるか外れるかは、まだわからない。「絶滅展を成功させたい気持ちは、すっごくよくわかる。でも、しくじったらそれでおしまいだなんて、考えちゃダメ」 苦労人の思いやりが、言葉に込められていた。 あくあはただ、無言で耳を傾けながら、ざるそばをすするのであった。 ◆ ◆ ◆「おかえり……」「あれ!? 今日は早いね?」 相部屋のベッドで横になっているあくあに、バッグを壁
最終更新日 : 2026-07-15 続きを読む