「あのじろう、助かったって!」 夕食の席で、大型デバイスを見ていた寮生が、声を上げる。 一同がそちらを注視すると、「世界初! アノマロカリス がん摘出手術成功!」 というテロップと、この間の研究所の責任者と思しき人が、映っていた。「おお~!」 と、声を上げる一同。「……ただ、何ぶん高齢なため、術後の回復が思わしくなく、あのじろうの、体力と気力の勝負といったところです」 責任者の言葉に、盛り上がった場が、冷える。「大丈夫! あのじろうは、ぜってー元気になって帰ってくるって!」「うん」 まりんを励まそうとあくあが声を掛けるが、まりんの表情に、動揺の色はなかった。(強くなったな……) 心がじわりと熱くなる、あくあであった。 ◆ ◆ ◆「お疲れ様でした!」 案内課にて。 七月第一週、最終日の終礼が終わった。 まりんは、再任命後、立派にアノマロカリス水槽の案内役を務めあげ、第一関門クリア。 正式に、ソロの案内員を任されるのが、いつになるかはわからないが、希望を胸に抱くのであった。「あのじろうの続報、あれからないですね」 帰路立ち止まり、デバイスを見ながらつぶやくまりん。「知らせがないのは、いい知らせ!」 あくあが、まりんの肩に手を置く。「そうだね」 ちょっと切なそうに、微笑むまりん。「明日から、いつもの体制に戻る。気合い入れていこう」「はい!」 らいあが、話題を切り替える。「絶滅展の方は、どう?」 不意に、企画組の進捗が、気になったまりん。「課長曰く、順調だって。五月のデスマーチが保険だっていうのは、本当だったんですね」「うん」 あくあと里愛が、そんな会話をする。「ん?」 デバイスに新規通知が来たので、開くまりん。「本日、あのじろうが、研究所から当館に搬送されます。完全に健康になるまで、医療課での療養となりますが、危険な状態は脱しました」 新規の社内報に、そう書かれていた。「みなさん! 社内報見てください!」「……おおー!」 肩を組み合って、きゃっきゃと喜び合う五人。「やったな、雁州!」「はい!」 じんわりと、目頭が熱くなる。 医療課は部外者入室禁止につき、あのじろうの様子を見に行くことはできないが、うちの療養水槽で、ゆったり泳ぐ彼を想像するのであった。 ◆ ◆ ◆ 寮での
最終更新日 : 2026-07-15 続きを読む