翌朝。 春香は駐在所の呼び鈴の音に目を覚ました。 祐真が夜通し調べていた結果を伝えに来たのだ。 彼の顔には、疲労と、言葉にしづらい緊張が滲んでいた。 「……春香さん。見せたいものがあります」 彼は机の上に、一枚の写真をそっと置いた。 そこには森の中で笑う二人の少女が写っていた。 一人は、確かに紅葉。だが、その隣にいる少女の顔を見た瞬間、春香の手が震えた。 「……みお、よね……?」 唇が乾き、声がかすれる。 写真の中の美桜は、確かにあの子だった。だが、三歳の姿ではない。 少なくとも、七歳か八歳ほどの、幼いけれどしっかりとした目をした少女だった。 「撮影された時期が、どうしても合わないんです」 祐真が静かに言った。 「この写真が本物なら、美桜ちゃんは失踪後もどこかで生きていた可能性がある。しかも、紅葉さんと……会っていた」 「そんな……だって紅葉は、美桜のことを……」 春香は思い出した。 紅葉が小学生の頃、よく言っていた。 “ねえママ、森に行くとね、もう一人のわたしに会えるの” そのときは、幼い想像だと笑い飛ばしてしまった。 けれど──。 「祐真さん、その写真……どこで見つけたの?」 「古い祠の近くに埋まっていました。紅葉さんのスケッチブックの裏に『あのひみつのばしょにいきたい』というメモも残っていて……」
Last Updated : 2026-10-13 Read more