All Chapters of 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜: Chapter 111 - Chapter 120

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第108話 帝人さん、その会議は後です

 月曜日の朝から、帝人さんの予定表はひどいことになっていた。 九時から役員会議。 十時半から海外事業部との打ち合わせ。 午後には来客が二件。 その合間に承認書類と決裁案件が積み上がり、さらに朝一番から「至急」の文字がついた連絡が三件届いている。 私はタブレットを見ながら、一つずつ内容を確認した。「小春」 執務室から呼ばれて顔を上げる。「はい」「十時の会議を追加しろ」「入れません」 即答すると、帝人さんがこちらを見る。「なぜだ」「今日の十時からは役員会議が続いています」「途中で抜ければいい」「抜けません」「十五分で終わる」「帝人さんが十五分と言って十五分で終わった会議、最近ありました?」 一瞬、黙った。「内容による」「つまり保証できないんですよね」 私は届いた資料を持って執務室へ入った。「追加したいのは、営業本部から来ている案件ですよね?」「ああ。取引条件の変更だ。俺が見た方が早い」「資料は確認しました」 机の前へ立ち、必要なページだけを開く。「今の段階では帝人さんが決めることはありません」「ある。変更案を見れば――」「その変更案がまだ一案しかありません」 帝人さんの言葉を止めた。「営業本部は、取引先から提示された条件をそのまま持ってきています。代替案も、利益への影響も、断った場合の想定もありません」「だから俺が聞く」「今聞いたら、帝人さんが代わりに考えることになります」 帝人さんが眉を寄せる。「俺が考えた方が早い」「早いです。でも、それを毎回やるから帝人さんに仕事が集まるんです」 私は資料を机へ置いた。「営業本部には、変更を受ける場合、条件を修正する場合、断る場合の三案を出しても
last updateLast Updated : 2026-09-11
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第109話 会議に出ないのも仕事です

 翌日の午後。「帝人さん。この会議、最初から出なくていいです」 私がそう言うと、帝人さんは資料から顔を上げた。「何だと?」「聞こえてますよね?」「聞こえたから理由を聞いている」 十五時から予定されているのは、新しい法人向けサービスについての社内会議だった。 企画部、営業部、運用部。 三部署が関わる。 すでに二度打ち合わせをしているのに、方向性が決まっていない。 だから三度目の今日は、帝人さんにも出席してもらいたい。 それが担当役員からの依頼だった。「二回やって決まらないなら、俺が決めれば終わる」「そこが問題なんです」「何がだ」「帝人さんが出たら、本当に終わるからです」 帝人さんの眉間に皺が寄る。「終わるならいいだろう」「よくありません」 私は会議資料を開いた。「企画部は機能を増やしたい。営業部は価格を下げたい。運用部は現状の人員では回せないと言っています」「だから優先順位を決める」「誰がですか?」「俺だ」「そこです」 帝人さんが黙る。「三部署とも、自分たちで何を優先して何を諦めるか決めていません。帝人さんが最初から入ったら、全員が帝人さんの答えを待ちます」「俺の判断が最適なら、それでいい」「一回ならいいです」 私は資料を閉じた。「でも毎回帝人さんが答えを出すなら、次も同じことが起きます」「なら、能力のない人間を替えればいい」「能力がないかどうか、まだ分かりません」 帝人さんの目が少し細くなる。「言いたいことを続けろ」「三部署は、それぞれ自分の立場ではちゃんと考えています。ただ、お互いに何を譲れるかを話していないんです」「だから会議をしている」「二回とも、帝人さんに上げるための主張
last updateLast Updated : 2026-09-11
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第110話 小春を通せば通ると思うな

 その話を持ちかけられたのは、昼休みが終わった直後だった。「倉橋さん、少しいいですか?」 声をかけてきたのは事業企画部の部長だった。「はい」「ちょっと相談がありまして」 手にしているのは、来期の新規投資案件に関する資料らしい。「社長へ上げているんですが、なかなか承認が下りなくて」「そうなんですか」「内容自体は悪くないと思うんです。ただ、数字の見せ方が少し弱いのかもしれなくて」 ここまでは普通の相談だった。 だから私も資料を受け取ろうとした。 けれど。「倉橋さんから一言、社長に言ってもらえませんか?」 手が止まった。「私から、ですか?」「ええ。倉橋さんの話なら社長も聞くでしょう?」 悪意がある言い方ではなかった。 むしろ、当然のようだった。「『一度ちゃんと見てあげてください』くらいでいいんです。倉橋さんが言えば、少なくとももう一回は検討してもらえると思うので」 私は資料から手を離した。「それはできません」「え?」「内容を整理するお手伝いならします。でも、私から帝人さんに承認を促すことはしません」「いや、承認してくれとまで言っているわけでは――」「同じです」 私は相手を見る。「私を通せば帝人さんの判断が変わるかもしれない、という前提で頼んでいますよね」 部長が言葉に詰まった。「それは……多少は」「なら、なおさらできません」 帝人さんに意見を言うことはある。 止めることもある。 違うと思えば、違うと言う。 でもそれは、誰かの希望を通すためじゃない。「帝人さんが承認していないなら、理由を確認して、そこを直してください。その上で再提出してください」「倉橋さんから言ってもらった方が早いと思ったんですが」「早
last updateLast Updated : 2026-09-12
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第111話 私の言葉だから、ですか

 翌日の役員会議で、私は一度だけ口を開きかけて、やめた。 議題は新規物流拠点の再編計画だった。 帝人さんの案は数字の上では合理的だった。 拠点を一つ減らし、処理量を二か所へ集約する。 設備投資を抑えながら稼働率を上げる。 計算としては通っている。 ただ、資料の端に書かれている「夜間人員再配置」という文字が気になった。 現場側の勤務負担が増えないだろうか。 でも。 昨日のことを思い出した。 私が言えば、帝人さんは聞く。 誰かがそれを利用しようとするくらいには。 なら私は、自分の言葉をもう少し慎重に使った方がいいのかもしれない。「次」 帝人さんが会議を進める。 私は何も言わなかった。 数分後。 また別の資料で、気になるところを見つけた。 今度も口を開かない。「小春」「はい?」 突然名前を呼ばれた。 役員たちの視線が集まる。「何かあるなら言え」「いえ、大丈夫です」「大丈夫じゃない」 帝人さんが私を見る。「さっきから二回、何か言おうとしてやめた」 見られていた。「……後で話します」「今言え。今の議題に関係するなら、後では遅い」 逃げられそうにない。 私は資料へ目を落とした。「夜間人員の再配置なんですけど、現場の負担試算は入っていますか?」 担当役員が答える。「人件費と必要人数は算出しています」「人数ではなくて、勤務の組み方です。二拠点へ処理を集約すると、夜間帯の波が今より大きくなりませんか?」 担当者が資料を確認する。「そこまでは……」 帝人さんがすぐに口を開いた。「追加で出せ。夜間の時間帯別処理量と必要人数、連続勤務への影響まで見る」
last updateLast Updated : 2026-09-13
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第112話 ここから先は私が止めます

 午後二時から始まった会議は、予定では一時間半だった。 皇グループが進めている海外企業との業務提携について、最終条件を確認する重要な会議だ。 帝人さんが入室する前に、私は予定をもう一度確認した。「十六時から財務部との打ち合わせがあります。そのあと十七時半に来客です」「分かっている」「会議中に別件を増やさないでくださいね」「俺から増やすつもりはない」「帝人さんから、は」「何が言いたい」「外から来ても、全部受けないでくださいという意味です」 帝人さんは少し眉を寄せた。「必要なら見る」「必要かどうかは私が確認します」「小春が?」「はい。帝人さんを途中で呼び出す必要があるものだけ通します」 数秒、こちらを見る。「分かった」 意外なほど簡単に了承した。「いいんですか?」「小春が止めると言っているんだろう」「言いましたけど」「なら任せる。ただし、本当に俺の判断が必要なら止めるな」「もちろんです」 帝人さんが会議室へ入る。 扉が閉まって十分もしないうちに、最初の連絡が来た。 総務部からだった。 翌週予定されている社内行事について、帝人さんの確認が欲しいという。「今日中で大丈夫ですか?」『はい。ただ、できれば早めにいただけると』「では会議終了後に回します」 次。 広報部から取材依頼の確認。 これも今日中で問題ない。 三件目は関連会社からの相談。 内容を聞けば担当役員で処理できる。 四件目。「倉橋さん、社長に今すぐ確認していただけませんか」 企画部の社員が資料を抱えてやってきた。「何についてですか?」「来月発表予定の新サービスです。名称候補を三つまで絞ったんですが、
last updateLast Updated : 2026-09-14
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第113話 帝人さんは一人しかいません

 金曜日の夕方。 私は帝人さんの執務室へ入って、机の上を見た。 そして、そのまま黙った。「何だ」 帝人さんが資料から顔を上げる。「……増えてません?」「何が」「仕事です」「仕事は増えるものだ」「自然現象みたいに言わないでください」 朝にはなかった資料が三冊。 タブレットにも新しい予定が追加されている。 そのうち二件は、今日の予定にはなかった。「この十九時からの会議、何ですか?」「関連会社の投資計画だ」「月曜日の予定でしたよね?」「資料が揃った。今日できる」「今日やる必要は?」「できるなら今日やればいい」 出た。 私は帝人さんの机の前まで行く。「帝人さん」「何だ」「できることと、やるべきことは別です」 昨日も似たようなことを言った気がする。 というより、この人には何度でも言う必要があるらしい。「月曜日にやる予定だったなら、月曜日で問題なかったんですよね?」「ああ」「では月曜日です」「小春」「戻します」「俺は今日でも構わない」「私は構います」 帝人さんが眉を寄せた。「なぜ小春が困る」「予定を管理しているからです。それに、今日全部やったら、空いた月曜日にまた別の仕事を入れるでしょう?」 沈黙。「入れますよね?」「必要ならな」「だから駄目なんです」 その時、扉がノックされた。「失礼いたします」 榊原さんが入ってくる。 手にはまた資料。 嫌な予感しかしない。「社長、こちらの確認を――」「榊原さん」「はい」「帝人さんが
last updateLast Updated : 2026-09-14
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第114話 それだけじゃない

 金曜日の十八時十二分。 私は予定表を確認して、思わずもう一度時計を見た。 会議はすべて終了。 追加の来客なし。 今日中の決裁も残っていない。 未処理の案件は、月曜日へ回して問題のないものだけ。「……終わった」 小さく呟く。 珍しい。 とても珍しい。「小春」 執務室から呼ばれた。「はい」 入ると、帝人さんは最後の資料を閉じたところだった。「これで終わりだ」「本当に?」「何だその反応は」「念のためです。机の引き出しから新しい資料とか出てきませんよね?」「出てこない」「電話して会議を増やしたりも」「しない」「関連会社へ突然――」「小春」「はい」「今日は終わりだ」 帝人さんが少し呆れたように言った。 私は時計を見る。「十八時十五分にもなってません」「ああ」「すごいですね」「何がだ」「予定どおりに全部終わりました」 帝人さんの眉がわずかに動いた。「俺が予定どおり動けば珍しいのか」「かなり」「失礼だな」「この前まで、空いてる時間を見つけると仕事を入れてた人が言います?」 帝人さんは否定しなかった。 代わりに私を見る。「今週は、小春がかなり止めたからな」「止めましたね」 最初から帝人さんを出さなかった会議。 担当役員へ戻した案件。 急ぎではないのに急ぎとして持ち込まれた確認。 帝人さんがやれば確かに早い。 けれど、その人にしかできない仕事は他にもある。「来週もこの調子でお願いします」「毎日十八時に終わるとは言っていない」
last updateLast Updated : 2026-09-15
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