All Chapters of 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜: Chapter 71 - Chapter 80

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第71話 選択肢を出すのはそちらではありません

 最初の説明を終えたあと、東栄都市開発の専務は追加資料を取り出した。「皇社長のお考えは理解いたしました。しかし、共同事業者を変更する場合の損失は、簡単に処理できるものではありません」 机の上へ置かれた資料には、契約解除後に想定される工程の遅延や、許認可の再確認に必要な期間が記載されていた。「新たな事業者の選定に三か月。業務の引き継ぎに二か月。周辺事業者との再調整まで含めれば、全体で八か月以上の遅延が見込まれます」「その数字は、現在の事業構造を維持したまま、東栄だけを別会社へ置き換えた場合のものだな」 帝人が尋ねると、専務は一瞬答えを詰まらせた。 代わりに直哉が口を開く。「現行計画を最も早く引き継ぐ方法として試算しています。設計や運営方針まで変更すれば、さらに時間が必要になる可能性もあります」「可能性ではなく根拠を話せ」「変更内容が示されていない以上、正確な期間は算出できません」「なら、八か月という数字も確定ではない。自分たちに都合のいい前提で作った試算を、避けられない損失のように扱うな」 直哉は表情を変えなかった。「御社が具体的な代替案を示されない以上、私どもは現行計画を基準に判断するしかありません」「お前たちが判断する必要はない」 東栄側の二人が眉をひそめる。 帝人は資料を指先で押さえた。「東栄には、皇グループが用意した代替案を評価する権限はない。必要なのは、自分たちが現在の契約を履行できるのか、できないのかを明らかにすることだ。こちらの代替案が不十分なら条件を受け入れてもらえる、と考えている時点で順序を間違えている」「ですが、共同事業である以上、御社の判断が東栄都市開発にも影響を与えます」「だから契約がある」 帝人は直哉を見る。「契約とは、互いの善意を期待するためのものではない。どちらが何を負担し、何が起きた時に誰が責任を負うかを、問題が起きる前に決めるためのものだ。東栄は資材費の上昇を理由に、自分たちが引き受けた負担を変更しようとしている。
last updateLast Updated : 2026-08-14
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第72話 今日は互いの時間を無駄にしなかった

 協議の終了が告げられると、東栄都市開発の専務と事業責任者は資料をまとめ、席を立った。「次回の日程につきましては、改めてご連絡いたします」「ああ。持ち帰るのは構わないが、社内で都合のいい説明に変えるな。俺が求めているのは値引きではない。現在の契約を履行できなくなった理由と、それでも東栄を事業へ残す価値があるかどうかだ」 帝人の言葉に、専務の表情が固くなる。「承知しております」「本当に理解しているなら、次は資材費の資料だけを持ってくることはないだろう」 最後まで容赦がない。 東栄側の二人は深く頭を下げ、会議室を出ていった。 皇側の事業本部長と法務統括責任者も、帝人から追加調査の指示を受けて退出する。 榊原は残ろうとしたが、帝人が視線だけで外すよう命じた。「次の予定まで十五分です」「十分で終わらせる」「承知しました」 扉が閉まる。 会議室に残ったのは、帝人と直哉だけだった。 直哉はすぐには席を立たず、閉じた資料の上へ手を置いている。「皇社長が初回協議から直接出てくるとは、正直に言えば予想外でした」「俺も、お前が代理人だとは後から知った」「私が担当だと分かっても、出席を取りやめなかったのですね」「取りやめる理由がない。お前が小春の元婚約者であることと、東栄の代理人として何を持ってくるかは別の話だ」 直哉の目がわずかに細くなる。「仕事と私情を分けられる方だとは思っていませんでした」「俺を何だと思っている」「欲しいものは、手段を選ばず手に入れる人だと」「間違ってはいない」 帝人は否定しなかった。「だが、俺が手段を選ばないのは、選ぶ必要がない時だけだ。会社の交渉で私情を持ち込めば、判断が鈍る。小春に関わる相手だからという理由で東栄へ不利な条件を出せば、皇グループの利益を私怨のために使うことになる。そんな愚かな真似をするくらいなら、初めからこの席には座らない」
last updateLast Updated : 2026-08-14
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第73話 今回は私が連れていきます

 日曜日の午前十一時。 私は駅前で帝人さんと待ち合わせをしていた。 今回は十時ではない。 行き先を決めたのも私だ。 帝人さんには、駅名と集合時間しか伝えていない。「お待たせしました」「待っていない。十一時になったばかりだ」 帝人さんは駅の時計を示した。「今日は隠れていなかったんですね」「ああ。十五分前から、普通にここで待っていた」「進歩しましたね」「俺は必要だと判断すれば、すぐに修正する」 少し誇らしげだった。 服装は前回と同じく私服だけれど、今日は薄いシャツに落ち着いた色のコートを合わせている。 仕事中より柔らかく見えるのに、人目を引くところは変わらない。「それで、今日はどこへ行く」「まだ秘密です」「なぜ隠す」「帝人さんが事前に調べ尽くしてしまうからです」「すでに調べた」 私は足を止めた。「何をですか」「この駅から徒歩圏内にある施設だ。飲食店、商業施設、公園、美術館、書店まで確認した」「全部じゃないですか」「行き先は特定していない」「候補をほとんど消しています」「小春が行きそうな場所を知っておけば、服装や移動手段を誤らずに済む。今回、行き先を決める権利は小春にある。だが、俺が何も考えずについていく必要はないだろう」 帝人さんは、悪びれずに言い切った。 確かに、行き先を勝手に決めたわけではない。 地図を送りつけてきた前回と比べれば、約束は守っている。「では、ついてきてください」「ああ」 私は駅前の大通りを歩き始めた。 帝人さんは行き先を尋ねず、私の隣に並ぶ。 交差点を二つ越え、細い道へ入る。 しばらく歩いたところで、古い建物の一階に入った書店が見えてきた。 大きな看板も、派手な広告もない。
last updateLast Updated : 2026-08-15
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第74話 一冊だけ選んでください

 店内へ入ると、紙と木の混じったような匂いがした。 大きな書店のように明るく整然としているわけではない。 壁際には天井近くまで本棚が並び、平台には店員さんが選んだらしい本が、短い紹介文と一緒に置かれている。「ここにはよく来るのか」「秘書になる前は、月に一度くらい来ていました。最近はあまり来られていませんけど」「なぜだ」「忙しかったからです」「休日まで仕事をしていたのか」「仕事をしていたわけではありません。疲れて、近所で買い物を済ませることが増えただけです」 帝人さんの眉がわずかに寄った。「俺の秘書をしていた頃か」「帝人さんだけが原因ではありませんよ」「原因の一部ではあるんだな」「否定はしません」 正直に答えると、帝人さんは黙った。 ここで謝罪を始められると、今日まで仕事の反省会になってしまう。 私は近くの棚から一冊を抜き取った。「今日は本を選びに来たんです。過去の勤務環境についての検証は別の日にしてください」「別の日があるのか」「そこを拾わないでください」 帝人さんは少しだけ口元を緩めた。「分かった。今日は小春に選ばせる」「私も帝人さんに選んでもらいます」「すでに候補はある」「早くありませんか?」「小春が普段読まないものを選ぶだけなら、難しくない」「普段読まない本を渡せばいいわけではありませんよ」「分かっている。小春が最後まで読む価値があり、読んだ後に俺と話せるものを選ぶ」 条件が増えている。 私は帝人さんの手元をのぞき込んだ。 まだ何も持っていない。「候補があると言ったのに、本は選んでいないんですね」「先に小春の選び方を見る」「参考にするんですか?」「小春が俺に何を読ませたいのか分かれば、俺が小春に何を渡すべきかも変わる」
last updateLast Updated : 2026-08-15
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第75話 本の話だけで終わると思いましたか

 本を買ったあと、私たちは二階の喫茶室へ上がった。 木の階段を上ると、店内は一階よりさらに静かだった。 窓際には小さな丸テーブルが並び、古い本棚の間に観葉植物が置かれている。 休日の昼過ぎなのに騒がしさはなく、ページをめくる音と、小さな話し声だけが聞こえていた。「ここもよく来ていたのか」「はい。本を買ったあと、そのまま読んで帰ることもありました」「一人で?」「ほとんどは」 帝人さんが一瞬黙った。「何ですか?」「いや」「今、何か考えましたよね」「小春が一人でここに座って本を読んでいたところを想像した」「それだけですか?」「ああ」 帝人さんは当然のように言った。「その時間を知らなかったのが少し気に入らないだけだ」「昔の私の休日まで把握しようとしないでください」「把握したいとは言っていない。知りたかったと言っている」 似ているようで、少し違う。 私はそれ以上追及せず、窓際の席へ座った。 帝人さんも向かいへ腰を下ろす。 注文したコーヒーと紅茶が運ばれてくるまでの間、テーブルの上には、さっき買った二冊の本が置かれていた。 私が帝人さんへ贈った小説。 帝人さんが私へ選んだ写真集。「いつ読む?」「今日から少しずつ読もうと思います」「いつ読み終わる」「期限を決めないでください」「話すと言っただろう」「読み終わったら話します」「では、読み終わったら連絡しろ」「分かりました」 帝人さんは満足そうに頷いた。「帝人さんは?」「今夜読む」「全部ですか?」「ああ」「急がなくてもいいですよ」「小春が選んだ理由を早く知りたい」「説明しましたよね?」
last updateLast Updated : 2026-08-16
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第76話 帝人さんの好きな場所

 喫茶室を出た頃には、午後三時を少し回っていた。 私は紙袋に入った写真集を持ち、帝人さんと並んで階段を下りた。「この後はどうしますか?」「小春が決めるんじゃなかったのか」「今日は私が連れていくと言いましたけど、全部を私が決めるとは言っていません」 帝人さんが少し考える。「なら、一か所だけ俺が決めてもいいか」「珍しい聞き方ですね」「勝手に決めるなと言ったのは小春だろう」「そうでした」 ちゃんと覚えている。「どこへ行くんですか?」「ここから歩いて十分くらいだ」「十分単位」「距離の説明だ。予定表ではない」 即座に反論された。 私は笑いながら、帝人さんの隣を歩き始めた。 大通りを渡り、少し古いビルが並ぶ一角へ入る。 帝人さんが立ち止まったのは、商業ビルの上階にある小さな展望スペースだった。「ここですか?」「ああ」 エレベーターで最上階へ上がると、思っていたより人は少なかった。 ガラス張りの向こうに、街が広がっている。 遠くには高層ビル。 その手前には住宅や学校、小さな公園。 道路を走る車も、ここから見るとずいぶん小さい。「意外です」「何がだ」「帝人さんなら、もっと高いところを知っていると思っていました」「知っている」「では、どうしてここなんですか?」 帝人さんは窓の近くまで歩いた。「ここは静かだからだ」 それだけ言って、しばらく外を見る。 私は隣へ立った。「よく来るんですか?」「たまにだ」「一人で?」「ああ」 今度は私が、帝人さんの知らなかった時間を想像する番だった。「会社で嫌なことがあった時とか?」「仕事で嫌なことがあった
last updateLast Updated : 2026-08-16
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第77話 次も私から誘っていいですか

 展望スペースを出る頃には、窓の向こうの街が少しずつ夕方の色へ変わり始めていた。 エレベーターを降り、外へ出る。 昼間より風が冷たくなっていて、私は無意識に首元を押さえた。「寒いのか」「少しだけです」 帝人さんが立ち止まる。「車を呼ぶ」「駅まで歩けます」「寒いと言っただろう」「少しだけです。それに、今日は歩きたいです」 帝人さんは私の顔を見た。 以前なら、ここで「乗れ」と決めていたかもしれない。 けれど今日は違った。「分かった。ただし、本当に寒くなったら言え。小春が歩きたいという理由は尊重するが、我慢して体調を崩すことまで認めるつもりはない」「はい」 私は少し笑った。「何だ」「ちゃんと聞いてくださるようになったなと思って」「だから俺を子ども扱いするな」「していませんよ」「その言い方がしている」 帝人さんが不満そうに歩き出す。 私も隣へ並んだ。 駅へ向かう道は、休日の夕方らしく人が増えていた。 買い物袋を持った人。 手をつないで歩く親子。 これから食事へ行くらしい男女。 その中を、私たちも並んで歩いている。 ふと、今日一日を思い返した。 私が好きだった書店。 二階の喫茶室。 お互いに選んだ本。 そして、帝人さんが一人で来ていた場所。「帝人さん」「何だ」「今日は楽しかったです」「ああ」「そこは帝人さんも感想を言うところでは?」「楽しかった」 即答だった。「前より早く言えるようになりましたね」「前回、小春が『問題はなかった』では感想にならないと言ったからな」 覚えていたらしい。「では、何が一
last updateLast Updated : 2026-08-17
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第78話 見せる手札はこちらで決める

 月曜日の午後。 皇グループ本社の会議室には、前回より厚い資料が並んでいた。 東栄都市開発との二度目の協議。 今回は先方から、追加費用の内訳だけでなく、直近の借入状況や資金計画の一部も提出されている。「前回ご指摘いただいた点を踏まえ、開示可能な範囲で資料を整理しました」 御影直哉が説明する。 帝人は数ページめくったところで手を止めた。「資金不足は認めるんだな」「当初想定より厳しい状況であることは否定しません。ただし、事業継続が不可能な状態ではありません」「言い方を変えるな。俺が聞いているのは、追加負担なしで契約を履行できるかどうかだ」 直哉は一拍置いた。「現行条件のままでは難しいと判断しています」「なら前回より話は早い」 東栄側の専務がわずかに身を乗り出す。「ですから、御社にも一定の負担を――」「まだそこへ戻るのか」 帝人の声が低くなった。「東栄が契約を守れないことと、皇グループが無条件で穴を埋めることの間には何段階もある。出資するのか、融資するのか、権利を買うのか、運営権を移すのか。金を出すという行為だけ切り取って、現在の利益配分を維持したまま負担割合を決めようとするな」 専務が黙る。 その代わりに直哉が資料を一枚抜き出した。「では、こちらからも確認があります」「言え」「前回、皇グループは東栄都市開発が撤退した場合でも、工程を分割することで遅延を三か月程度まで抑えられる可能性があると説明されました」「ああ」「その根拠となる候補事業者との協議記録を開示していただきたい」 皇側の事業本部長が直哉を見る。 帝人だけは表情を変えなかった。「断る」 短い言葉のあと、帝人は続けた。「お前たちが財務情報を出したから、こちらも同じ量の情報を渡すべきだと考えているなら間違いだ。情報開示は交換会ではない。何を見せる必要があ
last updateLast Updated : 2026-08-17
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第79話 間違いが証明されたなら直します

 二度目の協議から三日後。 皇グループ本社の会議室には、東栄都市開発との契約書と、その付属資料が広げられていた。 前回、帝人は東栄側へ三つの道を示した。 現行契約を守る。 皇グループから追加資金を受ける代わりに、主導権や利益配分を見直す。 あるいは事業から撤退する。 その中でも、東栄側が最も警戒しているのは二つ目だった。「御社から追加出資を受ける場合についてですが」 直哉が契約書の一ページを開いた。「皇社長は、出資比率の変更に伴って事業の主導権も見直すとおっしゃいました。しかし、現行契約では重要事項の決定について、双方の同意を必要とすると定められています」「ああ」「出資比率が変わっただけでは、この条項は自動的に失効しません」 帝人は黙って続きを促した。「つまり、御社が追加資金を出したとしても、それを理由に一方的に決定権を拡大することはできない。契約変更には東栄都市開発の同意が必要です」 東栄側の専務が、わずかに表情を緩める。 直哉はさらに続けた。「加えて、契約上、事業運営権の譲渡には一定の制限があります。皇グループが追加出資を条件として運営権の移転を求める場合、その内容によっては既存契約との整合性に問題が生じます」 皇側の法務統括責任者が資料を確認する。 帝人は数秒、契約書へ視線を落とした。「その点は、お前が正しい」 会議室の空気がわずかに揺れた。 東栄側の専務だけでなく、皇側の人間まで帝人を見る。 直哉も、ほんの少しだけ目を細めた。「意外ですね」「何がだ」「皇社長が、自分の案の不備をその場で認めるとは思いませんでした」 帝人は契約書を閉じる。「間違っていると証明された後まで、自分の案に固執する方が無能だろう」 淡々とした声だった。「俺は判断した時点で、自分の案が最も正しいと思っている。だから決定する。だ
last updateLast Updated : 2026-08-18
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第80話 公平な数字なら歓迎します

 次の協議で直哉が最初に出してきたのは一冊の資料だった。「前回のお話を受けて、東栄都市開発が保有する事業上の権利と運営権について、第三者による価値算定を提案します」 帝人は資料を開いた。「第三者評価を入れること自体は、俺も認めたはずだ」「はい。ただし、評価会社の選定を皇グループ側だけに任せるつもりはありません」「当然だろう」 あまりにも簡単に返され、東栄側の専務がわずかに拍子抜けした顔をする。 直哉はそのまま続けた。「こちらから三社を候補として提示します。いずれも大型不動産事業の評価実績があり、皇グループ、東栄都市開発のどちらとも現在継続的な取引関係はありません」 帝人は候補一覧へ目を通した。「三社とも悪くない。ただし、このままでは使えない」「理由を伺っても?」「評価対象が狭い」 帝人は一枚目へ戻した。「お前たちは、東栄が持つ運営権と、これまで事業へ投入した資金、周辺事業者との調整実績を評価させようとしている。それだけなら、当然高い数字が出る」「実際に価値があるものです」「否定していない。だが、その価値を維持するために今後必要になる追加資金と、工期遅延による損失が入っていない」 帝人は資料を机へ置いた。「完成した状態の権利だけを値札につけて、完成させるまでに必要な負担を別会計にするな。俺が買うのは完成後の理想ではない。問題を抱えた現在の事業だ」 直哉が目を細める。「将来発生する損失をすべて権利価値から控除すれば、東栄側に著しく不利な評価になる可能性があります」「だから第三者に計算させるんだろう」 帝人の声に迷いはなかった。「東栄に有利だから入れる。皇に不利だから外す。そんな評価なら最初から必要ない。現在の価値も、将来の負担も、全部並べろ。その結果、俺が考えているより東栄の権利が高いと出るなら、その金額を払う」 専務が驚いたように顔を上げた。「評価額を、そのまま受け入れ
last updateLast Updated : 2026-08-18
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