All Chapters of 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜: Chapter 121 - Chapter 125

125 Chapters

第115話 これは仕事ではありません

 月曜日の午後。「小春。金曜の夜を空けろ」 執務室からいきなり言われて、私は予定表を開いた。「何か入りました?」「入った」「どちらの会社ですか?」「会社じゃない」「会食?」「違う」「財界関係ですか?」「違う」「では何です?」 帝人さんが私を見る。「食事に行く」「誰と?」「小春と」 指が止まった。「……私?」「ああ」「仕事ですか?」「違う」「じゃあ、どうして予定表に――」「まだ入れていない」 私は画面を確認した。 本当に空白だった。「金曜の夜は空いているだろう」「今のところは」「なら俺と食事に行く」「決定なんですか?」「誘っている」「今の言い方のどこがですか?」「小春が嫌なら断れる」「そこだけ聞くと誘ってるんですけどね」 帝人さんは少し考える。「小春。金曜の夜、俺と食事に行かないか」「急に普通になりましたね」「これならいいのか」「最初からそう言ってください」「時間がかかる」「数秒ですよ」 私は予定表を閉じた。「でも、どうしたんですか?」「何がだ」「この前もホテルで一緒に食事しましたし」「あれは仕事だった」「半分くらい途中から仕事じゃなかった気もしますけど」「今回は最初から仕事じゃない」 きっぱり言われる。「何かお祝いとか?」「ない」「相談?」「ない」「では、ただ食事に?」「ああ」 帝人さんは当然の顔をしている。
last updateLast Updated : 2026-09-15
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第116話 普通のお店に行きます

 金曜日の十八時。「帝人さん、行けますか?」「ああ」 執務室から出てきた帝人さんの手には、仕事用の鞄だけ。 追加の資料もない。「珍しいですね」「何がだ」「本当に仕事を持って帰らないんだなって」「今日は小春と食事に行く」「食事のあと仕事する可能性は?」「ない」「成長しましたね」「だから俺を子供扱いするな」 そう言いながらも、少し機嫌がいい。 私はバッグを持ち、エレベーターへ向かった。「店は決めたのか」「はい」「どこだ」「着いてからのお楽しみです」「なぜ隠す」「帝人さんが事前に調べそうだからです」「調べて何が悪い」「メニューと価格と口コミを全部見て、入る前から評価を始めるでしょう?」 帝人さんが黙った。「しますね?」「店を選ぶ以上、情報を確認するのは普通だ」「今日はしなくていいんです」「小春は確認したんだろう」「しましたけど、私は普通にお店を探しただけです」「何が違う」「帝人さんの場合、視察になります」 エレベーターの扉が開く。「今日は仕事じゃありません」 昨日、自分で言った言葉を返すと、帝人さんは何も言わずに乗り込んだ。 ◇◇◇◇ 連れてきたのは、駅から少し離れた洋食店だった。 大通りから一本入った場所にある、小さなお店。 テーブルは十卓ほど。 白いクロスもないし、入口に案内係もいない。 店先には手書きの黒板が置かれている。 帝人さんが看板を見た。「ここか」「はい」「予約は」「できません」 帝人さんが私を見る。「できない店を選んだのか」
last updateLast Updated : 2026-09-16
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第117話 そこは意外と慎重なんですね

「帝人さん、決まりました?」「まだだ」 向かい側で、帝人さんは真剣な顔でメニューを見ている。 会議資料でも読んでいるような顔だ。「そんなに悩みます?」「種類が多い」「洋食屋さんですから」「ハンバーグだけで四種類ある必要があるのか」「ありますよ」「チーズ、目玉焼き、和風、大根おろし」「楽しそうじゃないですか」「選択肢を増やせばいいというものでもない」「メニューにまで経営判断みたいなこと言わないでください」 私が笑うと、帝人さんは少し不満そうにページをめくった。「小春は」「オムライスにします」「もう決めたのか」「ここに来る前から決めてました」「なら先に言え」「帝人さんの分まで決めるんですか?」「そういう意味じゃない」 結局、帝人さんはデミグラスソースのハンバーグを選んだ。 料理が運ばれてくると、今度はしばらく黙って食べる。「どうです?」「うまい」「よかった」「値段を考えれば、かなり――」「帝人さん」「何だ」「今日は評価しなくていいです」「感想を言っただけだ」「その続きを聞いたら絶対、原価とか回転率の話になります」 帝人さんが黙った。 当たっていたらしい。「普通に食べてください」「普通に食べている」「じゃあ普通の感想を」「小春と来てよかった」 危うくスプーンを落としそうになった。「お店の感想です」「店も悪くない」「順番が逆です」「俺にとっては合っている」 さらっと言って、また食事へ戻る。 本当にこういうところだけは慣れない。 私はオムライスを一口食べて、話題を
last updateLast Updated : 2026-09-16
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第118話 あの秘書は何者ですか

 翌週の木曜日。 私は帝人さんと一緒に、都内のホテルで開かれる企業交流会へ来ていた。 皇グループの主要取引先や金融機関、関連企業の役員が集まる会だ。 今日は完全に仕事。 帝人さんもいつものスーツ姿で、会場へ入った瞬間から表情が変わっている。「皇社長、お久しぶりです」「先日の件ですが――」「来期の計画について、一度お時間を――」 次々に人が集まる。 帝人さんは相手の話を短時間で整理し、必要なものだけ答えていく。 私は少し後ろで、名刺や予定を確認しながら必要な情報を控えていた。「来月でしたら、第三週以降で調整できます」 そう伝えると、帝人さんが振り返る。「第四週は駄目だ」「海外出張ですね。では第三週で確認します」「ああ」 短いやり取り。 いつものことだ。 少なくとも、私たちにとっては。 しばらくして、ある企業の専務が新規事業の話を持ちかけてきた。「皇さんなら、かなり面白い案件だと思っていただけるはずです」 渡された簡単な資料に帝人さんが目を通す。「規模を広げすぎだ」「ですが、この市場なら先行者利益が――」「それを理由に初期投資をここまで増やす必要はない。需要予測も強気すぎる」 帝人さんは容赦がない。 相手もそれを承知しているのか、すぐに次の説明へ移った。「もちろん段階投資も検討しています。ただ、最初からある程度の規模を取らなければ――」 説明を聞きながら、私も資料を見た。 一つだけ気になる。「帝人さん」「何だ」「これ、初年度から全国展開する前提ですけど、地域を限定した場合の試算はないんですか?」 専務が私を見る。「限定展開、ですか」「はい。需要予測に幅があるなら、最初から全部取るより、地域ごとの反応を見てから広げる
last updateLast Updated : 2026-09-17
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第119話 秘書だからではありません

 企業交流会は、その後も続いた。 帝人さんの周りから人が途切れることはほとんどない。 取引先。 金融機関。 関連会社。 以前一度だけ会った人もいれば、私は初めて見る人もいる。 帝人さんは相手によって態度を変えない。 必要な話は聞く。 必要のない話は長引かせない。 曖昧な提案には、その場で曖昧だと言う。 こういう場所では特に、帝人さんらしさがよく分かる。「皇社長」 次に声をかけてきたのは、五十代くらいの男性だった。「少しだけよろしいですか」「ああ」 名刺交換のあと、話は来期の共同事業について移った。 私は少し後ろに下がり、内容を確認しながらメモを取る。「こちらとしては、年内に方向性だけでも決めたいと考えております」「年内というのは、契約条件までか。それとも基本合意までか」「できれば契約条件まで」「無理だな」 帝人さんは即答した。 相手の男性が苦笑する。「相変わらず厳しいですね」「厳しいんじゃない。必要な工程を飛ばす気がないだけだ」 帝人さんは資料へ視線を落とす。「これだけ関係会社があるなら、年内に条件を固めるには遅い。基本合意までなら検討できる」「では、その線で一度――」「小春」「はい」「年内で空いているのは」 私は予定を確認する。「基本合意の協議なら、十二月第二週までです。それ以降は海外案件と取締役会が重なります」「なら第二週までだ」 男性が私を見る。「倉橋さんでしたね」「はい」「皇社長の予定は、かなり厳しく管理されているんですね」「管理というより、増やさないようにしています」 つい本音が出た。 男性が笑う。「社長の
last updateLast Updated : 2026-09-17
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