All Chapters of 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜: Chapter 81 - Chapter 90

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番外編 小春に会えない休日

 日曜日の午前七時半。 皇帝人は、自宅の書斎にいた。 休日である。 正確には、予定のない休日だった。 小春は今日は友人と約束がある。 昨日の夜、『明日は友人と出かけます』 そう送られてきた。 帝人は当然、『何時に終わる』 と聞いた。『帝人さんと会う予定は入れませんよ』 先回りされた。 そのため、本日は予定がない。 帝人は七時に起き、トレーニングを終え、朝食を取り、八時になる前に書斎へ入っていた。 机の上には、東栄都市開発との共同事業に関する資料が積まれている。 次回協議まで時間はある。 第三者評価会社の選定も、現在は担当部署が進めている途中だ。 本来なら、帝人が今確認する必要はない。 だが予定がない。 なら仕事をすればいい。 午前八時十二分。 帝人は榊原へ電話をかけた。『おはようございます』「東栄の代替事業者について、設備部門を分離した場合の試算は出ているか」 少し間があった。『社長』「何だ」『本日は日曜日です』「知っている」『午前八時十二分です』「時計は見えている」『では、なぜ私にお電話を?』「確認したいことがあるからだ」 電話の向こうから、小さなため息が聞こえた。『明日ではいけませんか』「今日確認できるものを、なぜ明日まで待つ」『通常、休日とはそういうものです』「必要があれば休む。今日は必要ない」 榊原は黙った。 帝人は資料をめくる。「設備部門を別会社へ任せた場合、工期をさらに二週間縮められる可能性がある。前回の資料では、その試算が入っていない」『担当者が休日です』「呼び出せとは言
last updateLast Updated : 2026-08-19
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第81話 伝統だけでは赤字は消えません

 火曜日の午後。 皇グループ本社の会議室には、地方ホテル事業の定例報告資料が並んでいた。「問題はこちらです」 ホテル事業を統括する役員が、一枚の資料をスクリーンへ映す。 山間の温泉地にある老舗ホテル。 皇グループが十五年前に経営へ参画した施設で、創業は六十年以上になる。「翠嶺ホテルは、今期も赤字となる見込みです。五期連続になります」 帝人は資料へ目を落とした。「稼働率五十八パーセント。客単価は周辺施設の平均以下。建物の大規模修繕は三年以内に必要。予約の七割を仲介サイトへ依存しているせいで手数料負担も大きい」 淡々と数字を読み上げる。「これで、なぜまだ営業を続けている」 会議室が静かになった。 役員が慎重に答える。「翠嶺ホテルは地域でも歴史のある施設です。古くからのお客様も多く、皇グループが撤退すれば地元経済への影響も――」「俺は撤退の話をしていない」 帝人が資料を閉じた。「営業形態をこのまま残す理由を聞いている」「……伝統のあるホテルですので」「伝統は経営指標ではない」 帝人は椅子の背へ体を預けた。「六十年続いたこと自体には価値がある。だが、六十年続いたから七十年目も同じ方法で続けるべきだという理屈にはならない。過去に支持されたことと、現在の客が金を払う理由があることは別だ」 誰も口を挟まない。「それに、お前たちは赤字の理由を『地方だから』『建物が古いから』で片づけているが、同じ地域でも稼働率七十パーセントを超えている旅館はある。設備が新しくない施設でも、客単価を維持しているところはある。なら立地だけが原因ではない」 帝人は次の資料を開いた。「客室数が多すぎる。平日の需要に対して人員配置も重い。それなのに繁忙日は清掃が間に合わず、チェックイン開始が遅れるという苦情が出ている。人が多いのに必要な時間に足りない。配置そのものが間違っている」「現地では人手不足との報告が上が
last updateLast Updated : 2026-08-20
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第82話 一度、ご自分で見てきたらどうですか

 その日の夜。 私は自宅で夕食を終え、ソファに座って写真集を眺めていた。 帝人さんにもらった本だ。 何でもない日常を切り取った写真ばかりなのに、不思議と何度も見返したくなる。 その中の一枚に目を止めたところで、スマホが震えた。 帝人さんからだった。『何をしている』 以前なら、そこから予定確認が始まるのではないかと警戒していたかもしれない。 今は少しだけ違う。『写真集を見ています』 すぐに既読がつく。『どの写真がいい』『まだ全部決めていません』『候補は』『急かさないでください』『分かった』 以前より引くのが早くなった。 私は少し笑ってから、こちらも尋ねる。『帝人さんは何をしているんですか?』『仕事が終わったところだ』『今日は遅かったんですね』『会議が多かった』『また誰かを論破していたんですか?』 少し間が空いた。『論破するために会議をしているわけではない』 否定の仕方が帝人さんらしい。 その後、ホテル事業の資料を見ていたと続いた。『ホテルですか?』『皇グループが経営に関わっている地方のホテルだ。五期連続で赤字になっている』 詳しく聞くと、帝人さんは思っていた以上に長い説明を返してきた。 稼働率。 客単価。 設備更新費。 予約経路。 人員配置。 宿泊プランの多さ。 私は途中から、仕事の報告書を読んでいるような気持ちになった。『それで、どうするんですか?』『再建、売却、業態転換を比較して決める』『閉館もあり得るんですね』『ある。残すこと自体を目的にはしない』 冷たいように聞こえる。 でも、帝人さんが簡単に人
last updateLast Updated : 2026-08-21
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第83話 お忍び視察に最上位客室は必要ですか

 翌日の昼休み。 帝人さんから、短いメッセージが届いた。『土曜から一泊で行く』 私は箸を止めた。 何のことか考えるまでもない。 昨日話していた翠嶺ホテルのお忍び視察だ。『決まるのが早すぎませんか?』『空室を確認した。小春も土日は空いている』『私の予定まで確認したんですか』『先週、次の日曜はまだ予定がないと言っていた』『土曜日は言っていません』 既読。 少し間が空く。『空いているか』 ようやく聞いた。『今のところ空いています』『なら行く』『まだ了承していません』『同行できるか確認した。できるなら行く』 言い方は少し改善している。 でも結論までが相変わらず速い。『仕事としてですか?』『視察だ』『では旅費は会社負担ですか?』『当然だ』 そこは迷いがない。『私が行く理由も会社に説明できます?』『俺とは違う視点で現場を見るためだ。接客、従業員の対応、客として感じる不便や価値を確認する。必要なら報告書も出してもらう』 思っていたより、きちんと仕事だった。『分かりました。では同行します』 すぐに既読がついた。『榊原から詳細を送らせる』 やっぱり榊原さんが巻き込まれるらしい。 十分ほどして、本当に榊原さんから連絡が来た。『翠嶺ホテル視察について、現在調整しております。今回、現地には社長の訪問を知らせません』『本当にお忍びなんですね』『はい。現地責任者を含め、皇グループ本社からの視察であることは伏せます』 続けて、いくつか注意事項が送られてくる。 予約は一般客として行うこと。 送迎もホテル側には依頼しないこと。 随行員はつけないこと。
last updateLast Updated : 2026-08-22
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第84話 接客は悪くありません

 土曜日の昼過ぎ。 電車を降りると、空気が少し冷たかった。 都心ではもう春らしい日が増えているのに、山あいの温泉地にはまだ冬の名残がある。駅前から見える山の斜面には薄く霞がかかり、通りの向こうには湯気の立つ足湯が見えた。「思っていたより、ちゃんと温泉街ですね」「どういう意味だ」「もっと寂れているのかと思っていました」「宿泊客数が減っていることと、地域全体が死んでいることは別だ」 帝人さんは駅前を見回した。 仕事中と同じ目だった。 旅先へ来た人というより、新しい事業用地を見に来た人に見える。「帝人さん」「何だ」「今日は一般のお客さんですからね」「分かっている」「今、駅前のお店まで採点してませんでした?」「していない。人の流れを見ていただけだ」 それを採点というのではないだろうか。 翠嶺ホテルまではタクシーで十五分ほどだった。 温泉街の中心から少し離れ、川沿いの道を上っていく。 やがて木々の向こうに、大きな瓦屋根が見えた。「あれですね」 正面玄関まで来ると、私は少し意外に思った。 確かに古い。 外壁にも年月を感じるし、自動ドアですら最新とは言い難い。 けれど、荒れてはいなかった。 玄関脇の植木はきれいに整えられ、石畳には落ち葉ひとつない。古い木製の看板も、文字が消えないよう丁寧に手入れされている。 タクシーが止まると、すぐに紺色の制服を着た男性が出てきた。「いらっしゃいませ。翠嶺ホテルへようこそお越しくださいました」 年齢は五十代くらいだろうか。 ドアを開けると、まず私たちの顔を見て、それから足元と荷物へ視線を移す。「お荷物、お預かりいたします」「あ、大丈夫です」 私が小さな旅行鞄を持とうとすると、「坂道で少しお疲れではございませんか。館内までは
last updateLast Updated : 2026-08-24
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第85話 私まで偽名なんですか

第66話 私まで偽名なんですか 自分の部屋へ入って荷物を置いたあと、私はコートも脱がないままスマホを手に取った。『帝人さん。少しお話があります』 送って一分もしないうちに、『俺の部屋へ来い』 と返ってくる。 隣室なのだから早い。 廊下へ出て呼び鈴を押すと、すぐに扉が開いた。「どうした」「受付のことです。帝人さんが偽名なのは分かりますよ。『皇帝人』で予約したら、お忍びになりませんから。でも、どうして私まで名字が変わってるんですか? 私、受付で『水城小春様』って呼ばれて初めて知ったんですよ」 帝人さん――このホテルでは『久世直人』ということになっている人は、悪びれる様子もなかった。「俺だけ名前を変えて、お前の本名を残す理由がない。倉橋小春という名前から俺との関係へ辿られる可能性が少しでもあるなら、最初から消しておいた方がいい。身元を伏せると決めた以上、中途半端に情報を残す必要はない」「ホテルの従業員さんが、宿泊客の名前をわざわざ調べるとは思えませんけど……そこまで徹底するなら、せめて本人には先に教えてください。知らない名字で呼ばれて、私、一瞬反応できなかったんですよ。帝人さんが私の方を見たから、『あ、これ私なんだ』って分かったんですから」 そこでようやく、帝人さんが少し考えた。「榊原から共有されていると思っていた。それは俺の確認不足だ。悪かった。次からは事前に伝える」 素直に謝られると、それ以上責める気もなくなる。 ただ、一つ引っかかった。「……次からも私に偽名を使わせる前提なんですね」「必要なら使う。今回、名字を変えた判断自体に問題があったとは思っていない。説明が抜けていたことは直す」「そういうところは変わりませんね」 私はた
last updateLast Updated : 2026-08-25
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第86話 最上位客室にも問題はあります

 しばらく帝人さんの部屋を見たあと、今度は私の部屋も確認することになった。「最初から比較するつもりだったんですよね?」「そのために価格帯を分けた。最上位客室に追加料金を払うだけの差があるのか、客側から見なければ分からない」「最初は私を最上位客室に泊めようとしてましたけど」「あれでも比較はできる」「帝人さんが私の部屋を見に来るつもりだったんですか?」「当然だろう」 それなら最初から自分が泊まればよかったのではないか。 そう思ったけれど、また話が長くなりそうなので黙っておいた。 隣の私の部屋へ移る。 こちらも和室を中心とした広い客室で、窓から同じ山並みが見えた。専用の露天風呂こそないものの、窓際には椅子と小さなテーブルが置かれ、二人で泊まっても十分な広さがある。 帝人さんは入口で一度全体を見回し、それから窓、空調、洗面所へ順番に視線を移した。「どうですか?」「客室面積の差に対して、料金差が大きすぎる」 早かった。「最上位客室は露天風呂と独立した寝室がある。景観も少し良い。だが、基本設備の水準はほとんど同じだ。空調も操作盤も同年代。水回りも新しくない。これでは上位客室から最上位客室へ客を上げる理由が弱い」「でも、露天風呂があるなら泊まりたい人はいるんじゃないですか?」「いる。だから商品として成立していないとは言っていない。ただ、最高価格帯の商品なら『露天風呂がついている』だけでは足りない。ここより安い宿でも客室露天風呂は珍しくない。価格差を取るなら、その部屋でなければ得られない価値が必要だ」 帝人さんは窓辺に立ち、外を見た。「逆に、この部屋は悪くない。広さも景観も十分で、今の価格なら最上位客室より納得しやすい」「私、こっちでよかったです」「俺はよくない」「どうしてですか」「小春に一番いい部屋を使わせるつもりだった」「まだ言ってるんですか」 仕事の話をしていたはずなのに、そこ
last updateLast Updated : 2026-08-26
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第87話 一般のお客様らしくしてください

 部屋を出た私たちは、まず二階のラウンジへ向かった。 大きな窓に面したスペースには低いソファが並び、宿泊客が自由に使えるようになっている。壁際には小さな本棚があり、観光案内だけでなく地元の歴史や写真をまとめた本も置かれていた。「ここ、いいですね」 窓際に立つと、先ほど部屋から見たものとは少し違う角度で山が見える。「席数に対して利用者は少ない」「また数字ですか?」「見れば分かる。これだけ面積を使っているなら、ラウンジ自体に客を呼ぶ理由を作るべきだ。景色を見るだけの場所なら広すぎる」 帝人さんはそう言いながら、テーブルの配置まで見始めた。 その後も売店、大浴場へ続く廊下、宴会場の前と順番に回る。 売店では地元の菓子や酒が多く並んでいたが、帝人さんは商品より棚の高さや客の流れを見ていた。「入口近くに土産物を集めすぎている。奥まで客が入らない」「普通のお客さんはそこまで見ませんよ」「普通の客として来ているが、普通の客になるために来たわけじゃない」「お忍びなんですから、見た目だけでも普通にしてください」 私が言っても、帝人さんはあまり聞いていない。 次に足を止めたのは、館内中央にある案内板の前だった。 大浴場、宴会場、食事処、売店。 建物を増築してきたせいなのか、矢印がいくつも重なり、初めて来た人には少し分かりにくい。 帝人さんは案内板を見て、それから廊下の先を見る。 また案内板へ戻る。 今度は少し離れて見る。「帝人さん」「この表示だと、客室棟から来た人間は大浴場と食事処の方向を一度取り違える可能性がある。増築部分と旧館で廊下の基準が――」「声に出さなくていいです」 私は小声で止めた。 けれど帝人さんは案内板の横へ移動し、今度は非常口の表示まで見始めた。 客室に置いてあった館内図までスマホで確認している。 怪しい。 どう見ても、旅
last updateLast Updated : 2026-08-27
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第88話 料理だけなら残せます

 夕食は一階の食事処だった。 個室ではなく、半個室のように低い仕切りで区切られている。周囲の気配は感じるけれど、隣の会話までは聞こえにくい。 席へ案内されると、窓の外には庭の灯りが見えた。「いい雰囲気ですね」「照明の使い方は悪くない」「まずそこを見るんですね」 帝人さんは何も答えず、座ったまま店内を見渡した。 さっきまで手を握ったことで妙に静かになっていた人とは思えない。 仕事へ戻るのが早い。 やがて、年配の女性従業員が料理を運んできた。「久世様、水城様。本日は地元のものを中心にご用意しております」 私は一瞬だけ遅れてから、自分のことだと気づく。 最初に並んだのは小さな前菜だった。 山菜の白和え。 川魚の甘露煮。 薄く切られた根菜の酢漬け。「こちらの山菜は、近くの農家さんから今朝届いたものです。毎年この時期になりますと、最初に採れたものを分けてくださるんですよ」 そう説明しながら、女性は料理を置いていく。「長いお付き合いなんですか?」 私が聞くと、嬉しそうに笑った。「もう三十年以上になります。今は息子さんの代になりましたけれど、お父様の頃からですね」 料理そのものだけでなく、その背景まで自然に話してくれる。 女性が去ったあと、私は山菜を口へ運んだ。「おいしい」「味付けは強くないな」「素材の味を残してる感じです」 帝人さんも一口食べる。 少し考えるように箸を止めた。「悪くない」「帝人さんの『悪くない』は、かなり褒めてますよね」「普通に評価しているだけだ」 次に運ばれてきた椀物には、地元で作られたという器が使われていた。 少し厚みがあり、手に持つと温かさがゆっくり伝わってくる。「この器、きれいですね」 私が言うと、先ほどの女性がう
last updateLast Updated : 2026-08-28
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第89話 同じ場所に戻ってくる理由

 夕食を終えて食事処を出ると、館内は昼間より静かになっていた。 窓の外はすっかり暗く、庭の石灯籠に淡い明かりが灯っている。昼間は少し古く見えた廊下も、夜になると木の色が深くなり、不思議と落ち着いて見えた。「雰囲気、変わりますね」「照明で古さが目立たなくなっている」「そういう言い方します?」「事実だろう。ただ、この時間帯の見せ方としては悪くない」 褒めているのかいないのか分かりにくい。 私たちはそのままラウンジへ向かった。 昼間は空席の多かった場所に、今は何組かの宿泊客がいる。お茶を飲んでいる夫婦もいれば、窓辺で庭を眺めている人もいた。 隅では、昼間に見かけた年配の夫婦が並んで座っていた。 夕食の時、奥さんの山椒を抜いてもらっていた二人だ。「こちら、いつものお茶でございます」 従業員が二人の前へ湯呑みを置く。「あら、頼んでないのに」「お食事のあとはこちらにいらっしゃると思いまして。ご主人様には少し濃いめにしております」「よく覚えてるねえ」 ご主人が楽しそうに笑った。「何年お越しいただいていると思っているんですか」 従業員も笑い返し、一礼して離れていく。 私は思わずその姿を目で追った。「また覚えてましたね」「担当者個人の記憶なのか、宿泊履歴として共有されているのかは確認したい」「帝人さんは本当にそこなんですね」「継続できないサービスなら、事業の強みとしては弱い」 そう言いながらも、帝人さんも夫婦の方を見ていた。 少しして、奥さんがこちらに気づいた。「お二人も初めて?」 突然話しかけられ、私は少し驚いた。「はい。今日初めて来ました」「そうなの。私たちはもう二十年以上よ」「そんなに?」 思わず聞き返すと、ご主人が笑った。「毎年一回だけだけどね。結婚記念日の頃に来るん
last updateLast Updated : 2026-08-29
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