翌日の午前中。 私はいつものように帝人さんの執務室へ入り、会議前に確認してほしい資料を机へ置いた。「こちら、経営企画部からです。修正版が届いてます」「ああ」 帝人さんが資料を開く。 私はその横から、修正箇所を指した。「前回話してた人員配置のところ、ここです。夜間の負担試算も追加されてます」「見せろ」 帝人さんが少し身を乗り出した。 その瞬間。「……近いです」「何がだ」「帝人さんがです」 帝人さんが止まった。 私は自分でも何を言っているんだと思った。 距離なんて、たぶん昨日までと同じだ。 机の上の資料を二人で見る時は、いつもこれくらい近い。 なのに今日は、妙に気になる。「昨日までこの距離だっただろう」「今日は近いんです」「距離は変わっていない」「分かってます」「なら何が問題だ」「私の問題です」 勢いで答えると、帝人さんが黙った。 まずい。 余計に意味が分からない返事をした。「……体調が悪いのか」「違います」「頭痛?」「ありません」「熱は」「ないです」「なら、なぜ急に距離を気にする」 そこを聞かないでほしい。「今日はそういう日なんです」「昨日も聞いたな、それ」「便利なんです」「説明になっていない」 帝人さんは納得していない顔をしている。 でも、それ以上近づいてはこなかった。 むしろ少しだけ身体を引く。「これでいいか」「……はい」「本当に?」「大丈夫です」 何だろう。 その素直さまで気になる。 私は資料へ視線を
Last Updated : 2026-09-20 Read more