皇ビジネスパートナーズから評価制度に関する資料が届いたのは、翌日の午後だった。 部署ごとの評価項目、管理職査定、問題発生時の報告フロー。それぞれを単体で見れば、特別おかしな制度には見えない。 売上目標の達成率。 利益率。 顧客満足度。 業務上の事故や苦情の発生件数。 どこの会社にもありそうな項目が並んでいる。 でも、前回までに見つかった資料と一緒に並べると、引っかかる部分があった。「帝人さん、これじゃないですか?」 私は管理職評価のページを開いた。「事故や重大な苦情が発生すると、部署評価から減点されるようになってます」「ああ」「しかも、正式報告された件数がそのまま評価に入るんですね」 例えば、同じような小さな設備不具合が三件起きたとする。 三件すべてを正式に報告すれば、部署側には三件分の記録が残る。 でも現場で処理し、本部へ上げなければ、その数字には入らない。「これって……」 私は別の資料も確認した。 顧客対応の評価も似ている。正式な苦情として登録された件数は評価対象になるが、「問い合わせ」や「現場対応完了」に分類されたものは対象外だった。「報告すると、数字が悪くなるんですね」「そういう設計だな」 帝人さんは資料を見ながら、淡々と答えた。「でも、問題を早く見つけて報告した人も減点されるんですよね?」「ああ。原因が本人にあるかどうかはほとんど区別されていない」「それなら、自分から言いたくなくなりますよ」「そうなる」 私は少し黙った。 誰かが「隠せ」と言ったわけではない。 でも。 正直に報告すれば、自分の部署の評価が下がる。 管理職なら、自分の査定にも響く。 逆に、現場だけで処理してしまえば、評価上は何も起きていないことになる。「&
Last Updated : 2026-10-30 Read more