「まず、相馬さんが持ってきたのは正式な提案資料じゃありませんでした」 私は帝人さんの前に座り、最初から説明した。「私向けに整理した資料で、利用者の声とか、現場負担が減ったとか、そういう内容が中心です」「費用は」「入ってません」「移行コスト」「それも」「保守費用」「ありません」 帝人さんの表情が少しずつ険しくなる。「で?」「私が良いと思えば、帝人さんに何か言うかもしれないと思ってたみたいです」「……そうか」 静かだ。 こういう時の方が怖い。「でも、ちゃんと断りましたからね」「何を」「そういう資料だけ見せられても判断できませんって。帝人さんに出す正式資料と同じものをくださいって言いました」「それで?」「分かったって」「小春」「はい」「なぜ先にそれを言わない」「何をです?」「小春が自分で処理したことだ」「説明の途中だったからです」 帝人さんは一度目を閉じた。「帝人さん」「怒っている」「分かります」「小春にではない」「それも分かってます」「ならいい」 よくない。 顔が全然よくない。「でも、相馬さんを呼びつけたりしないでくださいね」「なぜだ」「私が断ったからです」「小春が断れたかどうかは関係ない」 やっぱり。「この前も同じこと言ってましたよね」「ああ」 帝人さんは机の上へ指を置いた。「小春が対応できなかったから腹を立てているんじゃない。小春を俺への経路として扱ったことが気に入らない」「……はい」「しかも今回は
Last Updated : 2026-09-25 Read more