「怖がらせるために話しているわけではない」 しばらく考えた末、帝人さんがそう言った。「それは皆さんも分かっていると思います」「なら問題ないだろう」「意図がなくても、怖いものは怖いんです」「どうしろと言う」「まず、悪い報告をした方を責めるような聞き方をしないことです」「俺は報告した人間を責めていない。問題を起こした者と、放置した者を追及している」「誰が追及されるのか分からないから、報告する方は緊張するんです」 帝人さんには、隠さず早く報告することが最善だと分かっている。 けれど報告する側は、その先で何が起きるのかを恐れている。正しい道が見えている人ほど、そこへ踏み出せない人の気持ちを見落としやすいのかもしれない。「では最初に、報告したこと自体は評価すると伝える」「それはいいと思います」「問題の責任は別に問う」「そこまで優しくしろとは言っていません」「優しくする必要もない」 帝人さんの中で、どうやら話がまとまったらしい。「相馬」「は、はい」「今の意見は有用だった。報告したことは評価する」「ありがとうございます」「だが俺を怖いと言った根拠は、後で詳しく提出しろ」「帝人さん」「改善に必要だ」「書面ではなく、まず榊原さんに聞いてもらいましょう」「なぜ俺へ直接言わない」「帝人さんが怖いという相談を、帝人さん本人にはしにくいからです」「……分かった」 相馬さんの肩から、目に見えて力が抜けた。 千鶴様は今度こそ声を上げて笑った。「帝人。お前は会社を動かす頭はあるが、人の口を開かせる技術はないようだね」「必要なことは報告させている」「命令して吐かせるのと、自分から話せるのは違うよ」「結果は同じだ」「結果だけ見ているから、途中で人が潰れる」
Last Updated : 2026-08-04 Read more