「うわぁ、あのお店可愛いー!」並ぶ店の中から一軒の可愛らしい店に興味を抱いたふりをして、その周辺の情報を目に焼き付ける。店と店の間には、薄暗い路地があるが、こちらから見ても特に荒れている様子はなく、清潔そうだ。あの道は暗いだけで治安は悪くない、つまり逃走にうってつけの場所だろう。「あのお店に寄りますか?」私の様子に、右隣を歩いていたメアリーが、にっこりと微笑む。「寄るならお申し付けください。まずは俺が安全確認をして参ります」そして左隣を歩いていたジャンが、お決まりのセリフを真顔で口にした。今日は以前ユリウスに外出を願った日だ。当然、ここには私の計画通りユリウスはいない。代わりに、メアリー、ジャン、そして4人の騎士たちが私を囲っていた。何と仰々しい集団なのだろう。しかし、作戦の為ならこれも仕方あるまい。私はあくまで自然に街を歩きながら、脱出計画に必要なものを一つ一つ得ていく予定なのだ。その必要なものとは、フランドル公爵邸周辺の詳しい情報だった。仮に私がフランドル公爵邸から脱出できた場合、まずは最短で隣町ユランに移動する必要がある。脱出に気がついた公爵邸の者たちから逃れる為に。「…いや、あのお店はいいかな」メアリーとジャンの申し出を断り、また街へと視線を向ける。次に目に入った花屋の裏には、どうやら奥行きがあり、知らない道がありそうで…「ステラ様、あそこの花屋が気になりますか?寄りますか?」「寄るならお申し付けください。まずは俺が安全確認をして参ります」「…」先ほどからこれなのだ。私がどこかを見るたびに、メアリーが私に問いかけ、ジャンが安全確認をしようとする。まあ、2人とも仕事だから仕方ないのだけれど。だが、私は何度も言うが素性の知れないただの子どもだ。こんな貴族…それも重鎮のような扱いはやめてもらいたい。「…はぁ」「お疲れですか!ジャン!」「ああ」この状況に思わずため息を吐くと、メアリーは血相を変え、大慌てでジャンの名を呼んだ。すると、ジャンは淡々とメアリーに返事をし、私の目の前で跪いた。「失礼します。ステラ様」「え…って、わぁ!?」そして気がつけば、私はジャンに何故かお姫様抱っこをされていた。「ななななんで!?」恥ずかしくてジャンの腕の中でジタバタと暴れてみるが、びくともしない。屈強すぎる!
Dernière mise à jour : 2026-08-18 Read More