All Chapters of 悪女の代役ですが、殺される前に逃げようと思います!〜皇太子と次期公爵様がなぜか離してくれません!〜: Chapter 11 - Chapter 20

71 Chapters

11.お誘い

脱走しようとしてから、数日。私は毎日、誰かに監視されていた。…といっても、四六時中誰かが私に張り付いているというわけでもなく、近くにいる、といった感じだ。私の部屋の外に必ず護衛騎士がいるのもそういった理由からだった。前までは、こんな命を狙われている重鎮みたいな扱いなど受けていなかったというのに。…命を狙われているのは間違いないんだけど。「昨日のユリウス様との剣術のお稽古はいかがでしたか?」昼食を食べ終えた昼下がり。いつものようにソファでくつろぐ私に、メアリーがストロベリーティーを淹れてくれる。そして彼女は、にっこりと笑いながら慣れた手つきで、それを私の目の前の机の上に置いた。「…んー。楽しかったかな。ユリウス、強いし」「そうでしょう!そうでしょう!ユリウス様はとてもお強いんです!かっこよかったでしょう!」昨日の剣術の稽古の感想を述べると、メアリーが本当に嬉しそうに笑う。ユリウスは時間を見つけては、よく私に剣術の稽古をつけてくれていた。この帝国内で、ユリウスの剣術の腕前を知らない者はいない。どんな先生よりも優れた能力を持っていることは間違いないだろう。その為、ユリウスが剣術の稽古に現れると、いつもヴィル先生からユリウスへと剣術の先生が変わっていた。ユリウスが剣術の先生になる時は、基本、模擬戦をしながらだ。私はただ剣を振るうだけよりも、目まぐるしく状況が変わる模擬戦の方が好きなので、ユリウスとの稽古はヴィル先生の稽古よりも好きだった。リタの代役を務めていた時も、ユリウスとのいつもの口論の末に模擬戦にまで発展することもよくあった。その時も、密かにユリウスとの模擬戦を楽しんでいたものだ。もちろん表向きは、憎まれ口しか叩いてなかったが。「ステラ様もご存じだとは思いますが、ユリウス様は騎士団に最年少で所属を認められた天才
last updateLast Updated : 2026-08-06
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12.花祭りへ

ここ、ミラディア帝国には、魔法薬に必要な材料の一つ、魔法花と呼ばれる種類の花が、春から夏にかけてたくさん咲く。魔法花の収穫、販売は我が帝国の重要な産業の一つであり、ユリウスに誘われた〝花祭り〟とは、そんな魔法花の収穫を祝うお祭りのことであった。その花祭りに、私は今、なぜかユリウスと来ている。「花祭りに来たことはあるのか?」「まぁ」人混みの中、私と離れないように、私と手を繋いで歩いているユリウスを、私は見上げる。いつもの上等な服とは違い、目立たないように平民の格好をしているユリウス。しかし、顔はそのまま隠そうともしていない為、そのあまりにも浮世離れした美しい見た目に、どこへ行っても周りの視線を集めまくっていた。これでは、ただの平民の格好をしたユリウスである。この状況に、街行く人たちは、あのユリウス・フランドルだとすぐに気づき、遠目からチラチラと見たり、見間違いではないか、とわかりやすく二度見をしたりと、様々なリアクションをユリウスに向けていた。…本当に目立ちすぎだ。「ユリウスは花祭りに来たことあるの?」「ああ。この祭りは街の情勢を知る為にもいい機会だからな。行ける年は行けるようにしている」「ふーん」相変わらずの鉄仮面で私の質問に応えるユリウスに、私は何となく相槌を打つ。花祭りを楽しむよりも情勢視察のために参加するとは、なんともユリウスらしい回答だ。ちなみにリタは、ユリウスとは正反対に、花祭りを目一杯楽しんでいた。情勢が…など、そんなものに一切興味を抱いていなかった。好きなように遊び、好きなように食べ、好きなように買い物をしていたらしい。リタの外出中には、もちろん私の外出は許されない。その為、実を言うと毎年ある花祭りに行けたのは、孤児院にいた8年前が最後だった。私は久しぶりの花祭りに、内心とてもワクワク
last updateLast Updated : 2026-08-07
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13.感謝と贈り物

「ユリウス様、ステラ様、ただいま戻りました」程なくして、両手にいちご飴とわたがしを持った大男、ジャンが私たちの前に現れた。大男に何とも可愛らしい食べ物たちは、正直、全く似合っていない。だが、ジャンは好き好んでこの二つを持っているわけではなかった。主人であるユリウスに言われて仕方なく持っているのである。このミスマッチな可愛らしさは不本意に違いない。「どうぞ」ジャンはそう言うとユリウスにではなく、私にいちご飴を渡した。あくまでもいちご飴を頼んだのは、私の隣で無の状態で立っている男なのだが、ジャンは私が食べたかったものだと理解していたらしい。「ありがとう、ジャン」「いえいえ。いちご飴の後はこちらのわたがしをお召し上がりください。からあげはできたての方がいいかと思いまして、ステラ様が食べるタイミングで買いに行こうと思っています。あ、ですが今食べたい場合はすぐにお申し付けくださいませ。すぐに買いに行きますので」「あー。うん」丁寧に説明するジャンに、私はいちご飴を受け取りつつ、曖昧な返事をしてしまった。至れり尽くせりで、なんだか申し訳ない。どう考えても騎士のする仕事ではないのに。そんなジャンと私のやり取りを、なぜかユリウスは誇らしげに見ている。「どうだ?フランドルの者はきちんとしているだろう?」と言いたげな目だ。その後、私はなるべく一つの店をじっと見ることをやめた。そうしなければユリウスが全部買い与えようとするからだ。そんなにも食べられないし、物もいらない。せめて自分の為にお金を使ってくれ、ユリウス。*****そんなことを思いながらも、私はユリウスとなんだかんだいって花祭りを楽しんでいた。いちご飴、わたがし、からあげでは、お腹いっぱいにはならなかったので、追加でパンケーキまで食べた。街中の至る所でやっているショーや広場で披露されている歌なども鑑賞することができ、本当に充実した時間を過ごせた。「あー!楽しかった!」日も暮れ、いよいよ帰る雰囲気になってきた頃。ふとそう言い、視線を向けた場所に、興味深い店を見つけた。花をモチーフにした守護石のお店だ。守護石とは、魔法使いが古代の魔法と同じ手順で、守護の魔法をかけている石のことだ。もう失われている技術なので、本当に危険な時に守護をしてくれるわけではないが、一種の願掛けのような意味で
last updateLast Updated : 2026-08-08
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14.守護石 sideユリウス

「いらっしゃい…あぁ、これはこれはユリウス様」古びた店の扉を開けた俺を見て、店主である老婆の魔法使いがこちらに深々と頭を下げる。それから「本日はどういったご用件で?」とにこやかに俺に近づいてきた。「これを大事な人から貰ってな。肌身離さず付けるつもりだから壊れないようにして欲しい」俺は懐から上等な布で作られた小袋を出し、そこからさらに、昨日ステラから貰った守護石のピアスを取り出す。「守護石に守護の魔法ですか?」「ああ」「かしこまりました」俺を一瞬だけ不思議そうに見ていた魔法使いだったが、すぐに切り替えて店の棚の物色を始めた。何を不思議に思ったのだろうか。「…大変不躾な質問ですが、大切なお方とは女性ですか?」棚から目を離さず、恐る恐るといった感じで、魔法使いがそんなことを口にする。「そうだが。それがどうした?」魔法使いの質問の意図はわからなかったが、俺は淡々とそう答えた。ステラは女なので、魔法使いの質問は正しい。まあ、女性というより、少女だが。魔法使いはそんな俺に「まあ!そうですか!ついにですか!いやあ!そうですか!」とどこか興奮気味に反応していた。…全く魔法使いのリアクションの意味がわからない。異様にテンションの高くなった魔法使いは、どこか嬉しそうに棚から小瓶をいくつか取り出し、こちらに戻ってきた。「こちらが守護の魔法薬でございます。右から順に効果が強くなっております。どの強さをお選びになりますか?」すぐ側にあった小さなテーブルをこちらに近づけ、魔法使いが薬を並べていく。俺はそれをじっと見た後、迷わず1番効果が強いと言われた
last updateLast Updated : 2026-08-09
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15.大切な存在 sideユリウス

太陽がゆっくりと沈み、空を茜色に染める。俺はそれを横目に、魔法店からまっすぐ公爵邸へと帰った。そして、ステラの元へ行くために、一階の外へと繋がる渡り廊下を歩いていた。どうやらステラは今、外の騎士団鍛錬場で、剣術の稽古を受けているらしい。そう先ほど偶然出会ったメアリーに教えてもらった。「…はっ!」カンッ!とステラの声と共に、木刀と木刀がぶつかる音が響く。音の方へと視線を向ければ、そこには鍛錬服を身にまとったステラが、真剣な表情で木刀を振るっていた。大人の男を相手に怯むことなく、ステラが鋭い一撃を繰り出していく。それを剣術の先生であるヴィルが、軽くいなしているようにも見えるが、表情はあまり穏やかなものではなかった。おそらく、動きほど余裕はないのだろう。続くステラの猛攻に、ヴィルは一瞬だけだが、体勢を崩した。だが、致命的なものではない。すぐにでも整えられるほんの小さな綻びだ。しかし、ステラはその綻びを見逃さず、次の一手を講じていた。剣術を習いたての12歳の少女には見えない動きだ。相手をよく見て、攻撃の手を止めない。だからといって、自分を決して無防備に晒しているわけではない。ヴィルが反撃をしないのでわかりづらいが、ちゃんと反撃された時のことを考え、ステラは剣を振るい続けている。大胆で、それでいて、どこか知略的。ステラの姿に、俺はどこか既視感を覚えた。ーーー誰かと似ている、と。騎士団の…いや、どこかで見た者の動きでも真似ているのだろうか。あれは一体、誰の動きだっただろうか。騎士団、学院の生徒、俺の知っている剣術ができる者の動きを、なぞるように一人ひとり思い浮かべてみる。「…あ」ふと、揺れる絹のような銀髪が脳裏を過ぎる。気の強そうな紫の瞳は、いつも鋭く俺を射抜き、大胆不敵に俺へと飛び込んでいた。ーーーリタ嬢だ。自分よりも大きな男に果敢に立ち向かうステラの姿は、かつて共に切磋琢磨していたリタ嬢と重なった。しばらく剣を振るうリタ嬢を見ていなかったので忘れていたが、リタ嬢もこんな風に剣を振るっていた。小さな体ではあったが、逆にそれを利用して早く動いたり、相手の動きを読んで次の一手を打ったりする、それがリタ嬢の剣術のスタイルだった。純粋な力でこそ俺には勝てないリタ嬢だったが、そうやって隙や勝ち筋を見つけ、何度か俺からも勝ち
last updateLast Updated : 2026-08-10
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16.花畑と噂話

sideステラ花祭りから2週間。私は未だに、ここフランドル公爵邸から出られそうにない。ユリウスと過ごす時間も何故か徐々に増えつつあり、もちろん使用人や護衛騎士たちの監視の目もあり、今の状況では、自分の力だけで逃げ出すことはほぼ不可能だった。そんな私は今、フランドル公爵邸の花畑にいる。本邸から少し離れたこの場所は、本当にフランドル公爵邸内なのかと疑いたくなるほど自然豊かで美しい場所だった。「ねぇ、メアリー」「はい、何でしょう」花冠を作りながら私は、傍に控えていたメアリーに声をかける。「さっきここに来るまでに他のメイドたちが話していたのって…」「ああ!その話でございますね!」私の問いかけに、メアリーは、いつものように明るい表情を浮かべた。相変わらず愛らしいメアリーには、背後に広がる花畑が本当によく似合っている。「リタ様とロイ様のことでございますよね」「うん」ここに来るまでに、たまたま耳にしたある話。その話とは、まさにリタとロイの話である。メアリーは自分を興味深く見つめる私に、表情豊かに2人の話を始めた。約3ヶ月前、このミラディア帝国の皇太子ロイがルードヴィング伯爵家のリタと正式に婚約をした。2人の婚約は非常に大きな出来事で、ここ数ヶ月、帝国の話題の中心は婚約したての2人だ。そしてここからが肝心なのだが、婚約してからの2人はどうも様子がおかしいらしい。「リタ様は性格の悪い悪女だと有名ですが、それと同時に文武両道、才色兼備、非の打ち所のない聡明なご令嬢でもあると有名でございました。それがここ最近全くそのような姿をお見せにならないのだとか。まだ学院生であるにもかかわらず、学院の授業には一切出ず、宮殿に籠って皇后教育に励んでいらっしゃるらしいのですが、忙しいと仰っている割には、パーティーや舞踏会、お茶会には必ず参加し、演劇鑑賞、ショッピングなど遊んでいらっしゃる姿も多く見られているのです。この間の花祭りの時も使用人といつまでも遊んでいらしたとか」止まることなく、怪訝そうに話を進めるメアリーの話に、「やっぱり」と心の中で頷く。結局、今まで世間が評価してきた〝リタ〟は私なのだ。そんな私が消えてしまえば、やはり本物のリタの評価はそうなってしまうだろう。もう少しボロが出ないように伯爵辺りがいろいろと手を回すだろうと思っていたが、も
last updateLast Updated : 2026-08-12
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17.想定外の遭遇

ーーー公爵邸にいることも悪くない。私はそんなことを思いながらも、両腕いっぱいに花びらや花を集めた。「よーし。えいっ!」そしてそれを空へと、思いっきり投げた。色とりどりの花びらや花がひらり、ひらり、と青空を背景に舞っている。その景色は鮮やかで美しく、いつまでも見ていたいと思えるものだった。そんな素敵な花びらたちのシャワーを浴びながら、私はその場でくるくると回ったり、ステップを踏み、舞ってみる。リタの代役の時に散々見た舞姫たちの真似だ。「メアリー!歌って!」「えぇ!?」ここに足りないのは音楽だ!とメアリーに笑顔で歌うことを頼む。すると、メアリーはまさかそんなことを頼まれるとは夢にも思っていなかったようで、心底驚いた表情を浮かべた。「きゅ、急にそんなこと言われましても!ど、どうすれば!」「何でもいいよ!好きに歌って!」全て落ち切ってしまった花びらたちを、私は再び集め始める。そしてメアリーが「わ、わかりました。では、僭越ながら!歌います!」と恥ずかしそうに宣言したところで、もう一度思いっきり花びらたちを空へと投げた。可愛らしいメアリーの歌声に合わせて、私はステップを踏む。踊りなど社交ダンスくらいしかしたことはない。その為、私の舞は、決して上手いものではないだろうが、それでも別によかった。「リタ」聞き覚えのある柔らかい声が、かつての私の名を呼ぶ。私はステラだ。決してリタなどではない。だが、まるで習慣のように、私は思わずその声の方へ振り向いた。するとそこには、こちらを驚いた様子で見つめているロイがいた。 「…っ」驚きたいのはこちらである。なぜ、公爵邸から離れたこんな場所に皇太子であるロイがいるのだ。客人が迷い込むような場所ではないはずだ、ここは。「ロロロロロロイ殿下!」メアリーはロイの突然の登場に、大変慌てた様子で、その場で深々と頭を下げた。「君の名前はリタなのかい?」そんなメアリーを一瞥して、ロイが私の元へとやって来る。先ほど私がつい癖で〝リタ〟に反応してしまったからそう言っているのだろう。「…リタ?」私は咄嗟に〝リタ〟など知らない、と困ったような表情を浮かべた。「ああ、違うんだね。ごめんね、よく似ていたから間違えてしまったよ」そんな私にロイが甘く笑う。天使のように美しい見た目のロイと、その後ろに
last updateLast Updated : 2026-08-13
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18. 愛した彼女はどこかへ消えた sideロイ

「我が家の離れにある花畑なのですが、この時期には様々な種類の花が咲くので、今が見頃なのですよ」仕事先であるフランドル公爵邸にて。フランドル公爵とある程度仕事の話を終え、宮殿に帰ろうとした僕に、ユリウスによく似たフランドル公爵がそう言った。別にこれといって花が好きだとか、自然が好きだとかはない。…が、この時はなんとなく、少しだけ見てみようかな、と思った。そうして向かった先で、僕はステラという少女に出会った。「お断りします」大きな緑の瞳が、迷惑そうにこちらを射抜く。可愛らしい見た目の幼い少女は、皇太子である僕に対して怯むことなく、まっすぐに自分の意思を伝えた。その姿が、なぜか僕の愛した婚約者の姿と重なる。絹のように細く、柔らかな銀髪をなびかせ、その紫の瞳を細める彼女。時には僕に愛を囁き、時には僕に興味さえ示さない。わがままで傲慢。それでいて、聡明な不思議でチグハグな彼女に僕は気がつけば惹かれていた。彼女にただ愛を囁いても、きっと彼女はそれを受け取らない。だから僕は彼女に婚約の契約を提案したのだ。婚約をしてしまえば、彼女はもう僕のものだ。そこからじっくり愛を育めばいい。ーーーそう思っていたのに。婚約をした彼女から僕が愛していた全てがなくなった。彼女はもうなんの面白みもない、ただのわがままで傲慢なだけの令嬢になってしまった。「…何ですか」何も言わずにただじっと僕に見つめられ続けることに、耐えられなくなったのだろう。ステラが気まずそうに、こちらを睨む。やはり、似ている。僕が愛したリタに。リタの年齢は18歳だ。だからこそ、帝国中の18歳前後の女性の素性を調べているというのに。今まで見たどの女性よりも、ステラはリタだった。「…いいや、何でもない」にっこりと誰もがため息を漏らす美しい笑みを浮かべても、ステラは「あはは」と乾いた笑い声を出すだけだった。*****揺れる馬車内から、遠ざかっていくフランドル邸を一瞥する。それから僕は、目の前の座席に行儀良く座る僕と同年代くらいの青年へと視線を向けた。「ピエール」「はい」青年、ピエールが、僕に静かに返事を返す。そして彼は、その暗い青のふわふわの髪の奥から、黒い瞳で、僕をまっすぐ見つめた。彼は幼い頃から共にいる、いわば僕の右腕のような存在だ。「今日の18歳前後の女性
last updateLast Updated : 2026-08-14
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19.彼女ではない人 sideロイ

「お帰りなさいませ!ロイ様!」 帰宅した僕の姿を見つけ、美しく艶やかな女性が嬉しそうにこちらに歩み寄ってくる。 絹のように細く輝く銀髪も、意志の強そうな紫の瞳も、整った顔立ちも、確かに綺麗なのだろうが、何の魅力も感じない。 かつては、愛おしいと思える瞬間が確かにあったというのに。 リタは婚約してからというもの、暇さえあれば、こうしてすぐに僕に会いに来て、ずっと僕の傍から離れようとしなかった。 まだここに住んでいない彼女だが、もうほぼ住んでいるくらいには宮殿に入り浸っている。 「ああ、ただいま。僕の愛しいリタ」 僕はすぐそばまで来たリタの手を取ると、そこに唇を重ねた。 そんな僕に彼女は今日も愛おしそうにその瞳を細め、頬をほんのりと紅潮させた。 まるで僕を愛しているかのように。 いや、このリタは僕を確かに愛しているのだろう。 だが、その愛を僕は望んでいない。 本当に愛されたかった女性ではないからだ。 僕たちの仲睦まじい姿に、たまたまここを通りかかったメイドが「…まぁ!」と黄色い声をあげていた。 こんなにもわざとらしく彼女に愛を囁くのも、彼女との婚約の契約があるからだった。 僕は人前でだけは、彼女を婚約者として大切に扱わなければならない。 僕が愛していたリタになら、それも全く苦ではないが、今の彼女相手では、あまり気が進まなかった。 契約さえなければ、放っておきたい女だ。 「本日はフランドル公爵邸に行かれたのですよね。お仕事の方はいかがでしたか?」 「…そうだね。まあ、いつも通りかな」 そう、仕事の件はいつも通り滞りなく終わった。 …が、それ以外は違う。 脳裏に浮かぶ少女の姿に、口元が自然と緩む。 最後に教えられたあの花畑は、フランドル公爵の言う通り素晴らしいものだった。 まさかあんなにも面白い花の妖精までいるとは思いもしなかった。 ステラという少女の花の妖精が。 「あら?本当にいつも通りだったのですか?」 僕の様子にリタは、興味深そうにこちらを見つめた。 「リタにはバレてしまうんだね」 「ええ、もちろんですわ。愛しの私のロイ様のことですもの。それで一体何があったのですか?」 「ふふ、それはね、公爵邸でね、妖精を見つけたのさ」 「…妖精?」 「ああ
last updateLast Updated : 2026-08-15
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20. 脱出計画第一歩!

sideステラ 公爵家にお世話になり始めて、3ヶ月。アフタヌーンティーを楽しむ私の目の前には、彫刻のように整った男が当然のようにいた。咲き誇る花々を背に、優雅にカップに口をつけているこの男を見て思う。私は一体、この公爵家の…いや、この男のなんなのだ、と。「あのー」「何だ?」「何でユリウスがここにいるの」「学院も騎士団も休みだからだ」訝しげにユリウスを見つめる私を、ユリウスはおかしなものでも見るかのように見つめ返してくる。その目を向けたいのは私の方だ。時間があるからといちいち私のところに通い詰めないで欲しい。何なんだ、コイツは。「あのさ」「まだあるのか」私の投げかけに、ユリウスが今度は何だ?と言いたげな顔をする。「私って一体なんなの」私はそんなユリウスに、ついにずっと抱いていた疑問を口にした。公爵家の血縁の者でもなければ、使用人でもない。何の繋がりも関係もない私が、どうしてここまでよくしてもらえているのか、ここにいることを許されているのか、意味がわからないのだ。「ステラはステラだろ」淡々とそう言ったユリウスに、私は心の中で盛大にため息を吐いた。違う。そういう意味ではない。この鉄仮面の皮を被った天然め。しっかりしてくれ。「…そうじゃなくて。私が公爵家にとって何者なのか知りたいの。何者でもない私がここにいる意味は何?」あわよくば意味を見出せず、この家から出て行かせて欲しい。もうロイとも遭遇してしまった。ルードヴィング伯爵に見つかってしまうのも時間の問題だろう。じっとユリウスを見据え、次の言葉を待つ。すると、ユリウスは自身の顎に指を添えて、冷たい表情のまま、何か思案し始めた。いいぞー。いいぞー。考えるんだ、ユリウス・フランドル。そして今の状況のおかしさに早く気がつくんだ。眉間にシワを寄せ、とにかくユリウスに念を送り続ける。目を覚ませ!と何度も何度も心の中で唱えながら。そうして待つこと数十秒。ユリウスはその形の良い口をやっと動かした。「いもう…いや、そうだな、俺の専属護衛でどうだ」ん?相変わらず無表情なユリウスから飛び出てきた言葉に、私は思わず変な声を出しそうになる。ツッコミどころがこの短いセリフの中に、2つもあった。まずは私のことを〝妹〟とおそらく言おうとしたこと。そして最終的に〝専属
last updateLast Updated : 2026-08-17
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