翌朝。 綾香は朝食の席で、向かいに座る父を見た。「お父様」「うん?」「昨日の話なんだけど」 父がコーヒーカップを置く。「会社の中を見たいという話か?」「ええ」 綾香は頷いた。「できれば、いろいろな部署を見てみたいの」「構わないよ」 父はあっさりと答えた。「それなら、誰かに案内させよう」「ありがとう」 そこまで話したところで、橘が静かに近づいてきた。「会長。本日の予定でございます」「ああ」 差し出された予定表を父が受け取る。 綾香は何気なくその様子を眺めていた。「午前十時から営業部との打ち合わせ、その後――」 橘が予定を読み上げていく。 そして、一つの名前が耳に入った。「十一時より、理央との打ち合わせがございます」 綾香の指先が止まった。 理央。 以前なら、何とも思わなかった。 けれど今は、その名前を聞くだけで身体が強張る。「理央と?」「ああ」 父は特に気にした様子もない。「昨日話していた新しい取引先の件だよ」「……え?」 思わず声が出た。 父が不思議そうに綾香を見る。「どうした?」「その会社のこと、理央が担当しているの?」「ああ。先方から話を持ってきたのも理央だ」「……」 綾香は言葉を失った。 偶然ではない。 少なくとも、あの会社と理央は今の時点ですでに繋がっている。 前世では知らなかった事実だった。「綾香?」「……なんでもないわ」 どうにか笑顔を作る。「昨日、名前を見
Last Updated : 2026-08-13 Read more