足音が、一段ずつ近づいてくる。 綾香は息を呑んだ。(どうしよう……) 理央が戻ってきたのだろうか。 こんなところで見つかったら、何をしていたのか聞かれる。 屋根裏部屋に来ること自体はおかしくない。 ここにあるのは母の遺品なのだから。 けれど、今は夜中だ。 しかも理央が出ていった直後に、自分までここにいる。 綾香は慌てて開いていた箱を閉じた。 その時、扉が開く。「……お嬢様?」 現れたのは橘だった。「橘……」 思わず安堵しかけて、綾香はすぐに表情を引き締めた。 橘は屋根裏部屋を見回し、それから綾香を見る。「こんな時間に、どうされたのですか?」「眠れなくて。お母様のものを少し見たくなったの」「そうでしたか」 橘はそれ以上追及しなかった。 けれど綾香には、別のことが気になった。「橘こそ、どうしてここに?」「先ほど、この辺りで物音がしましたので、念のため確認に参りました」「物音?」「ええ」 橘は辺りを見回す。「物音を立てていらしたのは、お嬢様ですか?」 綾香は一瞬、答えに迷った。「……そうかもしれないわ。さっき箱を動かしたから」「そうでしたか」 橘は静かに頷く。 それだけだった。 けれど綾香の胸はざわついていた。(橘が聞いたのは、本当に私の音?) 自分がここへ来る前。 理央も箱を動かしていた。 橘が聞いたのが、その時の音だった可能性もある。 それなら橘は、理央がここにいたことを知らないのだろうか。 それとも――。 知っていて、自分に確認している
Last Updated : 2026-08-16 Read more