夜明け前、風が家々を揺さぶった。 黒森から押し寄せた吹雪は、眠りかけていたエルダ村を再び白い闇へ閉じ込めた。雨戸の隙間から細かな雪が吹き込み、集会所の床へ粉のように積もっている。屋根の上では重い雪がずり落ち、そのたびに梁が低く軋んだ。 見張りに出ていた兵が、扉を肩で押し開ける。「街道が埋まりました! 東の獣道も倒木で塞がれています」 外套へ張りついた雪が、暖炉の熱を受けて黒い水となって滴った。「王都へ出した伝令は」 カルネアが問う。「昨夜のうちに谷を抜けたはずです。ですが、救援隊が同じ道を戻れるかは…」 兵は言葉を濁し、背後の白い闇を振り返った。 風の咆哮が答えの代わりとなった。 リュシエナは長卓へ広げた紙の端を、燭台で押さえた。 無事だった穀物。王都から持参した保存食。村の各家庭が隠し持っていた豆と干し根菜。病人へ与えられる蜜と岩塩。 汚染された麦を除けば、村全体で食べられる量は予想より少なかった。「通常通り配れば、十日です」 集会所へ集まった村人たちの間に、冷たい沈黙が落ちる。「吹雪は三日で止むかもしれない」 村長が言った。「止まっても、道を掘り起こす時間が必要です」 リュシエナは窓の向こうへ目を向けた。枝が折れる鋭い音が、風に混じって聞こえる。「救援が到着する日を、食糧が尽きる日より早いと決めることはできません。最低でも十五日。可能なら二十日持たせます」「二十日だと?」 健康な男が声を上げた。「半分に減らせというのか。雪かきへ出る者まで食えなくなれば、道も開かんぞ」「全員を同じようには減らしません」 リュシエナは新しい紙を広げた。「年齢、体格、病状、身体を使う仕事によって必要量が違います。まず一人ずつ確認させてください」 銀嶺で備蓄を管理していた頃、配給表に記されるのは家名と人数だけだった。幼い子も、病で動けない者も、妊娠している女も、一つの口として同じ印をつけられた。足りなければ家の中で分けろと言われ、声の弱い者から椀が軽くなった。 それを繰り返してはならない。 集会所の壁際へ机を置き、村人を一世帯ずつ呼んだ。 名と年齢。狼へ変身できるか。熱や吐き気はあるか。妊娠している者、乳を与えている者、古傷や持病のある者。雪かき、屋根下ろし、見張り、狩猟へ出る予定。 リュシエナが尋ね、村の治療師が身体を確
Dernière mise à jour : 2026-07-27 Read More