王家文書庫で見つかった《銀狼が再び生まれれば、黒狼王家の封じられた契約が開く》という一文は、その翌日から調査の中心になった。ガルディオンが月神殿へ銀狼の封印を黙認した時代より、さらに古い記録であり、ヴァルゼインが生まれる前どころか、先王自身がまだ幼かった頃に書かれた報告書だった。問題は、その文中にある《封じられた契約》が何を指すのか、現在の王家文書官ですら即答できなかったことだった。法的な契約を示す文書なら索引に残っているはずなのに、その名に対応する記録が見当たらない。「王家の契約なら、なぜ索引にないのですか」リュシエナが尋ねると、古文書官は困ったように白い眉を寄せた。「契約という語が、現在使われている法的な意味とは限りません。古代語では、盟約、誓約、祭祀、共同統治まで同じ語で記される場合があります」「つまり、名前から探しても見つからない」セイグが言うと、古文書官は頷いた。「ああ。関連する時代を広げるしかない」それからさらに二日、王家文書庫だけでなく、旧祭祀記録、黒曜城建設以前の群れの記録、王都地下神殿から移された石板の写しまで調べることになった。リュシエナは朝から夜まで机へ向かい、銀狼、白銀、月狼、鎮魂、共鳴という語が出るものを一つずつ拾った。ヴァルゼインも王務の合間に加わり、セイグとエルグラドが年代と出所を整理する。古文書は現在の文字と形が違ううえ、同じものを指す言葉も時代ごとに変わるため、わずかな記述を辿るだけでも何冊もの記録を照合しなければならなかった。三日目の午後、最初に見つけたのは王家の記録ではなく、現在の王都より北にあった古い集落から移された石板の写しだった。文字は摩耗し、半分ほど欠けていたが、中央には二頭の狼が向かい合う図が残されている。一頭は黒、もう一頭は銀で、その間には二つの月が刻まれていた。片方の月が欠け、もう片方が満ちる形は、現在の黒曜王家にも月神殿にも残っていない意匠だった。「双月」リュシエナが小さく読むと、古文書官が隣から頷いた。「《双月盟約》です」その名を口にした瞬間、胸の奥の銀狼がはっきり反応した。番拒みの薬がまだわずかに効いているため、ヴァルゼインの黒狼の気配は薄い。それでも銀狼自身が、知らないはずの言葉へ耳を立てるように意識を向けた。懐かしいものを聞いた時のような反応に、リュシエナは胸へ手を当てた。「知
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-09 อ่านเพิ่มเติม