Semua Bab 御曹司の愛は、離婚後に始まった: Bab 41 - Bab 50

100 Bab

第41話

途中、瑛司が電話に出るため席を外した。ほどなくして、晴加も部屋を出ていった。天音が立ち上がって後を追おうとすると、和也に行く手を塞がれた。「何するつもりだよ?人の恋愛にいちいち割って入らないと気が済まないのか?」その言葉に、天音は呆れて笑った。「本当に頭は空っぽなの?私が人の恋愛に割って入った?瑛司と結婚して、同じ戸籍に入ってるのは私よ。そこに書かれてるのは『天音』であって、『晴加』じゃない。横から割って入ってるのは、どう考えても彼女のほうでしょ」和也は鼻で笑った。「瑛司がずっと好きなのは晴加ちゃんだ。あのとき、お前が弱みにつけ込んだんだろ」「私は瑛司に結婚を迫った覚えなんてない。どう考えたって、浮気してるのは瑛司と晴加のほうでしょ」天音はもう和也を相手にせず、振り返って部屋を出た。廊下は長く、角を曲がったところで、晴加の声が聞こえてきた。「瑛司、まだ体が完全に回復してない私のために、このロボットを買ってくれてありがとう」天音はその場でぴたりと足を止めた。息をするのさえ忘れそうになる。あのロボットを買ったのは、瑛司だった。まさか、晴加の不正に手を貸していたなんて。胸の奥から、何かがすっと抜け落ちたような感覚がした。自分は今まで、瑛司のことを何も分かっていなかったのかもしれない。晴加のためなら、彼は自分の信念さえ捨ててしまう。瑛司はそんなことを知らないと思っていた。けれど違った。むしろ、彼自身が仕掛けた側だった。瑛司の声は低かったが、いつもよりずっと柔らかかった。「君の実力は分かってる。俺は君を信じてる。だから心配しなくていい。それを使って、一番を取ってこい」もう聞いていられなかった。天音はその場を離れた。和也は青ざめた彼女の顔を見ると、冷たく笑った。「自分から見に行ったんだろ。で、今度は恥をかいたってわけか」天音は顔を上げ、まっすぐ彼を見つめた。「あなた、晴加のことが好きなんじゃない?好きなら追いかければいいじゃない。毎日のように好きな女が親友といちゃついてるのを見て、平気なの?」和也はその場で固まった。そのとき、瑛司と晴加も戻ってきて、天音の言葉を耳にした。晴加がすぐに弁解した。「天音、変なこと言わないで。和也と私はただの友達だから!勝手なこと言わないでよ」天音は眉を上げ、ふっと笑
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第42話

そんなとき、裕介がこちらへ歩いてきた。天音は一瞬、体をこわばらせた。次の瞬間、裕介は彼女の隣に腰を下ろした。天音はすぐに立ち上がった。前回のことですっかり分かっていた。裕介は瑛司を苛立たせるために、自分を利用しているのだ。そのための道具になるのはごめんだ。「ちょっと外に出てくる」「天音さん、もうすぐ始まるよ」と、誰かが声をかけた。「先に遊んでて」天音はそう言って外へ出た。外に出てスマホを見ていると、しばらくして、個室の中から突然、何かがぶつかるような物音と騒ぎ声が聞こえてきた。天音は思わず足を止め、扉を押し開けて中に入った。すると、和也と瑛司が殴り合っていた。周りの人たちは二人を引き離そうとしていた。「もういいって、瑛司。和也と晴加はただの友達だろ」「そうだよ。なんで本当に天音の言葉に乗せられてるんだよ」そんな中、裕介だけは少し離れたところで面白そうに眺めていた。「天音さん、なかなかやるじゃん」瑛司は本気で和也を殴っていた。和也の口元は切れ、血まで吐いている。天音は、こんな瑛司を見たのは初めてだった。晴加が現れてからというもの、瑛司は彼女の知らなかった一面を次々と見せてくる。まさか、あの瑛司がこんなふうに取り乱すなんて。そんなとき、裕介の笑い声が聞こえてきた。「和也は晴加にちょっと触れただけだろ?瑛司、君、独占欲が強すぎないか?そんなにムキになるなよ。昔は天音さんに対して、こんな独占欲なんて見せなかったくせに」すると、そばにいた誰かが言った。「天音と晴加じゃ、比べものにならないだろ」天音はそれ以上聞く気になれず、その場を出た。遠ざかっていく声は次第に聞こえなくなったが、瑛司が人を殴っていた姿だけは、いつまでも頭から離れなかった。そのとき、真恵子から電話がかかってきて、集まりはどうだったのかと聞かれた。少し考えてから、天音は答えた。「楽しかったです。でもちょっと疲れたから、もう帰ります」「そう。じゃあ、帰ってきなさい。さっき新しい服を何着か届けさせたの。帰ってきたら試着してみなさい。あなた、クローゼットの服が少なすぎるもの」電話の向こうの声は穏やかだった。けれど天音には分かっていた。真恵子は、自分の荷物をまだ全部戻していないことに気づいている。それとなく釘を刺しているの
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第43話

「彼が晴加を愛しているのは分かっている。でも、私が育ててきた子だからこそ分かる。あの子が藤川家に不利益になるようなことをするはずがない。晴加が藤川家の嫁になることは絶対にないわ」天音はふいに笑った。「おばあ様が一生、瑛司を縛っておくことなんてできませんよ」「少なくとも、今はできるわ」真恵子は気にも留めず、視線を落とした。そして誰かを思い浮かべるように呟いた。「あの頃は、あなたよりもっと相応しい相手がいたんだけどね。残念だったわ」天音はすっと立ち上がった。「服はいただきます。ありがとうございます」二人の話し合いは、そこで終わった。天音は服をクローゼットへ運び、ハンガーに掛けていった。ふと、瑛司の白いシャツやスーツに目をやると、指先がわずかにこわばった。脳裏に、瑛司が拳を握り、和也に殴りかかった姿がまた浮かんだ。和也と殴り合ったのは、きっとあれが初めてだったのだろう。視線を落とした天音は、外で突然雨が降り始めたことに気づいた。そのとき、スマホが一度鳴った。真恵子からのメッセージだった。【雨が降ってきたわ。傘を持って瑛司を迎えに行ってちょうだい】天音は口元をわずかに歪めた。瑛司には運転手がいるし、車にはいつでも傘が用意されている。祖母の本当の目的は、瑛司を迎えに行かせることではない。ただ、もう少し彼から目を離さないように、と釘を刺しているだけだ。けれど、浮気をしたい男を、二十四時間ずっと見張っているわけにもいかない。天音はスマホの電源を切り、二本の傘を持って家を出た。車で店の前まで行くと、ちょうど彼らが出てきたところだった。瑛司は酔っていて、晴加に寄りかかりながら歩いていた。シャツの襟元には口紅の跡がついている。天音は視線を落とした。真恵子に言われたことを思い出し、それでも傘を開いて車を降りた。「天音さん、帰ってきたんだね。どこに行ったのかって、みんなで話してたんだよ」誰かが白々しく声をかけてきた。本当は、天音がどこに行ったかなんて誰一人として気にしていない。もし気にしていたのなら、連絡先を知っているのだから、一人くらいメッセージを寄こしてきてもおかしくない。「迎えに来たの」天音は瑛司に目を向けた。名目上は自分の夫である男が、別の女にもたれかかっていることなど気にも留めていないように振る舞
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第44話

瑛司はいつだって格好よかった。酔っていても、それは変わらない。天音は、自分が人を見る目を誤っていたことは認めている。けれど、この顔だけは見間違えていなかった。瑛司は本当に、人を惑わせるほど魅力的な顔をしている。思わず近づきたくなり、夢中になり、好きになってしまう。そんな顔だ。天音は視線を戻し、家政婦にメッセージを送った。一人では彼を運べそうになかった。彼の肩を軽く叩き、少しでも目を覚まさせようとする。男の喉がゆっくり動き、長いまつ毛がかすかに震えた。眉を寄せる。天音は肩をつかんだ。「起きて」男がうっすら目を開け、手を伸ばして彼女の手を握った。顔を傾け、彼女を見つめる。酔った彼の瞳はぼんやりと潤み、まるで強い酒をたたえているようだ。その目を見ていると、こちらまで酔ってしまいそうになる。彼がどんどん顔を近づけてきて、天音はようやく我に返った。顔を横にそらしたため、キスは彼女の耳元に落ちた。次の瞬間、彼は彼女の耳たぶをくわえた。天音の体がびくりと震え、一瞬、本当は酔っていないのではないかと疑った。彼は天音の耳が一番弱いことを知っている。昔から、ベッドでもよくこうしていた。けれど、それもほんの一瞬だった。本当に意識がはっきりしているのなら、こんなふうに彼女に近づいてくるはずがない。男の荒い息が首筋にかかり、天音は彼を押しのけた。ちょうどそのとき、家政婦も下りてきた。眉間にしわを寄せ、少し不満そうな顔をしている。天音は車を降り、助手席のドアを開けると、家政婦と一緒に瑛司を支えて起こした。すると、家政婦の小さなぼやきが聞こえた。「どうして服までびしょ濡れなんでしょう。旦那様、明日風邪を引かないかしら」天音はちらりと彼女を見た。その視線には、どこか含みがあった。もともと、家の家政婦のことなど、あまり気にしたことはなかった。けれど、ふと前のことを思い出した。あの日、自分が家の外で一晩過ごしていたとき、家政婦は自分を見つけるなり、瑛司が自分を外に放り出したことを真っ先に話した。それなのに、自分のことを心配する言葉は一言もなかった。それが今は、瑛司が服を濡らしただけで、風邪を引かないかと心配している。家政婦まで、主人とその妻で扱いを変えるのだろうか。天音は心の中で冷たく笑った。エレベーターに
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第45話

天音はしばらく家政婦を見つめてから、口を開いた。「彼を寝室に運んで」リビングに放置して、もし真恵子に見られたらまずい。寝室に運び込んでドアを閉めておけば、明日、目が覚めたら自分で身なりを整えるだろう。家政婦は、天音が自分で世話をするのだと思い、別の使用人と二人で瑛司を寝室まで運んだ。ベッドの足元に寝かせる。二人が部屋を出て、ドアが閉まる。天音は瑛司のそばに立ち、襟元に残った口紅の跡を見つめると、彼をカーペットの上に突き落とした。そして自分は身支度を済ませ、電気を消してベッドに入った。夢うつつの中で、熱を持った身体が自分に寄り添っているような気がした。朝まで眠り、目を覚ますと、部屋にいた男はもういなくなっていた。天音のロボットは完成していて、今日は展示会へ運ぶ予定だった。出かけようとすると、真恵子に呼び止められた。「お昼は帰ってきて、一緒に食べなさい」天音は、こんな些細なことで言い争うつもりもなく、素直に頷いた。午前中、天音はロボットを展示会の指定搬入口へ運んだ。スタッフが搬入、検品、撮影を済ませ、展示ブースへの配置まで確認するのを見届けてから、ようやく安心してその場を離れた。会場を出たところで、偶然、晴加と出くわした。天音とは待遇がまるで違った。晴加を出迎えたのは今回の展示会の総責任者で、周りには何人ものスタッフが付き添い、何かあってはいけないとばかりに気を配っていた。さらには専属のようなボディーガードまで二人ついていた。天音は、瑛司らしくないほど目立つ対応だと思った。だが次の瞬間、瑛司が車から降りてきた。瑛司は天音を見ると、淡々とした表情を浮かべた。特に驚いた様子もない。そういえば、前にも彼女が申込書を書いているところを見ていた。ただ、そのとき天音が記入していたのは「製品コンセプト」の欄で、作品名までは見られていなかった。「天音、どうしてここにいるの?」晴加は驚いたようだった。彼女の中では、天音が研究展示会に姿を見せるなんてあり得ない。天音なら、食べ歩きや遊びに行くような場所にいるはずだと思っていた。天音は口元をわずかに上げ、何でもないように言った。「安心して。不倫相手を捕まえに来たわけじゃないから」その言葉が、真っ直ぐ晴加に突き刺さった。晴加は唇を真一文字に結び、天音と揉める
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第46話

天音が人前で瑛司への想いを明かしてから、紗季は彼女と仲違いするようになった。紗季もまた、瑛司に想いを寄せていたからだ。この写真はきっと、もう周囲にも出回っている。みんなが知っているのだろうと、天音は思った。けれど、彼女にとってはもうどうでもよかった。離婚してしまえば、いずれこの人たちはみんな彼女の世界から消えていく。彼女はスマホの電源を切り、返信しなかった。午前中、天音は研究室で仲間たちと一緒に、さまざまな精密機器に向き合っていた。今、彼女たちのチームが主に研究しているのは、人間の手に近い触覚技術だ。ロボットにも人間の手のような「感覚」を持たせ、ミクロン単位で力を感じ取れるようにする。シルクや紙、卵などに触れたとき、その柔らかさや表面の感触を感じ取りながら、卵を割らずに扱えるレベルを目指している。昼になると、天音は車で桐ヶ丘レジデンスへ戻った。そこで初めて、真恵子が自分を呼び戻した本当の目的に気づいた。食事をさせるためではなく、瑛司に昼食を届けさせるためだったのだ。昨夜、真恵子に言われたこともあり、天音は頼まれたことには何でも応えるつもりだった。どうせ残された時間は、あと三か月しかない。和江の手術が無事に終わりさえすれば、何も持たずに家を出ろと言われても構わない。藤川グループの本社ビルまで来ると、天音は瑛司にメッセージを送った。けれど、いつまで経っても返信はなかった。仕事で忙しいのか、それとも返信する気がないのか。そこで天音は弁当箱を持って受付へ向かった。以前は瑛司にくっついて、よく会社まで来ていた。受付の女性も天音のことを覚えていて、すぐに社長専用エレベーターまで案内してくれた。社長室のあるフロアは、静かではあるが、社員たちが忙しそうに仕事をしていた。天音が入ってくると、社員たちは一斉に顔を上げ、少し驚いたような表情を見せた。天音がここへ来るのは、かなり久しぶりだったからだ。以前はほとんど毎日のように昼食を届けに来ていて、瑛司にべったりだった。社長室へ向かおうとしたところで、瑛司の秘書が彼女を呼び止めた。「あの、奥様、社長は今お忙しいので……お弁当を届けに来られたんですよね?私がお預かりします。社長の仕事が終わったら、私がお持ちしますので」今回、天音は真恵子に頼まれた弁当を届けるために来ただけだ。
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第47話

「おばあ様に頼まれて来たの」天音は正直に答えた。男は足を止め、黒く澄んだ瞳を彼女に向けると、冷たく言った。「これから、来なくていい」そう言い残すと、彼は席につき、食事を始めた。天音は写真を撮って真恵子に送り、すぐに出ていこうとした。瑛司が顔を上げる。「食べないのか?」「食べない」こんな部屋で食事をする気にはなれない。さっき二人が中で何をしていたのかも分からない。考えるだけで気分が悪くなる。瑛司がもう一度口を開く。「少し座って食べろ。そうしないと、低血糖を起こしやすいだろ」天音の足が止まった。低血糖になっていたのは、ダンスのために食事制限をしていたからだった。今はもう食事制限をしていない。だから、低血糖になることもない。彼女は振り返って彼を見る。「もう食べたから」「天音、最近何をしてるんだ?」彼は目を伏せたまま、何気ない様子で尋ねた。天音はちらりと彼を見る。「ダンスカンパニー……」瑛司は顔を上げ、外の大きな窓の向こうへ目を向けた。「君たちのダンスカンパニーのオフィスも、リハーサル室も空いてるみたいだけど」天音も彼の視線を追った。同じ繁華街にあり、悠真が借りているオフィスとリハーサル室は藤川グループのビルの向かいにある。今日は空がどんよりと曇っていて、強い日差しもなかった。そのおかげで、窓越しにも中の様子がよく見えた。天音は表情を変えずに答えた。「人を集めるのに忙しいの。私も出資者だから、仕事を取ってくるのも私の役目なのよ」「じゃあ今は毎日、外で営業みたいな仕事をしてるってことか?自分では稼がないどころか、金も労力もつぎ込んでる」彼の口調は淡々としていた。「天音、それはただのわがままだ」わがまま。この数年、その言葉を彼の口から何度聞いただろう。昔なら、彼の腕の中に甘えるように収まりながら、「私、わがままだから」と笑っていられた。継母が母親の遺品をすべて燃やしたあの日、彼女は一人で、遠い北のN国へ向かった。オーロラを見たら、そのまま母親のところへ行くつもりだった。けれど、オーロラは現れなかった。代わりに、瑛司が現れた。彼の姿を見た瞬間、彼女は泣きながら尋ねた。「私、わがまますぎたのかな」彼は歩み寄って彼女を抱きしめ、「わがままでもいい。俺がいるから」と言ってくれた。あの夜、
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第48話

和江はそう言いながら、涙がこぼれ落ち、やせ細った頬を伝っていった。「きっと何かあったのよ。天音、もう私に隠さないで。おじいちゃんの容体がどれほど悪いのか、ちゃんと教えてちょうだい」次の瞬間、天音ももう耐えられず、涙が一気に溢れ出した。胸を震わせ、何度か深く息を吸ってから、和江を抱きしめた。「おばあちゃん、私がいるでしょ。おじいちゃんは今、ただゆっくり休まないといけないの。おばあちゃんもちゃんと休んで。ね、一緒に帰ろう?胃にも優しいお粥を持ってきたから」「今日、おじいちゃんがどうしたのか教えてくれないなら、私は帰らない」和江の唇が震えていた。「きっと、かなり悪い状態なんでしょ。私が病気になったときは、おじいちゃんがずっとそばで世話をしてくれたのに。おじいちゃんが病気になった今、私は会うことすらできないなんて……おじいちゃんにも不公平だし、私にも不公平よ」和江は深く息を吸った。「おばあちゃん……」天音も胸が苦しかった。「天音、教えてちょうだい。どんなことでも、私は耐えられるから。ただ……まさか、おじいちゃんが……」年寄りにとって、生死に関わることは口にするのも怖いのだろう。その先は、どうしても口にできなかった。「違う!」もう隠し通せない。天音は仕方なく真実を和江に伝えた。これ以上、隠しておけないことは最初から分かっていた。それを聞いた和江は、その場で体をふらつかせ、今にも倒れそうになった。天音が慌てて支えると、和江は必死に気丈に振る舞いながら言った。「おじいちゃんに会わせて」「おばあちゃん、もう少し待って。お願い」今のおじいちゃんは、とても人に会わせられるような状態ではない。顔色は青白く、髪もほとんど真っ白になっていた。まだ若く体力もある天音でさえ、顔を見るたびに泣いてしまう。胸が締めつけられるほど泣いて、最後には気を失ってしまうほどだった。和江が耐えられるはずがない。それでも和江は頑として譲らなかった。天音も仕方なく、和江を連れていくことにした。医師は念のため和江に一通り検査を受けさせ、それからようやく、天音が外へ連れ出すことを許した。ただし、二時間以内には戻るようにと言われた。車の中で、天音は気を紛らわせようと、和江に別の他愛ない話をしていた。それを聞いた和江が、ふと尋ねた。「瑛司とは最近どうなの?
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第49話

「分かった」和江は電話を切ると、天音を見た。「ほら、やっぱりあなたのことを気にかけてるのよ。何かあったら、ちゃんと話し合いなさい」天音は目を伏せ、結局何も言わなかった。天音は和江と一緒に、そのまま修一が入院している病院へ向かった。修一は病室のベッドに静かに横たわっていた。顔色は青白く、唇は乾いて白くなっている。まぶたは力なく閉じられ、目尻には薄い皺が刻まれていた。呼吸もほとんど分からないほど弱く、胸がかすかに上下しているのが見えるだけだ。鼻から漏れるわずかな息だけが、まだ生きていることを示している。和江は病室に入ると、一目見ただけで涙をこぼした。足元がふらつき、そのままベッドに倒れ込むようにもたれかかった。天音は慌てて支えた。「おばあちゃん、大丈夫。先生が言ってたでしょ。おじいちゃんには、まだ回復する可能性があるって」その可能性が限りなく低いとしても、ないよりはましだ。和江は首を横に振り、真っ赤になった目で呟いた。「どうしてこんなことになったのかしら。私が倒れて、おじいちゃんまで倒れて……なんて罰当たりなの。育ててもらった恩まで忘れるなんて……全部、あの子のせいよ!」あの日のことを思い出し、天音も胸が痛むほど腹が立った。「おばあちゃん、もう警察には届けて、事件として受理されてる。今、捜査を進めてもらってるところだから」「私もおじいちゃんも、三人の子どもをずっと分け隔てなく育ててきたのに、あの子からすれば、それでも私たちが贔屓してたことになるのね。あの子がこんなふうになったのは、私の育て方が悪かったのよ」天音は和江を抱きしめた。「おばあちゃんは、何も悪くないよ」和江は涙を拭った。「こっちは全部あなたがやってくれてるの?おばさんには電話した?」「ううん、言ってない。おばさんは仕事が忙しいから」天音は、何度電話をかけても切られてしまったことまでは和江に言わなかった。「それじゃダメよ。あなた一人でこんなことをやらせるわけにはいかないわ」そう言って和江が電話をかけようとしたので、天音も叔母には知る権利があると思い、止めなかった。ところが、電話をかけても出なかった。「仕事が忙しくて、たぶんマナーモードにしてるんだよ」天音はそう言った。和江はため息をついた。「大変だったでしょ、天音。あとでもう一度かけてみるわ」
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第50話

犯人がこんなに都合よく捕まり、しかも口から出てきたのが、よりによって業界で名の知れた最有力候補だったなんて。ふと、以前クラブで盗み聞きした会話を思い出した。瑛司が晴加のためにロボットまで買ったのは、彼女を一位にしたかったからだ。今回も、もしかして瑛司が仕組んだことなのだろうか。昔の天音なら、決して信じなかった。けれど今の彼女の目には、瑛司は晴加のためなら、もう越えてはいけない一線さえも越えてしまうように見えていた。ふと、あのとき教授にEJの名前で作品を応募するよう言われた際、藤川家に気づかれないよう、別の名前に変えておいてよかったと思った。もしEJの名前を使っていたら、瑛司は晴加を一位にするために、今回と同じような芝居を仕掛けていたかもしれない。スマホには、また紗季からメッセージが届いていた。SNSの投稿をスクリーンショットしたものだった。晴加が投稿した写真には、レストランで瑛司と食事をする姿が写っていた。靖紀も一緒で、まるで幸せな三人家族のようだ。そして、投稿にはこんな一文が添えられていた。【社長が食事に連れてきてくれた。気分転換に】その下には、天音も見覚えのある人たちから、たくさんの「いいね」がついていた。瑛司と親しい連中ばかりだ。天音がSNSに投稿しても、彼らはいつも見向きもしなかった。それどころか、瑛司とのツーショットを載せたときには、決まって「お似合いじゃない」などと嫌味を言ってきた。それなのに、晴加の投稿には、和やかなコメントや、茶化したり祝福したりする言葉がびっしり並んでいる。天音は自分のSNSを開いた。どうやら、自分が大人しくしすぎていたらしい。まさか不倫相手が、ここまで堂々と挑発してくるとは。紗季がこれを送ってきた理由も分かりきっていた。嫉妬に駆られた天音が二人を探し出して、晴加に手を上げ、その結果、瑛司に愛想を尽かされて叱られる……そんな展開を期待しているのだろう。でも、もうそんな面倒なことをするつもりはない。天音はアルバムから一枚の写真を選んだ。背景に写っているのは、彼女と瑛司の寝室だった。瑛司は下半身にバスタオルを巻き、気だるげにソファに座って煙草を吸っている。肩には、爪で引っかいたような傷が残っていた。以前の天音なら、こんな写真を人目にさらすことはなかった。ただ何となく撮っ
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