誰も座っていない三十三脚目の椅子を残し、五人は六年二組を出た。 廊下へ足を踏み出した瞬間、背後で教室の戸がひとりでに閉まった。 がらり。 続いて、内側から鍵を掛けるような音。 かち。 轟木燈夜が振り返った。「今度は閉じ込められねえぞ」 取っ手を掴む。 引く。 戸は開いた。 教室には三十二組の机と椅子しかなかった。 最後尾に増えていた三十三脚目が消えている。「……ほらな」 燈夜が鼻で笑った。「誰かが動かしてんだよ」「どこに?」 茅森イオが教室を覗き込む。「椅子一脚、数秒でどこへ持っていくの」「隠し扉でも床下でもあるんだろ。この学校、解体前だぞ。壁の中なんか空洞だらけでもおかしくねえ」「また壁壊す気?」「必要ならな」 燈夜の声には、怯えより怒りが勝っていた。 説明できないことが起きるたび、それを力で壊せる何かへ置き換えようとしている。 鬼束美怜には、そう見えた。 もっとも、自分も似たようなものだった。 画面へ映し、笑い、数字に変えてしまえば怖くない。 そうしてきた。 だから今も配信用のスマートフォンを下ろさない。 画面では大量のコメントが流れている。 ――帰った方がいい ――三十三脚目どこいった ――放送室見ろ ――誰かスピーカー仕込んでるって ――出席の声、人間の仕掛けじゃない? ――六人目まだ怜吾の横にいる「放送室」 美怜が最後から二つ目の書き込みを拾った。「そこ調べれば早いんじゃない?」 津守怜吾も頷く。「校内放送が本当に生きてるなら、設備側に痕跡がある」「だったら決まり」 燈夜は持ってきた校舎図面を広げた。 三階廊下の非常灯の下。 薄い紙へ五人の影が落ちる。 いや。 美怜には一瞬、六つに見えた。 瞬きをすると五つへ戻る。「放送室は二階の西端」 燈夜が指で図面をなぞる。「職員室が一階。放送設備の主電源と鍵の管理表があるなら、そっちだろ」「別れる?」 イオの声が少し上ずる。「五人でぞろぞろ動いても効率悪い」 燈夜が答える。「俺と怜吾が放送室。美怜たちは職員室」「三人ならいいか」 美怜は軽く言った。 ちとせが何も言わない。 六年二組の閉じた戸を見つめていた。「ちとせ?」「聞こえない?」「何が」「中」 全員が黙る。 教室の中から、
Terakhir Diperbarui : 2026-08-20 Baca selengkapnya