斑鳩ちとせが古い資料を抱えて編集部室へ現れたのは、爪の転送経路を追い始めてから二日後だった。大判の封筒が三つ、大学図書館の複写印が入った冊子が二冊、それに角が茶色く変色した古いファイル。いつもの彼女なら何か一言くらい軽口を挟むところだったが、その日は入口から机まで無言で歩き、津守怜吾のパソコンの横へ資料を積み上げた。「何それ」 鬼束美怜が訊くと、ちとせは一番上の冊子を開いた。表紙には地方民俗研究会の名と、三十年以上前の発行年が記されている。学校の怪談や祭礼についてまとめた同人誌に近い資料らしく、紙は黄ばみ、何度も複写された文字の輪郭は潰れていた。「似た話、あった」 茅森イオが椅子から身を乗り出した。「メール?」「もっと前」「どれくらい?」「少なくとも二十年以上前。でも、そこからさらに遡れる」 ちとせの指が目次を滑る。美怜はその仕草を見ながら、また胸の奥へ引っかかるものを感じた。楢守小学校でも、ちとせは怪異の規則を知りすぎていた。赤白の組紐、返事をしてはいけない時刻、記録を壊すことへの警戒。どれも本人は民俗学で似た話を知っているだけだと説明したが、偶然で済ませるには回数が多い。「どこで見つけたの」 怜吾が訊いた。「大学の民俗資料室と、古い地域誌の索引。あと一部は複写を取り寄せた」「いつから探してた」 ちとせの指が一瞬止まる。「チェーンメールが来てから」「二日でここまで?」「索引が残ってたから」 怜吾はそれ以上追及せず、開かれた頁へ目を落とした。美怜には、その沈黙が納得ではないと分かった。 頁の見出しには、《七爪様について》とある。「ななつめさま?」 イオが読んだ。「地域によって呼び方が違う」 ちとせは別の資料を並べる。《爪回し》《七人便り》《七枚送り》《七つ返し》。名称も土地も年代も一定しない。それでも本文へ書かれた内容には、嫌になるほど似た部分があった。「これ」 ちとせが鉛筆で薄く印をつけた箇所を示す。 古い活字。 七人へ伝えろ。 その下。 止めた者が七つ失う。 美怜の背筋が冷えた。「同じじゃん」 轟木燈夜が資料を引き寄せる。「これ、今のメール見て作ったやつじゃねえの?」「発行年見て」「古い本に後から追加したとか」「これは国会図書館にも所蔵記録がある資料。発行自体はチェーンメールが広まるより
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-16 อ่านเพิ่มเติม