王都中央司法庁の大法廷は、朝早くから重苦しい静寂に包まれていた。 傍聴席にはほとんど空席がなく、王族や貴族、騎士、行政官、王国公共記録院の設立準備に携わる者たちだけでなく、黒霧事件や王宮研究局による実験の被害者、その遺族たちも数多く集まっていた。誰もが同じ気持ちでこの日を迎えているわけではない。判決によって少しでも区切りをつけたい者もいれば、どのような刑が下されても失ったものは戻らないと知っている者もいる。中には、被告がまだ生きているという事実そのものを受け入れられない者もいるだろう。 今日、裁かれるのは、かつてこの国の第二王子だった男――セドリック・アルベルトだった。 起訴された罪状は三十七件。違法な人体実験、誘拐、監禁、記憶操作、魔術による殺傷、黒鴉会を利用した犯罪行為、王宮研究局の不正への関与、そして最終的には、王都そのものを巻き込む大規模な儀式を行い、多くの人間を犠牲にしようとした。 そのどれを取っても、決して軽い罪ではない。 リリアは傍聴席に座り、法廷中央に設けられた被告席を見つめていた。隣にはレオン、その足元には小さな夜色の獣の姿をしたノクスがいる。少し離れた席には第一王子の姿もあった。彼は王族のために用意された特別席ではなく、事件の関係者として一般の席に座っている。 弟だから特別な場所から裁判を見守るつもりはない――そう本人が申し出たのだと聞いていた。 リリアは膝の上で組んだ手に、無意識のうちに力を込めていた。「緊張しているのか」 小さな声で尋ねたのはレオンだった。 リリアは少しだけ驚いて横を見る。「分かります?」「手が白くなるほど握っている」 言われて初めて気づき、リリアはゆっくり指を緩めた。「レオン様は平気なんですか?」「平気ではない」 あまりにも素直な答えだったので、今度はリリアの方が目を瞬く。「意外そうな顔をするな」「少しだけ」「俺だって人間だ」 足元からノクスの低い声が聞こえた。『その主張は時々怪しいがな
Last Updated : 2026-09-28 Read more